社内コンペでも使える!社員からどんどん 良いアイデアを引き出す方法

2020.04.30

 
「社内で新規事業のアイデアや提案を募ってもいい案が上がってこない」と嘆く社長は多くいらっしゃいます。

アイデアを出す「発想力」は個人の能力に依存すると思われがちです。

しかし、発想力は努力と習慣によって磨くことができます。

あなたの会社でもやり方を変えれば、いいアイデアがもっとたくさん出てくる可能性があります。

 

私は以前在籍していた会社で、毎年新規事業コンテストを主催していました。

そこで「お題の出し方」によって出てくるアイデアの量と質が大きく変わることを実感したのです。

当時の経験なども交えながら、その具体的な方法についてお伝えします。

 

良いアイデアが出ない原因を考える

良いアイデアを引き出す方法

 

新規事業のアイデアを募っても、良い案が出てこない原因は大きく2つあります。

良い案が出てこない原因1 そもそも考えていない

 

  • 日常業務で忙しすぎる
  • 新しい提案をしても上司につぶされる
  • 新しい事をワイガヤする風土じゃない
  • お客さんと深い対話をしていない
  • アンテナがたっていない

 

などなど、理由は色々あります。

当然、考えなければアイデアは出ません。

普段の仕事の仕方や職場風土に起因する問題です。

 

良い案が出てこない原因2 考えてもらう時の依頼の出し方に問題がある

 

例えば新規事業のアイデアを募る際、依頼の仕方の2パターンを考えます。

1.「何でもいいから新規事業のアイデアを考えてください」

2.「介護業界で働く人が少しでもゆとりを持ちリラックスできるようなサービス/商品を考えてください」

1と2では、どちらがより良いアイデアが出てくるでしょうか?

 

1は何の制約もないので自由に考えられます。

趣味の釣りに関する事業でもいいし、ちょうど育児で苦労しているなら育児関連サービスでも構いません。

思考が色々な領域に広がって行きます。

しかし、広がるばかりで収束しづらくなり、なかなか深くは入っていきません。

 

2は範囲が最初から絞られているので、ワクワクはしないかもしれません。

しかし、テーマが明確なだけに現場の課題を調べやすく、すぐ人に話を聞くこともできます。

結果として、具体的なアイデア、現実に即したアイデアが浮かびやすくなります。

つまり2の方がより良いアイデアが出やすくなります。

これは個人の能力や発想力の違いによるものではありません。

誰でも一定の制約条件を課された方が、より深く実践的なアイデアが出やすくなります。

 

アイデアの質が飛躍的に高まった事例

 

事例1

以前私が勤めていた会社で、新規事業コンテストを開催していた時のことです。

ある年度はテーマフリーでやったところ、皆の思考が様々なジャンルに広がっただけでした。

ビジネスモデルやサービスの検討が甘く、深みのある提案は出てきませんでした。

プレゼンテーションを聞く経営陣にとっても、次から次へと違う業界、領域の提案が出てくるため、所々話についていけず、十分に理解が及びませんでした。

結果として両者に消化不良感が残りました。

次の年は、テーマを「特定業界の新規事業」かつ「将来事業規模が〇億円以上」という条件を課しました。

すると、提案の掘り下げが圧倒的に深くなり、より具体的な提案が増えたのです。

 

事例2 

別の会社で行った業務改善提案コンテストも同様でした。

研修の中で、5つのチームに対して、特にテーマを定めず業務改善提案を考えてもらいました。

結果、出てきたアイディアは表面的な提案が多く、プレゼンテーションでは経営陣が眠たそうにしていました。

2回目の研修では、先ず各チームに会社の課題を思いつく限り挙げてもらいました。

その中から経営陣がより重要だと認識している課題を幾つか取り出し、各チームに具体的なテーマを与えました。

あるチームのお題は、「年々上がる物流費をいかに抑えるか、自社でできること、外部の委託配送業者側でできること、それ以外でできることを考えてほしい」

2回目のテーマはかなり限定されたので、メンバー達は現場で取材を重ねてリアルな課題を把握し、実際に採用されるアイデアが出てきました。

プレゼンを聞く経営陣も前のめりでした。

 

良いアイデアの出し方は一点集中して深く考えること

人の頭脳も時間も限られた資源です。

限られた資源を最も効率よく活用するには、同じ時間内であれこれ拡散して考えるより、1点突破で集中して考えた方がアウトプットの質が上がります。

くわえてビジネスにおけるアイデアは、思いつき(ジャストアイデア)では役不足です。

ジャストアイデアをいかに実現可能なプランに落とせるかが勝負です。

脳味噌をフル回転させ、とことん集中して深く考え、アイデアの精度を高めるやり方にこだわるべきです。

なお、社員からのアイデアを期待する際に忘れてならないのは、依頼する側が考えをしっかりまとめることです。

「何でもいいから新規事業を提案して」というのは、社員に会社の方針を委ねているようなもの。

新規事業を進めていきたいのであれば、どのマーケットに着目し、どんな類の事業をやっていきたいのか、(大枠であったとしても)方針を定める事がファーストステップです。

 

方針が曖昧なときは?

 

どうしても方針が言語化できない段階であれば、少なくとも現状の課題を明確に伝えましょう。

例えば、下記のような課題があったとします。

 

  • 現在の主力事業は取引先の需要動向に大きく左右される
  • 価格が不安定
  • エンドユーザーの顔が見えず、サービスの改良などがやりにくい
  • せっかくいい技術をもっているのに、それを世の中に十分還元できていない

 

この課題をしっかりと明示した上で、「この課題をブレークスルーできるような次の柱となる事業を考えて下さい」と伝えれば、それなりに焦点が絞れた案が出てきます。

本業から離れた領域で新規事業のアイデアを募りたい場合は、制約をかけたくないかもしれません。

その場合、今年は「健康食品」、来年は「スポーツ用品」というようにテーマを入れ替えていくのもいいでしょう。

もしくは、最初にアイデア募集ジャンルを3~4つ用意し、そのいずれかに応募してもらう方法もありだと思います。

 

良いアイデアで会社活性化する

 

良いアイデアは会社を変える力を持っています。

最初はちっぽけなアイデアかもしれません。

しかし、それが会社の業務効率を大きく改善する可能性もあるし、新しい事業の柱に育っていくこともあります。

 

良いアイデアが出ると職場が盛り上がり、実際の成果につながればさらに活性化します。

だから社員が気軽に色んなアイデアを発信できるのは、とてもいい企業風土だと思います。

いきなりそういう企業風土にするのは簡単ではないかもしれません。

しかし、アイデアコンテストとか、改善提案活動などを地道にめげずに続けていけば、次第にそういう習慣が染みわたっていくはずです。

社員から出てくるアイデアを少しでも質の高いものにするために、ぜひ今回紹介した「思考の範囲を絞る」「制約を与える」という方法を使ってみてください。

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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