強い管理部門が「強い会社」をつくる| バックオフィス の目標設定方法

2021.05.27

強い会社に成長するには、強い バックオフィス 機能をつくることが不可欠です。

しかし、バックオフィス(管理部門、コーポレート部門)の仕事は、営業職のように仕事の成果を数字で測るのが難しく、目標設定が曖昧になりがち。

なかなか人材育成も進められていません。
 

経営陣の関心は日常的には営業やマーケティング、商品開発などに偏るため、バックオフィスとの対話が少なくなっていることも影響しています。 

目標が曖昧だと人事評価のタイミングで「社長からの評価」と「現場の自己評価」にギャップが生じ、双方が不満を抱えたままになることもあります。
 

今週のブログは、強いバックオフィスを作る方法についてお伝えします。

 

バックオフィス こそ「仕事の目的」を明確に

バックオフィス

 
バックオフィスの運営で最も大事なのは、仕事の目的の理解です。

バックオフィスの仕事の目的は、会社の経営計画を実現するための「攻めと守りの両立」です。

例えば成長企業が、昨年の売上10億に対して翌期15億、次の年は25億というアグレッシブな計画を立てる場合、その業績拡大を支える重要な役割をバックオフィスは担います。

わかりやすい例を出します。

 

攻め

  • 組織拡大のための人材採用
  • 業容拡大を支える販売管理システムの構築
  • 業績進捗をタイムリーに把握するための管理会計の仕組みの構築

 

守り

  • 取引先拡大に伴う与信管理
  • 未回収の防止
  • 社員の労務管理
  • コンプライアンスの遵守対応

 

これら全ての根底にあるのが、「仕事の目的」です。

バックオフィスに関わる様々な課題のうち、何を進めるべきか?何に投資するか?

これを「会社の経営計画を実現するための攻めと守り」の視点から絞り込む必要があります。

 

社長は バックオフィス と対話しよう

 
多くの中小企業で社長とバックオフィスの対話不足が見られます。

バックオフィスの社員がぽつんと業務処理だけ行っており、営業部門からはしょっちゅう文句を言われ、社長からも目をかけてもらえず、モチベーションの低い状態で仕事をしているケースがあります。

先ほど述べたように、バックオフィスの仕事の生命線は経営方針の理解にあります。

バックオフィスが会社のことをあまり理解せずに業務だけこなしているのは非常に不健全な状態です。

社長はバックオフィスの社員と対話の機会をもち、自身の考え、経営方針、今後の計画などについてじっくり伝える場をもちましょう。

 

バックオフィスの仕事の特徴

 
バックオフィスの仕事は2面を併せ持っています。

定型業務と、高度な企画推進業務です。
 

前者は、経理の仕分け、決算、税務申告、人事の勤怠管理、給与計算などに代表される業務です。

毎月のやることが決まっていたり、自ら判断する余地は少なく、確実に遅滞なく進めることが求められます。

一方で後者の業務は、業績評価制度の見直し、販売管理システムの導入、リモートと両立する新オフィスの設置といった非常に高度な経営視点を求められ、様々な利害関係者との調整も必要になる仕事です。
 

前者の業務が得意な人は後者が苦手、逆に後者が得意な人は前者の業務を好まないといった傾向があり、非常に二律背反的です。

両者の仕事を組織として並行して進めるのがバックオフィスの特徴です。
 

 

バックオフィス の目標設定

 
バックオフィスの目標設定においては、その仕事の特徴を踏まえた方法が求められます。

例えば経理部にスタッフが3人いたとして、2人は定型業務中心+一部企画的業務、1人は企画的な業務中心+一部定型業務というような違いがあったとします。

その場合の目標設定シートのイメージはこちらです。スタッフによって割合の部分を変えていきます。

 

<定型業務中心>の経理担当者の目標例

 
このシートの特徴は2つあります。
 

  • 左の列、目標設定の項目

 
あらかじめ決めておくことにより、バックオフィスの社員達にどのような観点で仕事の目標を立てて欲しいか導くことができます。

「日常業務における目標」のみを定めるのではなく、「工夫・改善」、「組織貢献」、「後輩育成」などの目標を考えてもらうことにより、部署全体の仕事の質を高める目標が設定可能となります。

 

  • 右の列、割合

 
人によって定型業務中心の人もいれば、工夫・改善系の企画推進業務中心の人もいるので、それぞれに応じた割合を入れることにより、目標の重みづけが可能です。

新人のうちは日常業務に関する割合が高く、スキルが上がっていくにつれ、工夫・改善や組織貢献の割合が高まっていくのが健全な姿です。

 

目標は必ず具体的に。数値も盛り込む

 
バックオフィスの目標設定においても、なるべく具体的で数値にできるものは数値にしましょう。

上記の目標例でも数値化を行っています。
 

  • ミス〇回以内
  • 経費を500万円削減
  • 経費精算の作業工数を2日短縮
  • 下半期から、部下に業務の一部を分担

 
このようにミスの回数、金額の目標、実施時期の目標などを明確に定めています。

逆にあまりよくない例はこちらです。
 

  • ミスなく遂行する
  • 決算スピードを速める
  • 経費削減提案を行う
  • 部下指導に力を入れる

 
これらは具体的な期限や金額が書かれていないため、何をやろうとしているか曖昧です。

これでは年度末に評価しようにも「できたか・できていないか」の判断に苦しむので、やめましょう。

 

まとめ

 
バックオフィスの仕事は、会社の経営方針、経営計画との強い連動が求められるため、社長としっかり対話を通じて、やるべき事を明確化する必要があります。

またバックオフィスの業務は非常に多岐にわたり、定型業務と企画系業務が併存しています。
担当者によって業務内容が異なるので、それぞれに合った目標設定が必要です。

どんな仕事であっても、定型業務をこなすだけが役割ではありません。
そうならないよう、目標設定の時に自分がやるべき仕事をしっかり考える機会をつくりましょう。

その上で目標はなるべく具体的に定め、数値化できるものは数値化し、評価の際に具体的なフィードバックができるような仕組みに変えていきましょう。

こうして作り上げた「強いバックオフィス」が、必ず会社を成長に導いていくでしょう。

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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