管理職に必要な能力 は?個人業績よりも「人間性」を重視すべき理由

2021.09.30

「 管理職に必要な能力 」とはなんでしょうか。

理想の管理職候補者は、仕事の成績が優秀で、部下の指導もよくできて、人間的にも優れている人材ですが、これらをすべて兼ね備えている人はなかなかいません。

そんなとき

「個人業績トップだけど人間性にやや問題があるAさん」

「人間的にとても信頼できるけど、業績が中の上のBさん」

あなたはどちらを選びますか?

 

今週のブログは、管理職登用において迷った時は「個人業績よりも人間性を重視して選んだ方が良い」ということについてお伝えします。

 

管理職登用に関する名言

管理職に必要な能力

 
西郷隆盛の名言といわれている有名な言葉があります。

「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」

高い業績を出した人には報酬を与え、人徳のある人には地位を与えなさいという意味です。
 

裏を返せば、人徳はないけど業績がいい人に地位を与えてはいけないということです。

しかし、様々な会社における実際の管理職選びを見ると、業績が最も高い人を管理職に登用するケースが多く見られます。
 

高業績を理由に登用される人の中にも徳を兼ね備えた方は当然いますが、

一方で業績トップ人材の中には
 

  • 自己過信して天狗になっていたり
  • 自分のやり方が随一と思って変化を拒んだり
  • 他人に教えるのが嫌いであったり
  • 部下に強圧的な態度でパワハラ問題を起こす

 
これらのケースが多いことも否めません。

 

なぜ管理職は人間性が大事なのか?

 
管理職は責任が重く、仕事量も多く、プレッシャーもかかる大変な仕事です。

このような理不尽や困難に直面することもあります。
 

  • 残業代がつかなくなり、部下より給料が低くなることもある
  • 上から怒られ、下から突き上げられる
  • 自分のプレイヤー業務をやりながら部下の管理や育成もしなければならず、時間がいくらあっても足りない
  • やる気に欠ける部下がいればその指導に時間をとられる
  • 部下が休んだ時はその業務フォローもする

 
管理職になるといちメンバーだった時とは大きく異なり、自分のことよりも会社のこと、自分のことより部下のことを第一に考える立場になります。

部下からもその仕事ぶりを一挙手一投足見られます。

この任に堪えるには人間性を問われざるを得ません。

 

管理職に問われる利他の姿勢・部下を育てる気持ち

 
ある企業の営業担当者の中で、個人として年間1億円の売上を上げている優秀な人材Cさんがいます。
 

Cさんと同じ部署の他の5人のメンバーは平均売上5,000万円程度なので、Cさんは業績が突出しています。(6人の合計売上は3.5億円)

 
そんな時、会社として誰か1人を管理職として引き上げる必要があり、Cさんを候補としました。

ここで 管理職としてのCさんに期待される役割は、自分自身がさらに頑張って1.5億円の売上とし、周囲のメンバーも指導して5,000万円平均を6,000万円に引き上げることでしょうか?(この場合チーム合計売上は4.5億円)

 

恐らくそうではありませんよね。

 

Cさんに求められることは、個人業績は将来的に5,000万円に下がったとしても、周囲のメンバーの業績を8,000万円平均に引き上げてチーム合計を4.5億円にすることです。
 

 
さて、Cさんがシナリオ2の「メンバーの業績を大きく引き上げる」状態を達成するためには、次のような行動が求められます。
 

  • 自分個人の営業活動時間を減らし、部下の商談同席や、部下育成、意欲喚起などの優先的に時間を使う
  • 自分が積み上げてきた営業ノウハウを隠さず部下に伝授する
  • 必要に応じて自分の担当顧客の一部を部下に譲る
  • すぐに成果の出ない部下を粘り強く教える。相手に応じた指導を行う

 
これらは決して簡単なことではありません。
 

自分の蓄積してきた財産を部下に譲り、さらに部下を自分よりも優秀な営業に育てていくことになるので、

自己業績だけを考えていればよかった時代から180度の意識の転換です。

自分中心の人にはなかなかできることではありません。

 

管理職にどのような人を選んだらよいか

 
管理職を選ぶには人間性が大事という話をしてきましたが、具体的にどのような人を選んだらいいでしょうか?

ピーター・ドラッカーが上司たる人に求めることとして、この言葉を残しています。
 

「重要なことは、わが子をその人の下で働かせたいと思うかである。

その人が成功すれば、若い人が見習う。

だから、私はわが子がその人のようになってほしいかを考える。

これが人事についての究極の判断基準である」
 

自分の子どもをその人の下で働かせたいと思えるならば、それはいい上司であるいうことです。
 

「あいつは優秀で切れるけど、自分の子どもをあいつの下では働かせたくないな・・・」と思うなら、その人は管理職としてふさわしい人材とは言えません。

 

管理職を選ぶための2つの判断軸

 
管理職を選ぶための判断軸は、「人間性」と「進化率」の2軸がふさわしいと考えます。

仕事の能力はもちろん大事ですが、それ以上に不可欠なものとしてこの2つがあります。

 

「人間性」

 
ここまで述べてきたことのまとめにもなりますが、
 

  • (親のように)部下を想う愛情と厳しさ(優しいだけでも駄目。厳しいだけでも駄目)
  • 利他の気持ち(自分本位ではない)
  • 自己責任(他人のせいにしない)
  • 部下を1人の人間として尊厳をもって接する(威張り散らしたりしない)
  • 忍耐力
  • 誠実さ
  • 信頼性

 

「進化率」

 
進化率とは、その人が進化していくスピードのことです。

現時点の能力が必ずしも突出していなくても構いませんが、常に変化していける力をもっている人が、進化率の高い人です。

リーダーがどんどん進化すれば、自ずと部下も進化していきますが、進化しないリーダーの下では部下が育ちません。

進化率の高い人は、次のような特徴があるので、見きわめることが可能です。
 

  • 素直に人の意見を聞く
  • 頭が柔らかい(固執しない)
  • 行動力がある(一歩踏み出すことを恐れない)
  • 好奇心があり、よく学ぶ

 

以上のように、管理職として誰を選ぶか迷った時は、「人間性」と「進化率」の2軸を重視すると成功確率が高いでしょう。

 

良い管理職を輩出するには会社の仕組みも大事

人材育成計画

 
管理職の選定において対象者の個人業績よりも人間性を重視するには、会社の風土や仕組みも大きく関係します。
 

管理職になっても、その人のインセンティブがチーム業績ではなく、個人業績に依存しているとしたら、その人は自分の業績を上げることに執心し、部下育成に力を入れません。

企業文化として、チームで協力して成果を上げる考え方がなく個人個人が勝手に頑張る状態、個人商店の集まりがたまたま組織になっているだけだとしたら、人間性重視の管理職選びはその文化には合わないでしょう。

 
仕事の成果は当然大事ですが、

「結果を出したやつが偉い。結果が出てないやつは発言する資格がない!」

このような過度な結果偏重風土や、結果に至るまでのプロセスを重視しない社風でも、人間性重視の管理職選びは上手くいきません。
 

人間性重視と相性がいいのは、特定個人の業績に依存せず、チーム全体の底上げを図り、組織の持続性・発展性を重視する会社です。

 

まとめ

 
管理職に誰を登用するかによって、組織の発展性は大きく変わります。

管理職選定のときは、その人の個人業績だけを見て決めるのではなく、人間性をより重視して判断する。

それが必ず長期的な会社の発展につながっていくでしょう。

 
 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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