ベンチャーキャピタルは将来上場しそうな成長性の高い投資を行うビジネスです。
彼らが投資をする時に一番重視するのは“人”です。
第一に経営者の実力と人物を見ます。
更に経営者の脇を固める経営幹部人材を見ます。
経営幹部人材が安定しており、能力が高く、何よりも信頼できる人物であれば、その会社は伸びる可能性が高いと判断します。
どんなに経営者の手腕があっても、それを実行する経営幹部陣が弱ければ成長に限界があるので。
経営幹部に誰を登用するかは経営者にとって大事な判断ですが、あなたは幹部を選ぶとき何を基準に判断しているでしょうか?
目次
経営幹部登用は属人的になりがち
経営幹部候補者が複数いた時に、非常に誰を登用するかは悩ましい問題です。
(ここで言う幹部は、取締役、執行役員、事業部長クラスなど大きな責任と相応の振るまいが求められる役割を想定しています)
経営幹部の登用は会社の行末を左右する大事な意思決定でありながら、
中小企業であれば、まずトップが「〇〇君を事業部長に抜擢したいと思うけどどう?」と側近の役員や幹部に尋ねます。
その上で特に大きな反対がなければほぼ決定という流れが一般的です。
トップが最終決定する事自体はいいと思います。
ただし決定プロセスにもう少し客観的な議論があっていいのではないかと思います。
私自身、色々な会社の経営幹部登用や登用された人の従前従後を見てきました。
上手くいくケースもあるけど逆も結構あります。
経営幹部登用の成功失敗の法則というと大げさですが、経営幹部を選ぶ上ではコツがあります。
経営幹部登用の大原則
まず大原則は、「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」です。
成果を出した人には報酬でむくい、徳のある人に地位を与えなさいというもの。
紀元前に中国の「書経」に書かれた英知であり、西郷隆盛が述べた名言です。
社内で肩で風を切っているような経営幹部が、セクハラやパワハラで問題を起こす事例など聞いたことありませんか?
やり手で仕事のできる人が権力におぼれて不祥事を起こす事例は枚挙にいとまがありません。
こうした経営幹部登用は上記の名言に沿わない登用だったと言えます。
経営陣は目にみえる分かりやすい成果やアピールの上手さで経営幹部を決めたくなります。
しかし、いったん冷静に「徳」の有無を見極めるべきです。
仮に経営幹部候補が複数名いたら、次のような観点から人物比較をしてみるのをおすすめします。
- 人徳(威張らない、人に感謝する、人の気持ちがわかる、公平、約束を守る、謀り事をしないなど)
- 思慮深さと断行力
- 逆境で逃げない精神力
- 仕事の能力(構想力、商売センス、マネジメント力、統率力、コニュニケーション力など)
経営幹部候補者の評価に際しては情報を広く集める
登用すべきか否かの判断に際しては、経営陣の印象だけで決めず、情報収集における工夫も有効です。
経営幹部候補者の部下や同僚の意見を聞く
部下や同僚は、上司には見えない側面を見ています。
経営トップがいきなり聞いても本音で話してくれない可能性が高いので、信頼できるしかるべき人を通じて聞いてもいいでしょう。
直属の部下ではなく、経営幹部候補者とやり取りの多い他部署の意見も有効です。
他部署の人の方が冷静に見ていますので。
取引先(特に発注先)の意見を聞く
社内ではいい顔をしているのに、取引先に対して全然違う態度を見せる人もいます。
これは、貴重な情報源です。
過去の仕事の持続性をみる
直今1~2年で急に成果を上げて頭角をあらわす「新星」もいます。
しかし、目先の輝きだけに惑わされてはいけません。
持続性のチェックも重要です。
経営幹部候補者が過去の仕事の中で、順境の時も逆境の時も、気持ちがブレずに安定的に仕事に向き合ってきたかを見ます。
自己管理の安定性をみる
成果を出している人でも自己管理が弱い場合があります。
- 遅刻や半休が多い
- 服装の乱れ
- 時間にルーズ
- やたら喫煙回数が多い
など。
プライベートの問題が仕事に影響する場合もあるので、プライベートが安定しているかも大事な観点です。
登用すべきか否かの判断に際しては、経営陣の印象だけで決めず、情報収集における工夫が有効です。
経営幹部になったら何をしたいかを聞く
幹部候補者本人がどのように考えているかもきちんと聞く必要があります。
- 本人自身がそのポジションを引き受ける意志と覚悟があるかどうか?
- 実際にその役割を担ったら何をしたいと考えているか?
経営幹部の素養がある人は、一担当者であったとしても部署全体や会社全体のことをよく見ています。
会社の問題点が何か、今の組織で改善すべきところはどこか、大体のことは分かっています。
少し考えてもらう時間を与えれば、経営幹部になったら何をしたいか、説得力のある話をしてくれると思います。
逆に自分の成果のことばかり考えて全体を見る習慣のない人は、経営幹部として何をしたいか問われても整理された回答ができません。
仮に経営幹部に選ばれてしまっても、次の日から急にふさわしい行動はとれないでしょう。
中小企業の方からは「そんな立派な経営幹部候補、うちにはいないよ!」と言われるかもしれません。
たしかに最初から経営幹部の条件を満たす人などいません。
しかしながら将来その役割を担う可能性を秘めた社員は必ずいるはずです。
私は色々な中小企業と接点がありますが、企業規模の大小を問わず、どんな会社にも必ず将来のスター、有望株がいます。
期待する社員に対しては、将来会社を背負って立つ存在になってもらうには何が不足しているかを、早いうちからフィードバックしてあげた方がいいです。
期待して目をかけてあげれば人は必ずや育ちます。
幹部を選ぶときは成果よりも人物をみる
幹部候補者からふさわしい人物を選ぶには、感覚で決めてはいけません。
いくつかの角度から情報を集め、客観的な議論を経て決定する。
目立つ成果だけで決めるのではなく、候補者の人物をしっかり見ることが大切です。
最初から幹部にふさわしい人材はいません。
卵の段階からしっかりフィードバックして育てていく会社の姿勢が欠かせません。
以上、「経営幹部登用に失敗しないシンプルなコツ」でした。
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