ルールの徹底
マネージャーなら誰でも経験したことのある悩みの1つが、「決めたルールが徹底されない」というものです。
例えばこのようなルールを決め、会議でメンバーに伝えます。
「金曜の夕方までに、週の報告書を提出すること」
「月曜朝に自分の営業状況を見直して、受注見込み表に入力すること」
「週に1回、部下たちと1on1を実施すること」
最初の1~2週間は決めたルール通りにやってくれたとしても、時間の経過とともに、ポツリポツリとやらない人が出現します。
それを見た別の人も「やらなくても問題なさそうだな」と感じ、手を抜き始めます。
そうなると決めたルールはあっという間に崩壊し、やらないことが当たり前になってしまいます。
このような事態を防ぐために、あなたはどのような手立てを講じますか?
今週のブログでは、決めたルールを部下に徹底するためにはどうすればよいか?
その具体的な方法をお伝えします。
目次
「決めたのになぜやらないの?」という発想を捨てる
決めたルールが徹底されない事象のボトルネックは、実はマネージャー自身の認識にあります。
あなたは「決めたのだから、やって当然」と暗に思っていませんか?
もし決めただけで部下が確実に実行してくれるなら、マネージャーにとってそんな楽なことはありません。
相手がロボットであれば、決めてコマンド指示すればその通り動いてくれるでしょう。
しかし、人間には意志や感情があります。
そのため「決定した = 必ず動く」とはなりません。
もしマネージャー自身が「決めたのだから、やって当然」と思っている限り、どうやったら部下が決めたことを確実に実行できるか?という工夫をしなくなります。
決めるところまでが自分の仕事と勘違いしてしまっているのです。
この認識違いをしているとしたら、それが「決めたルールが徹底されない理由の根本にあること」をまずはご理解ください。
決めたことが徹底されない「6つの壁」と対策
ルールが徹底されない理由は、いくつか考えられます。
その理由を理解しておくと、どのように対応したらよいかのヒントになります。
ここでは、決めたことが徹底されない原因を次の「6つの壁」に分けてお伝えします。
認識の壁
納得の壁
時間の壁
能力の壁
メリットの壁
管理監督の壁
認識の壁
そもそも、決めたルールは相手に正しく認識されているでしょうか?
例えば、「週に1回、部下と1on1をやる」というルールを決めた場合、「1on1」とはどのようなものであるかの認識が異なっている場合があります。
例えばある人は、「一緒に外出した電車の中で仕事の状況をしっかり話せたので、これを1on1の代替としよう」と考えているかもしれません。
またある人は、「部下2人と自分の3人で30分話したので、2人分の1on1と見なしてよいだろう」と思っています。
新しいルールを決めた場合、このようなちょっとした認識のズレがよく起きるものです。
ある程度細部までルールを詳細化して伝えなければ、マネージャーが思い描いている通りに実施されません。
納得の壁

上司が決めた方針であっても、部下は納得していない場合があります。
納得できていないので、ルールは頭で理解しているものの、行動がその通りになりません。
納得できていない例
営業において「来週からA商品ではなくバージョンアップしたA’’商品を重点的に売り込むこと」が決まったとします。
営業担当のKさんは、部署としてA’’商品を拡販したい方針は理解しつつ、お客様に寄り添った視点ではA’’商品が顧客ニーズに合っていないと感じていました。
そのため、Kさんは積極的にA’’商品を売り込む行動をとりませんでした。
これは方針を伝える際の対話の中身や深さに問題があります。
A’’商品を重点的に売り込むとどのような問題が生じる可能性があるか? メリットデメリットは何か? などについて、上司と部下の間で十分な議論がされていないため、部下の納得感を高められていません。
もしじっくり議論していたなら・・・
A’’商品の魅力、お客様にとっての価値がどうやら部下に伝わっていない
改めて上司から噛み砕いて説明することで、部下たちに拡販の必要性を納得してもらう
A’’商品が向くお客様と向かないお客様がいることが判明
まずは前者のお客様に重点的に営業する
A’’商品はお客様に自信をもって薦められる商品になっていない
商品企画部と協議の上、3ヶ月後を目安に改良した上で、本格的に営業をかける
このような展開になっていたのではないでしょうか。
お客様のことを真剣に考えている営業担当者ほど、営業の進め方については納得感が大事です。
納得を得られないまま「決めたことだから」と強引に進めると、ルールが徹底されない事態に陥ってしまいます。
時間の壁
ルールが徹底されない理由の一つに、純粋に時間がないこともあります。
もともと業務がいっぱいいっぱいで残業も制限されているのに、新たなレポート提出を義務づけられたところで、対応が追い付かないという状態です。
物理的に”無理なものは無理”ということです。
多くの職場で見られる現象は、業務を足し算で増やし続けてしまうことです。
皆が真面目に仕事の質を上げようとするからこそ「あれも必要、これも必要」と、業務が増えていきます。
しかし、当然ながら人がこなせる仕事量には限界があります。
増やしすぎたせいでどの業務も中途半端になったり、本当に大事な仕事に時間が配分されないという矛盾を引き起こしてしまいます。
仕事を増やす時の大原則は「+1-1=±0」

業務を新たに増やすのであれば、何かを減らし、トータル量を極力増やさないように工夫しましょう。
そうすることで、新たに決めたルールが確実に実行されやすくなります。
具体的には
やる必要のない業務をやめる
既に意義の薄れた業務をやめる
業務自体は継続するが自動化により作業量を減らす
一部の業務を外注する など
何かを捨てることは少々勇気がいりますが、業務の優先順位づけはマネージャーの大事な役割です。
能力の壁
ルール通りにやろうと思ってはいるものの、能力不足で実行できないこともあります。
先ほどの「毎週1on1を実施」というルールを課したとき、実際の進め方が分からないため実施を先延ばししてしまう人がいるかもしれません。
「1on1と言われたものの、部下と一体何を話したらいいんだろう?」という入り口立ち止まってしまうようなケースです。
これまで部下と1対1でじっくり話す経験がない人にとって、30分何を話したらいいのかわからないのは自然なことです。
せめて、1on1の基本的な進め方、対話すべき内容、目安時間などは事前に教えてから、実施に移ってもらいましょう。
とはいえ、このように思う人もいるかもしれません。
「1on1のやり方なら本屋にいけばいくらでも関連書籍があるんだから、分からないなら自分で勉強するなり、誰かに聞けいばいいじゃないか」
仰る通りです。それも確かに正論です。しかし、それだけでは先に進めません。
マネージャーに求められるのは「仕事の成果」
成果を出すために何か新しいルールを決めたのであれば、それが確実に実行される状態を作るのがマネージャーの仕事です。
あえて後押しをしなくても、自ら学んで実行できる部下ならば問題ありません。
しかし、それができない部下であれば、できる能力をつけて上げるか、誰でもできるようなやり方にしてあげる必要があります。
メリットの壁

同じことをするなら、メリットがないよりはあった方が人は動きやすくなります。
「メリットがないと動かないなんてけしからん!」と思われる方がいるのも分かりますが、何かしらメリットをつけることで皆が積極的に取り組んでくれるならば、使わない手はないでしょう。
メリットにも色々なものが考えられます。
新しく実施する報告書は従前より入力の手間が増えるが、それを毎週記入すれば、月次の集計作業/報告が圧倒的に楽になる
過去の報告書は提出しっぱなしだったものを、新たな報告書では上司から必ずフィードバックコメントがもらえる
徹底できている人を褒める
重点施策をしっかりやった人にインセンティブを出す
重点施策の徹底度合いを業績評価に入れる
管理監督の壁
メリットの壁がアメだとすると、管理監督の壁はどちらかというとムチに相当します。
ルールを決めてスタートしても、それを守らない人を放置していないでしょうか。
最初の1人を放置すると、2人目が出現し、さらに3人目が出てきます。
徹底度合いの管理監督が弱いと、徐々に緩んでいきます。
何かルールを決めた以上、それをやらない人が誰であるかが分かるようにし、「やらないこと=恥ずかしいこと」と感じさせる仕掛けも必要です。
そこで、管理監督を持続的に進める仕組みを考えましょう。
実施状況を可視化する、実施できている人順にランキングを出す、実施できていない人を会議で明示する、などを毎週、毎月継続的に行えば、緩みの抑止力になります。
もちろん、やらない人を糾弾することが目的ではないので、「なぜできていないのか?」という要因を冷静に考えた上で、ここまででお伝えしたような各種対策につなげていってください。
日報提出率を3%→90%以上に高めた事例

最後に、私自身が以前ある会社で日報の改善に関わった事例をご紹介します。
この改善に着手する前の日報の提出率は全社員の3%程度でした。
「毎日提出しなければならない」というルールはあったものの、ほとんど徹底されていない状態でした。
この状態を改善すべく、いくつかの手立てを施し、リニューアル以降の提出率を90%以上に高めることができました。
具体的にどのような対策を実施したか、先ほどの6つの壁を使ってご説明します。
目的の明確化
実施目的が曖昧だった
日報を書く目的を明確に伝えた(業務の振り返り、部署間の情報連携、部下の業務状況の把握と指導、職場のコミュニケーション活性化など)
「納得の壁」を克服
理解促進・書きやすさの向上
フリー記述だったため、何を書けばよいのか分かりづらかった
書く項目を明示し、必須記入と自由記入に分けたことで、書くハードルを下げた
記載例や良い日報の事例を伝えることで実際に書くイメージを持ってもらい、初期のハードルを下げた
「認識の壁」「能力の壁」を克服
業務負担への配慮
部署や役職によって、別の報告書が存在していた
従来実施していた報告書を日報に統合・代替
「時間の壁」を克服
頑張りを褒める
年に1回、継続した人を表彰していた
日々の日報のうち、質の高い日報を全社に共有
毎月提出率の高い人をランキング表示し、ポイントを付与
「メリットの壁」を克服
活用メリットの向上
自分が見られる日報の範囲が限定されていた
全社員の日報を相互に閲覧できるようにした
特に注目している人をSNSのようにフォローできる機能も追加し、「いいね」を多くつけた人を活性化貢献者として可視化
「メリットの壁」を克服
実施状況をしっかり管理
時々、運営側が「必ず書くよう」催促していた
全社員の提出率を毎月公表し、提出率の低い部署や個人が一目で分かるように
「管理監督の壁」を克服
本事例では、6つの壁すべてに対策を講じていますが、必ずしも全てが必要ということはありません。
あなたの職場で決めたルールが徹底されない原因が何かを深堀りすれば、6つの壁のいずれが主たる原因になっているかが分かります。
その壁に対して有効な対策が何かを考えてみてください。
まとめ
マネージャーの仕事は、ルールを決めること自体ではなく、組織の成果をあげるために必要なルールは徹底させることです。
そのためには
「ルールを決めたのだからやって当然」と考えるのではなく
「ルールに沿ってできない部下はなぜできないのか」という視点が欠かせません。
今回ご紹介した6つの壁は、ルールが徹底されない原因を整理するためのフレームワークです。
認識や納得感の不足なのか。時間や能力の問題なのか。メリット提供や管理の仕組みに課題があるのか。
原因が分かれば、打つべき対策も見えてきます。
もし職場で「決めたはずなのに続かない」 「何度言っても定着しない」と感じるルールがあるなら、ぜひ一度6つの壁の観点から考えてみてください。
ルールは、決めただけでは思った通りには機能しません。
実行しやすい環境と仕組みを整えてこそ、はじめてスムーズに機能し、それが組織の成果につながっていくのです。
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