人事施策 を重ねても効果がないのはなぜ?会社を良くするために人事が踏み込むべき領域とは

2026.01.29

人事施策

人事部門に求められる役割は、一般的に「採用、配置・異動、育成、評価・報酬制度の設計と運用、労務管理、給与・社保、働きやすい環境づくり」といった領域です。

以下、これらを「一般的な人事の役割」と記します。
 

ところが、人事が頑張ってこれらの役割をしっかり推進したとしても、会社が良くなるとは限りません。組織力、人材力が十分に高まるとは言えません。

それはなぜでしょうか?
 

今週のブログでは、人事部門が「一般的な人事の役割」を果たしても会社が良くならない場合、人事は境界を超えてどこに踏み込んでいく必要があるのか? についてお伝えします。

「経営に求められる人事とは何か」を考えるきっかけにもしてみてください。

 

「何をやっても良くならない組織」の原因

 
人事部門ないし人事担当者は、社員一人一人が己の力を存分に発揮し、成長することを願っています。

社員一人一人の集合体である組織が、意欲的で協力的、活力にあふれ、高い目標に向けて一丸となって突き進んでいく組織であってほしいと願っています。
 

しかしながら、現実はそう上手くはいきません。

組織はさまざまな課題を抱えます。
 

人が定着しない、育たない、意欲的でない、挑戦者の足を引っ張る、互いに協力しない、情報共有しない・・・こうした問題が次々と出てきます。
 

そこで人事としては、一般的な人事の役割(=採用、配置・異動、育成、評価・報酬制度の設計と運用、労務管理、給与・社保、働きやすい環境づくり)の中から何らかの施策を通じて問題解決に取り組むことになります。

 

人事施策の限界と組織の現実

 
中でも、採用ターゲットの見直し、採用後の定着化促進、評価制度の見直し、働きやすい環境づくり、上司と部下の対話重視、管理職研修などが、よく講じられる施策です。 

ところが、それらの施策を行っても、会社(または組織)が良くなるとは限りません。
 

いい人材を採用し、社員教育も整い、制度もよくできている。

働きやすい職場環境が提供されており、報酬水準も競合と比べて遜色ない水準。
 

それにもかかわらず、組織の雰囲気が悪く、活力に欠け、モチベーションが低く、社員同士が互いに協力しない、なんていう状態は十分に起こり得ます。

それは一体なぜでしょうか?

 

人事施策だけでは会社が良くならない原因

 

人事がさまざまな手を打っているにも関わらずなかなか組織がよくならないと、人事としては無力感を感じるかもしれません。

しかしそこで諦めることなく、人事の一般的な役割を超えて、次なる打ち手に踏み込む必要があります。
 

具体的にどのような打ち手をすべきかを考えるために、まず「人事施策を行っても組織が良くならない場合の原因」を掘り下げてみましょう。
 

私は、人事が頑張って制度や環境を整えているにもかかわらず、組織が良くなっていない会社を何社も見てきました。

振り返ってみると、原因は主に次のようなパターンに分類できると感じています。
 

ここでは、その原因と対策について考えていきます。

 

1.業績要因(業界全体の市場縮小、シェア低下、業績低迷、目標未達が続く、将来性不安)

2.経営者要因

3.組織要因

  3ー1. 管理職要因

  3ー2. 業務設計要因(業務内容・プロセス・業務配分)

  3ー3. 経営と現場のコミュニケーション要因


1つ目の業績要因は、市場環境、ビジネスモデル、商品力、営業力などに起因して、明るい未来を描けないまま働いている状態です。この点の対策についてはテーマから外れるため、今回はこれ以上はふれません。

2つ目の経営者要因も同様に今回は深くはふれません。経営者自身の能力が会社規模の限界にぶつかっていたり、経営者が現状に満足してしまっていたり、会社を私物化したり、社員から尊敬されない言動を発したりするなど、様々な理由で経営者が求心力を失っているケースです。
 

一方で、3つ目の組織要因は、人事が越境して介入できる(すべき)もので、十分な改善効果も期待できるものだと考えます。

 

管理職要因

 

組織のリーダーである部長や課長などの管理職が十分な力を発揮できていないケースです。

立場としては管理職であるものの、マネジメントを適切に行っていないため、部の方針が定まらず、規律もなく、組織が混乱している状態です。

本来、組織をマネジメントするうえでの基本は、次のような点にあります。
 

会社方針を受けて部署の方針や目標を明確に定め、業務を適切に割り振ること

目標に向けての進捗を可視化して定期的に確認し、問題があればその原因と改善策を議論し、対策を実行すること(=PDCAを回すこと)

メンバーとしっかりコミュニケーションをとり、規律があり、意欲的で、関係性がよく、フランクなチームをつくること

人材を育成すること

 

上記の基本を実行できない管理職は、本来ならば、別のできる管理職にバトンタッチさせるのが人事の役割です。
 

しかし実際のところは、代わりの適任者が見つからないケースも少なくありません。

代わりがいないのであれば、そのまま見過ごすのではなく、当該管理職にマネジメントを基礎から叩き込むしかありません。
 

「叩き込む」というのは正確な表現ではありませんが、それほど踏み込んだ関わりが必要になります。
ただしこれは、精神論や根性論を押しつけることではありません。

マネジメントの基本の型を提供し、その型通りにやってもらうところから始めてもらいましょう。
 

初めてケーキを手作りするとき、何も見ずに作るひとはいないでしょう。

まずはレシピを見ながら作ります。

その上で、次回以降に少しずつ自分流アレンジを加えていくものです。
 

管理職としてやるべきマネジメントができていないならば、まずはその人にマネジメントのレシピを与えて、その通りにやってもらいましょう。

本人が自分のやり方で改善するよりも、標準的なレシピ通りに実践してもらった方が結果的に早く組織が良くなります。
 

このような問題に直面した場合、人事の一般的な発想では「管理職研修を実施」という対応に陥りがちですが、研修だけ行っても実態はほとんど変わりません。

研修に加えて、実際のやり方(=レシピ)を「強要する」ところまで踏み込むことが、人事には求められるのではないでしょうか。

 

※管理職の仕事の型を覚えてもらう方法として、以下のブログもご参照ください

 

 
 

業務設計要因(業務配分・業務内容・プロセス)

 

業務設計の不備は、組織の低迷や離職、人間関係の不和を招く直接的な原因となります。

管理職が「我流」で行いがちな業務内容や配分を、次の3つの側面から見直す必要があります。

 

業務配分

 
担当者間の業務分担が曖昧すぎて「どこまでが自分の仕事で、どこからが相手の仕事なのか」が分からないケースです。

このような場合

「何で●●さんは自分の仕事を私に押し付けるの?」

「何で私がそこまでやらなければならないの?」

といった揉め事が増えていきます。揉め事が多い組織は、当然ながら組織全体の雰囲気も悪くなります。
 

業務内容

 
IT活用が全然進んでおらず、紙資料からの転記入力作業や、単なる数字のチェック作業など徒労感を感じる作業ばかりが続くと、頭を使う仕事や改善アクションに取り組むモードになりづらくなります。

サービス残業や夜間対応が多かったり、休みもろくにとれないほど忙しい状態が続けば、気持ちに余裕がなくなります。

その結果、他人と会話する余裕もなくなり、時には周囲への配慮に欠け、人間関係がきしんでいきます。
 

また、能力に比して難易度の高すぎる仕事を与えられたら、多くの人は気力が萎えてしまいます。

本気でやり抜けば何とか到達できるレベルの仕事を割り振るべきです。
 

一方で、長らく同じような仕事をやらせている場合も、慣れすぎて新たな努力をしなくなります。

余裕があるので、無駄なおしゃべりで他人の邪魔をしたり、政治的な動きや他人の噂話に時間を使う人も出てきて、やはり職場の雰囲気を悪くします。

 

業務プロセス

 
業務をどのようにデザインし、誰に何を割り振るかは、組織運営においてとても大切な要素です。

しかし実際は、思い付きのように業務を増やし、思い付きのように担当者を割り振る上司が少なくありません。

(業務デザインや業務の割り振りは、管理職の仕事の中でも特に体系化されていない領域なので、個々の我流がまかり通ってしまっている背景もあります。) 

 

このような組織は、そのまま放置しておいたら決してよくなりません。

前述の管理職の力量の話と同様、その管理職では適切な業務設計ができないからです。

であるならば、人事として当該組織に介入し、業務のあり方やプロセス、業務配分を見直すところまでやってみましょう。

人事の領域を超えた解決が求められます。

 

経営と現場のコミュニケーション要因

 

広い意味でのコミュニケーションのズレが、社員の意欲減退や現場の活力低下を招いているケースがあります。

例えば以下のようなものです。
 

会社の方針や経営のメッセージが現場に正しく伝わっていない。間違った情報として伝わっている

経営の意図と中間管理職の指示が異なる

会社が評価することと、現場が評価される(評価して欲しい)と思っていることにズレがある

経営陣が現場の状況をわかっていないが故に、会社の施策が現場に響かない

 

情報の流れは、経営から現場に伝わる方向もあれば、現場から経営に伝わる逆方向もあります。

経営から現場までが1つの人体のように、情報が正しく迅速に流通するのが望ましいコミュニケーションの状態です。

ところが、社員数が増え、組織階層が増え、経営陣と現場社員が顔を合わす機会が減り、直接話を聞く機会が減ると、情報が曲がり、ねじれ、誤った内容に転じて流通するという事態が生じます。

ここでは具体的な手法にはふれませんが、社内のコミュニケーションや情報流通の在り方も組織活性化において非常に有効な手段です。

人事はこの領域にも踏み込んでいいのではないでしょうか。

 

まとめ

人事施策

 

人事が「一般的な人事の役割」を丁寧に進めても、組織が良くならないケースが存在します。

その原因には、「業績要因」「経営者要因」「組織要因」などがあります。
 

「業績要因」や「経営者要因」は、人事では直接コントロールできない領域にあることもあります。

一方で「組織要因」に関しては、人事が踏み込んで解決できる余地があります。
 

組織要因を改善する方法としては、管理職のマネジメント改善、業務フローや分担の見直し&効率化、社内のコミュニケーションや情報流通の見直し、などがあります。

これらは人事の一般的な職務範囲には含まれていません。
 

しかし、人事の仕事が「社員の力を最大限に引き出して会社の成長に貢献する」ことである以上、組織のボトルネックに突っ込んでいかない手はありません。

人事部の標準メニューにない解決方法であっても、人材を活かすために最も解決すべき問題が他にあるならば、それもメニューに加えていってはいかがでしょうか。
 

経営に求められる人事とは、採用や制度や労働環境を整えることにとどまらず、組織がうまく機能していない原因に向き合い、必要であれば踏み込んでいく存在です。

今回の記事が、会社における人事の役割をあらためて考えるための一つの整理材料になれば幸いです。

 

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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