管理職
管理職が会社組織の要であることは、言うまでもありません。
経営と現場、部署と部署をつなぎ、日々の業務を推進する。
製品やサービスの質を高め、人材を育てる。
管理職は、会社の“今”と“未来”を担う重要な存在です。
ところが多くの企業が「管理職の成り手がいない」「管理職が育たない」「管理職が本来の仕事ができていない」という問題に直面しています。
この問題にはさまざまな要因が絡んでいますが、大きな理由の1つが「管理職の業務が多すぎる」ことです。
管理職からこのような声を聞いたことはありませんか?
「業務量が多すぎて、本来やるべき仕事ができない」
「日々残業に追われ、休日に出勤することもある」
「部下が定時で帰った後の残務までカバーしなければならない」
「残業時間管理、有給消化管理など、本来の業務とは関係のない管理業務が多すぎる」
このように常に仕事に追われ忙し過ぎる管理職の姿を見れば、部下が「管理職って大変そう。私は無理。なりたくないな・・・」と思うのも無理はありません。
その結果として、次の管理職の成り手が出てこないという悪循環が生まれています。
今週のブログは、「会社として本気で管理職の業務を減らすべきではないか」という提言を、社長へ向けてお伝えします。
目次
管理職が本来の仕事をできていない

管理職は、本来、経営の一員としてマネジメントを行う立場です。
ところが日々の仕事の実態は、さまざまな雑務や問題対応に追われ、会社の未来につながる仕事に十分な時間を使えていません。
本来やるべき仕事ができなければ、管理職が生み出せる付加価値も低くなります。
その結果、会社としては管理職にあまり高い給料が出せず、残業の多い部下より管理職の給与の方が低いなどという不可思議な現象も生じます。
それを見た部下は、「管理職」が魅力あるポジションに思えません。
次の世代の管理職が出てこず、ますます今の管理職の業務負荷が重くなる。 こうして悪循環が続いていきます。
この悪循環を解消するための1つの対策が、管理職の業務削減・負担軽減です。(特に雑務など付加価値の低い仕事の削減)
以下、具体的に業務を削減する道筋についてご説明します。
管理職に「伝言ゲーム」をさせない

全社に関わる連絡事項などを「管理職経由」で社員に伝えている会社は少なくありません。
例えば、有給申請のルール変更や人事評価制度が変更されたとき、
まず発信部署から管理職に説明し、さらに管理職が部下に説明するという伝言ゲームになります。
インターネットのなかった時代は、この方法が現実的だったかもしれません。しかし、現在もこのやり方を続けるべきでしょうか。
何人もの管理職が同じ内容の説明ために時間を費やしてしまうのは非常にもったいないことです。
効率的な方法はたくさんあります。
該当部署から全社員に直接メールで配信
社内ポータルや掲示板に掲載
該当部署が全社員向けにオンライン説明会を数回開催
説明動画を作成して全体に共有
まずはこれらの方法で伝え、質問があれば該当部署の窓口に連絡をもらい、その回答を全体共有すれば、同じ質問に何度も対応する必要もありません。
もちろん、管理職にはしっかり理解してもらう必要はあるので、会議等の場で管理職に説明するのは問題ありません。
ただし部下への説明は、その内容を最もよく理解している該当部署が直接行う方が正確で効果的です。
バックオフィス部門は全社連絡の際、何かと管理職経由の伝言ゲームに頼りがちです。
そのルートを原則禁止とし、バックオフィスから直接伝える方式にすることで、管理職の負担を軽減できます。
管理職を「コールセンター」にしない

伝言ゲームの問題と似ていますが、管理職に部下からの事務問合せ対応を担わせている会社もあります。
例えば、ある社員が就業規則に関して質問したいとき、人事にダイレクトに問合せするのではなく、いったん管理職に相談する方式です。
管理職が内容を確認し、必要に応じて人事につなぎます。
人事部で全ての質問を受けるのは大変だからこの方式を採用しているのは分かります。
しかし、受け答えしなければならない管理職も大変です。
自分の専門外、もっと言えば苦手な領域の質問に対応する知識をつけなければなりませんから。
今の時代は、社員も管理職も、全員が助かる解決方法があります。
就業規則などのルールであれば、AIのファイルサーチ等を活用して、簡単にQ&Aシステムを作ることができます。
これを導入すると、例えば給与規定について質問すれば、回答だけでなく「規程の第〇条に記載されています」という出典つきで教えてくれます。
このような方法で一次対応し、判断が必要な質問や個別事情が関係する相談だけを人事部の担当者が受けるようにすれば全体の負担が軽減できます。
管理職にコールセンターのような役割を担わせるのではなく、社員が自分で調べて自分で解決できる仕組みを整えるべきです。
管理職を「チェック担当」から解放する

管理職は部下の仕事のチェックに多くの時間を費やしています。
例えばこのようなチェック業務があります。
工場の生産ラインで使用した材料の日次報告に入力間違いがないか
部下の売上見込み報告書の数字が合っているか
(それが間違っていると社長に報告する売上予測がずれてしまう)
部下の勤怠入力に間違いがないか
部下の月間残業時間が上限を超えていないか
このように管理職はたくさんのチェック業務を担っていますが、その業務自体の付加価値は低く、本来管理職が費やすべき時間ではありません。
チェック作業のほとんどの工程はパターンに基づいて行われているため、自動化は容易です。
最終のお墨付きは上司が与えなければならないかもしれませんが、その手前までのチェック作業はAIに任せられます。
また、入力する時点で間違った情報が登録できないようにロックしてミスを減らすのも良い方法です。
有給取得や残業時間のチェックなどは、システムが先に要チェックの対象者を抽出する方法もあります。
例えば、管理職に対して次のような通知が届く仕組みです。
「Aさんは今月の残業が〇時間まで達しています。本人には私(AI)からアラートを出しておきます。業務上不都合や問題がある場合には、Aさんと相談して調整してください」
こうした仕組みに変えることで、管理職の負担を大きく減らせます。
情報を管理職だけに限定しない

会社の情報の一部を管理職だけに共有しているケースがあります。
特別の機密情報であれば階層等による情報制限は必要です。
しかし、それほど機密性の高くない情報まで管理職以上にしか知らせないと、結果として管理職の業務が増えます。
さらに、社員が自分で考える力も育ちにくくなります。
情報を制限しすぎて管理職の負担が増えている例
ある営業部では、顧客別損益を管理職しか知りません。
部下はどの顧客との取引が黒字か赤字かわからないため、赤字顧客との取引を改善しようとは考えません。
上司が「あのお客様は赤字だから、価格を引き上げる交渉をするように」といちいち指示を出す必要があります。
部下も最初から分かっていれば、上司に指示されなくても改善努力のしようがありますが、情報を与えないが故に部下は自覚せず、上司が個々に情報伝達する手間が増えます。
管理職の中には「自分は管理職だから部下の知らない情報を持っている」ということ自体に優越感を感じる場合がありますが、それは上司の実力でもなんでもありません。
管理職が実力を発揮すべきなのは、情報を知っているということではなく、 その情報から課題を設定し、チームの判断や行動を導くことです。
結果が見えなければ、部下はPDCAを回せない

もう1つ事例を示します。
営業部でA商品よりもB商品を伸ばそう!という方針を掲げているとします。
もし、それぞれの売上進捗データを管理職しか見られないとしたらどうなるでしょうか?
それはとりもなおさず、部下に「あなたたちはPDCAのC、つまり結果の確認をやらなくてよい」と言っているようなものです。
頑張ったところで、B商品の売上をどの程度伸ばせているかの進捗が分からなければ、次にどうしたらよいか考えられません。
もしB商品の売上進捗が良くないとしたら、それを知っている上司が部下に
「B商品が売れてないからもっと〇〇の施策を徹底しなさい」
と指示することになります。
これでは手間がかかるうえに、上司と部下が一体のチームとしてB商品拡販を目指すムードにはなりづらいでしょう。
上記2つの事例のように、管理職と部下がアクセスできる情報に制限をかけるほど、部下は現実、事実を知らないので自ら考えなくなり、上司へ依存してしまいます。そして上司の仕事が増えます。
上司部下それぞれが正確な事実を分かった上で、どのような対策をとるべきかを一緒に話し合うのがチームの望ましい姿です。
管理職に求める報告業務を減らす

管理職の業務分析をすると、部長会や経営会議などへの報告準備に驚くほど時間を使っています。
報告は必要な業務ですが、報告のための準備作業は何も富を生み出さない仕事であり、管理職が多くの時間を費やすのはあまりにもったいないことです。
そこで社長には以下の方針を打ち出していただきたいと思います。
資料の体裁にこだわらない
見栄えのよい立派な報告書を出してくる管理職がいたら、その作成にどの程度時間を使ったかを問うてください。
AIで上手く作らせているなら問題ありませんが、自分でパワーポイントなどにまとめていたならば、「word資料で十分」としてください。
見栄えがいまいちであっても、重要論点、判断や意思決定に必要な情報が揃っていればよしとしましょう。
数字集計資料は自動化する
経営会議などで必要とするデータの作成は、原則自動作成できるような投資をしましょう。
報告書作成で時間が多くかかるのは、あちこちに散らばっている数字をとりまとめ、綺麗な表やグラフにするところです。
これらの作業は、AIの得意分野であり、かなりの部分まで自動作成可能です。しかもエンジニアの特別な知識がなくても実現できます。
報告書の種類を増やしすぎない
管理職が求められるがままに報告書の種類を増やしていくと、一体誰が見ているんだろう?という目的不明の資料が出てきます。
情報量が多すぎて焦点がぼやける資料も出てきます。
既に役目を終えた資料を今だに作っている場合もあります。
仮に報告書の種類を新たに増やすのであれば、従前の報告書から1つないし2つを廃止することをセットで考えるのがおすすめです。
これまでは資料を作る所まででエネルギーを使い果たし、分析や対策検討が十分にできないまま会議にのぞんでいました。
今後は、資料作成は自動、分析は70〜80点レベルのアウトプットを自動作成、対策案も50〜60点案を自動で出し、それを土台に管理職があるべき対策を考えるサイクルにしていきましょう。
資料作成が仕事の一部と思っていた管理職には大きなパラダイム変換ですが、これで本来の管理職の仕事にやっと集中できるようになります。
管理職の複数の役割を切り分ける

プラント大手の日揮ホールディングスでは、 管理職(部長職)の仕事を3つに切り分ける管理職分業体制を導入しています。
従来1人の管理職が担っていた3つの役割を、3人の管理職で分業するというものです。
目的は管理職の負担を軽減して管理職のハードルを下げるとともに、個々の強みを活かすことです。
具体的には以下の3つの役割を明確に切り分け、別々の管理職が担うことにしました。
部長(ラインマネージャー)
ビジョン・戦略の策定、変革の推進。中長期的な組織の方向性を示し、事業変革(脱炭素やDXなど)をリードするリーダーシップを期待される
CDM(キャリアデベロップメントマネージャー)
部員の人材育成とキャリア開発に専念。メンバー1人ひとりと向き合い、中長期的なスキルアップや評価、1on1を通じたコミュニケーションなどを担当する
PCM(プロジェクトコーディネーションマネージャー)
各プロジェクトにおける人材配置(アサインメント)と進捗管理を担当する。日々の業務・案件の推進責任者で、案件のヒトモノカネのコントロールなどを行う
部下からすると、目的に応じた3人の上司がいるような状態です。
このやり方を中小企業の営業部に当てはめるならば、Xさん、Yさん、Zさんの3人が3つのチームをそれぞれマネジメントしている状態から、3人が大きなチームを手分けしてマネジメントする状態への移行です。
1人で1チームをみる場合、短期的な営業数値達成から中期的な営業戦略や方針の策定と実施、部下の育成などを全て1人でやる必要がありましたが、管理職だからといって全てが得意なわけではありません。
そこで例えば次のように役割を分担します。
Xさん:中長期の戦略と変革を担当
Yさん:業績達成・日々の業務運営を担当
Zさん:部下の育成、ノウハウ蓄積を担当

もともと後輩指導や育成に関心の高かったZさんは自分の得意が活かせる仕事になり、イキイキと頑張っています。
Yさんは数字達成に強くこだわるタイプです。一方で、将来のビジョンなどを描くことには苦手意識がありました。
役割を分けることで、苦手な仕事から離れ、強みである業績達成や営業活動により多くの時間を使えるようになりました。
会社規模や社内の管理職の人数を踏まえると、上司業務3分割があなたの会社に当てはまるかはわかりません。
しかし、管理職1人1人に全ての機能を担わせ、各業務において合格点を出してくれ、というのも現実的ではありません。
管理職の中に、一部の役目を免除される管理職がいてもいいのではないでしょうか。
そこを柔軟に考えられると、管理職の人員配置にかなりバリエーションが出せると思います。
事例に出した日揮ホールディングスでは、管理職業務3分割の制度導入以降、管理職応募者数が増え、管理職の平均年齢を下げることができました。
ハードルを下げたことで、管理職に挑戦したいと思う若手が増えたようです。
管理職業務の付加価値を高めて給与を上げよう

ここまで、「管理職が多くの仕事を抱えすぎて本来の業務ができない状態」から脱却する道筋をお伝えしました。
管理職がこれまで抱えてきた業務の中には、特段の創造性や判断力を必要としない、低付加価値の仕事が一定割合ありました。
これを減らすことができれば、管理職はもっと付加価値の高い仕事を行えるようになり、管理職の給料も上げられます。
管理職が本当の意味で会社の要となり、経営に近い仕事になるので、マネジメント力も着実に身についていきます。
そうして仕事が面白くなり、報酬も上がれば、若い世代にとっても管理職が「将来目指したい仕事」になっていくはずです。
まとめ
「管理職の成り手がいない」「管理職が育たない」「管理職が本来の仕事をできていない」。
多くの企業が抱えるこれらの問題の背景には、管理職が本来の役割とは異なる業務を抱えすぎている問題があります。
管理職が付加価値の低い雑務に追われたままでは、会社の未来を考え、人を育て、組織を前に進めるという、本来の役割を十分に果たせません。
従来の常識に捉われることなく、減らせる業務を減らし、管理職の仕事の価値とやりがいを取り戻していきましょう。
こちらの記事もおすすめです。






