「上司と部下は上下関係ではない」部下を持つ全ての上司に理解してほしいこと

2021.02.12

私は管理職研修や幹部育成研修などのトレーナーとして、マネジメント育成を支援させていただくことがあります。

研修のテーマは、リーダーシップ、PDCA、コミュニケーション、部下の育成など多岐にわたりますが、最も大切にしているのは上司としての心構えや役割認識についてです。
 

チームの大小問わず、メンバーを統率する上司は、

「本来何をするべき役割なのか?」「どのような責任がある仕事なのか?」

という非常にベーシックな部分の理解が不足している方がたくさんおられます。

基本的なこの理解が揺らいでいると、いくら努力してもマネジメントが上手く回りません。
 

今週のブログでは、部下を持つすべての上司が大前提として抑えておくべきポイントについてお伝えします。

 

上司と部下の関係とは

 
部下を持つ人が最初に認識しておくべきことは「上司と部下の関係とは何ぞや?」ということです。

上とか下という字が使われていることもあり「上司は部下より権力がある」と考えている人もいますが、その認識は改める必要があります。

 

上司と部下の関係は上下関係ではない

 
「つべこべ言わずにやれ!」

「俺の指示に従わないやつは出世させない!」

「嫌なら他の部署でも行けば!?」
 

こんなことを言っている人があなたの会社にはいませんか?
または内心思っている人がいませんか?

上司も部下も同じ人間です。まるで召使いに対するような言い方をしては相手を不愉快にさせるだけ。
 

そして、厳しく指導することと、権力をふりかざすことは意味が違います。

上司と部下は上下関係ではなく、お互いのリスペクトの元に成り立つ関係です。

 

上司と部下は役割分担

 
上司と部下は、仕事を役割分担していると考えましょう。

上司は束ねる組織全体の成果に責任をもち、部下は自分の担当業務に責任をもつという関係です。

組織として意思決定する権限は上司にありますが、それは上司が「偉いから」ではなく、「意思決定する役割、部下を導き育てる役割、を担当しているから」にすぎません。

部下の業績が悪いのは、本人の問題もありますが、部下が業績達成できるようサポートして導くのは上司の役割であるため、上司の責任でもあります。

 

部下は上司の鏡

 
出来の悪い部下を嘆く上司がいますが、その姿勢こそが問題です。

子は親の鏡と言うように、部下は上司の鏡。

部下の能力不足は上司の能力不足や指導不足を映しています。
 

部下の遅刻や勤務態度の乱れは上司および所属組織の乱れに起因する場合がほとんどです。
 

  • 部下に本気になって欲しければ自分が本気になる
  • 部下に本音で話して欲しければ自分が本音で話す

 
こういった姿勢が求められます。

 

続いては「上司の役割とは何か?」についてです。

 

上司の役割とは

 
「上司の役割は部下を管理すること」だと思っていませんか?

しかもその“管理”というのは、「部下の仕事の状況を把握し、必要に応じて叱咤激励し、状況を自分の上司に報告すること」だと認識されがちです。

しかし上記の“管理”は上司の数ある仕事のごく一部でしかありません。
 

組織の長である上司の最も大事な役割は、組織目標の達成です。

組織には必ず目指すゴールがあります。

営業組織であれば売上やシェアなどの目標、
物流部門には配送スピードやコスト削減などの目標、
カスタマーサービスには顧客満足度の向上、などの目標があります。

その目標に向けて、経営資源である人、モノ、カネ、情報を駆使して達成させることです。

 

では組織目標を達成するためにやるべき仕事のうち、上司が特に力を注ぐべき仕事は何でしょうか?

それは「たゆまぬ改善・革新」「人材マネジメント」「会社方針の媒介役」の3つです。

 

たゆまぬ改善・革新

 
昨年と同じことを継続するだけでは、仮に今年の目標を達成できたとしても十分には評価されません。

組織目標を来年も再来年も達成するためには、常に仕事の質を改善・革新していく必要があります。

日々のPDCAを回しながら、戦術の見直し、品質改善、顧客満足度の向上、省力化、自動化、ナレッジの蓄積、リスク対応などを常に意識し、組織的な改善・革新を促していきます。

メンバーが目先の仕事にとらわれすぎないよう、改善・革新につなげていくのは上司の重要な役割です。

 

人材マネジメント

 
部署のメンバーの能力を高め、その力を最大限引き出すことができれば、組織力は大いに高まります。

上司が”人材マネジメント”として力を割くべきは「人材育成・管理」と「環境整備」の2点です。

 

★人材育成・管理

 
部下が成果を上げるために必要な業務知識やスキル、仕事の姿勢などを高めます。

上司が直接教えるだけでなく、メンバー同士の学び合い、外部研修、マニュアル整備、自己学習等も上手く組み合せます。

仕事の姿勢に問題があれば指導します。
部下が様々な壁を乗り越えていけるよう、精神的な支えにもなってあげます。

また成果をあげるためのサポートとして、目標設定~進捗管理~指導・フィードバックのサイクルを日常的に回します。

 

★環境整備

 
メンバーが力を発揮しやすい土壌づくりも欠かせません。

個々のメンバーの能力が高くても、お互いの関係性が悪く協力姿勢がなければ組織として成果を上げることができません。

相互に信頼感があり、皆が意見や気づいたことをフランクに言える職場にするため、常にアンテナを張っておく必要があります。

リモートワーク環境などの整備や勤務体系など、メンバーが働きやすい環境を整えるのも大事な仕事です。

メンバーが余計なストレスに悩むことなく、全力で仕事に集中できる環境を用意してあげなければなりません。

 

会社方針の媒介役

 
上司には会社の方針を部下に噛みくだいて伝える役割もあります。

会社のビジョン、社長の発するメッセージは、必ずしも現場の担当者に正しく伝わっているとは限りません。

上司は各現場が理解しやすい形で伝え直し、正しい認識と実行を促します。

会社が言っていることと、現場でやっていることが食い違わないよう、現場に落とし込んでいくのも上司の役割です。

 

まとめ

以上、部下を持つすべての上司が大前提として抑えておくべきポイントについてお伝えしました。

まとめて確認しましょう。

部下を持つ上司は自らの役割を正しく認識することが出発点です。

間違っても部下に対して「あなたを管理することが私の役割」と思ってはいけません。

経営陣や部課長による各上司に対する1on1や上司の評価指標などを通じて、改めて上司の役割について共通の理解を形成していきましょう。

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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