社員の育成は誰の仕事 ?企業が果たすべき4つの責任とは

2020.04.23

 
企業の人材育成の話になると常につきまとう論点があります。

「人材育成における企業の責任は一体どこまでか?」 という問題です。

企業や上司が手間ひまかけて育てるのは限界があります。

企業は学校ではないからです。

 

一方で、人材育成は企業の仕事じゃないと言って、現場で人が勝手に育つのを待っているだけでは芸がありません。

成果も出ません。

では、企業は一体どこまでやったらいいのでしょうか?

 

企業が人材育成で果たすべき責任

 
企業が人材育成としてやれる事は多岐にわたりますが、私は最低限、次の4つが不可欠だと考えます。
 

  1. 意欲が出やすい環境をつくる
  2. 明確なミッションや責任をもつ
  3. フィードバックの機会をつくる
  4. 先輩や同僚から経験を学べる環境をつくる

※それぞれ後段で詳しく説明します
 

このような環境や場を提供する事が、少なくとも企業が果たすべき役割ではないでしょうか。

 

毎年春になると新入社員研修真っ盛りですが、どこの会社も新人研修は結構ちゃんとやります。

ところが3年、5年と時間が経つにつれ、ほぼOJTのみとなり、日常の育成は各部署任せ、個々の上司任せというのが一般的です。

このやり方でビジネスが成長した時代は、それが適したやり方だったと思います。

 

しかし時代は変化しています。

市場のパイが縮小し、変化のスピードが早く、採用は困難を極めます。

残業が減り、飲ミュニケーションが減り、リモートワークは増えていく(=社員同士が顔を合わせる時間が減る)。

今はそんな時代です。

人材育成を部署任せ、上司任せにしていては、市場で勝ち残れるとは思えません。

 

かつてピーター・ドラッカーは手厳しい指摘をしています。

『あらゆる組織が「人が宝」という。ところが、それを行動で示している組織はほとんどない』

『本気でそう考えている組織はさらにない。人材の育成こそ最も重要な課題であることを忘れてよいはずがない』

「人材育成はどこまでが企業の責任か?」という問いに単純な正解はありません。

しかし、人材が大切と言うなら少なくとも満たすべきラインがあり、それが先の4つだと考えます。

 

企業が人材育成において最低限行うべき4つのこと

 
それでは、前項でお話しした4つの責任について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

意欲が出やすい環境をつくる

 
仕事の意欲は本人の問題ですが、少なくとも意欲が出やすい環境を作るのは経営の役割です。

たとえばこのようなことです。

  • フランクに意見を言える人間関係
  • 人を大切にする風土
  • 協力的な風土
  • 公明正大な制度
  • 頑張れば評価される制度
  • 後ろめたい仕事をやらせない

 

明確なミッションや責任をもつ

 
自分のやるべき仕事は何か、乗り越えるべき課題は何かを明確に伝えてあげましょう。

目指すゴールが曖昧だとしたら、努力しようにも迷ってしまいます。

 

フィードバックの機会をつくる

 
人は自分の事をなかなか客観的に見ることができません。

第三者が本人に対してフィードバックする価値は想像以上に大きいです。

日常の業務で気づいた点をタイムリーにフィードバックするのはとてもいいことです。

四半期の区切りなどに、何が改善したか、まだ足りない能力は何か?

などをフィードバックして本人に考えさせる機会をつくりましょう。。

フィードバックの機会を通じて人は更に成長します。

 

先輩や同僚から経験を学べる環境をつくる

 
自分の経験から学べることは限られます。

よって、先輩や同僚の成功体験や失敗体験を共有できれば、成長スピードは各段にあがります。

勉強会でも、教材でも、飲みの場で教わるでもやり方は問いません。

他者の経験に学べる機会や仕掛けを会社として用意する。

その機会を使うか使わないかは本人次第ですが。

 

人材育成は個の力に依存せず機会と仕組みを提供する

社員の育成は誰の仕事

 
先の4点に共通するのは、環境と機会の提供であるところです。

企業は人材育成の結果責任は必ずしも負えないかもしれません。

しかし育成の機会を提供する責任はあります。

育つ育たないの根本は本人次第ですが、育つ確率を高めるために、会社は機会を提供すべきというのが私の考えです。

 

実際に企業の育成現場を見ると、意欲の低い社員を一生懸命鼓舞して教えているのに、さしたる進歩もなく、上司が疲弊しているケースがあります。

真面目な上司ほど一生懸命面倒を見るものです。

ただ、先の4点の1つ目「意欲が出やすい環境をつくる」がボロボロだとしたら、上司にはどうしようもありません。

本人が自ら努力して学ぼうという意志にならない限り、真の成長はないからです。

上司対部下という個人戦に依存して、意欲を出させたり、育て上げるのはそもそも無理があるんですよね。

上司の手腕に依存せず人が育ちやすい仕組みを作ることが大切です。

 

まとめ

 
社員1人1人の能力は異なります。

同じように育成しようとしても、順調に育つ人もいればそうでない人もいるのは世の常です。

だからといって「人材育成に力を注ぐのは無駄」というのは非常にもったいない考え方です。

育つ育たないという結果は本人次第ですが、少しでも多くの人が育つよう必要な機会を提供するのは企業の役割です。

人材育成のセオリーや基本知識も生かしながら、いかに効率よく仕事の場で人が育つか、ぜひ考えてみてください。

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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