人事コンサルタント の仕事はAIに奪われるのか?代替される業務と生き残る業務

2026.02.27

人事コンサルタント

マッキンゼーやアクセンチュアなどグローバルなコンサルティングファームにおいて、人員削減の動きが進んでいます。

背景にあるのはAIの普及によってコンサルタントの業務の一部が代替され始めていることです。
 

私自身人事コンサルタントとして活動している立場から、今週のブログでは

・人事コンサルタントの仕事はどこまで生き残るか?

AIに取って変わられるものとそうでないものの違いは何か

これらを考察したいと思います。
 

人事コンサルタントを活用する企業側にとっても「これまで外部リソースを活用している業務のうち、どこまでが社内リソース×AIで可能か?」を考えるヒントになれば幸いです。

 

人事コンサルタントの業務とAIによる代替

人事コンサルタントの業務は多岐にわたります。

それぞれの業務によって、AIによる代替可能性は異なるので、以下の領域に整理して考えてみます。

 

AIによる業務代替の度合い一覧

 
※現時点のテクノロジーを元にした考えなので、将来的に変わることはあり得ますが、当面はこの代替度合いでいくのではないかという判断です。

:AI代替が相当進むが、人事コンサルタントが価値を出せる領域も残る
:AIと並存しながら人事コンサルタントが生き残る
:AIにはほぼ代替できない

 

以下、それぞれの領域について背景と理由を説明します。

 

人事制度設計~運用サポート(〇)

人事コンサルタント

 
人事制度設計においては、AIとのブレインストーミングは非常に有効です。

一方で、制度の細部までの落とし込みはAIによる代替が難しい業務と言えます。
 

人事制度の中身は、主に以下の3つで構成されます。
 

評価制度(社員の働きをどのような方法で評価するか)

給与制度(社員の給与水準をどの程度とするか、昇給による上げ幅や賞与の支給基準などをどの程度にするか)

等級制度(新人から幹部までの業務難易度や役割の違いをどのように定義づけるか) 
 

それぞれの制度は会社によって大きく異なります。
 

社長の考え方、社風、競合の状況、業務の難易度、事業の収益性・生産性・その今後の見通し、直面する課題など、さまざまな要素を検討しながら制度を作っていくので、会社の個性が大きく出るところです
 

例えば、目標管理制度1つをとっても、結果数字のみを目標におく会社もあれば、プロセス目標を重視する会社もあります。
 

目標を主要な3つ程度に絞る会社もあれば、細かな項目毎に目標を立てるケースもあります。

同じ目標管理とはいえ、細部は似て非なるものであることが多いように、人事制度は一見同じように見えて細部はかなりバリエーションがあるのが特徴です。
 

さらに、給与制度を新たに作った場合も

社員の従前の給与と従後の給与をどのように変更するか?
上がる人、下がる人が出る場合にどのように調整するか?

など、一人ひとりへの影響を考慮した設計が不可欠です。
 

このレベルの微調整は、現時点ではAIには対応できません。

 

人事制度設計においては、人事コンサルタントがお客様の意思決定を促す役割もあります。

お客様側で何となくこうしたいという青写真はありつつ、本当にそれで良いかを決断する上では、知見ある人とのキャッチボールが必要です。
 

コンサルタントはお客様と多様な観点から何度も議論を重ね、お客様の納得を元に、部品を1つ1つ組み立て、最終的に全体統合していきます。

人事制度に絶対解はなく、お客様の納得度や腹落ち感がとても大切なので、コンサルタントとお客様の対話があってこそ制度が固まっていきます。
 

仮にAIとのキャッチボールで人事制度設計をお願いしたらどうなるでしょうか?

それらしい提案は出てくるものの、細部の詰めも含めて「最終アウトプット〜クライアントの最終決断」まで導くことは叶わないでしょう。

このような点から、今はまだ第三者である人事コンサルタントが客観的視点を提供するのがベターです。

 

研修企画~実施(△)

 
研修領域では、企画や教材開発の業務の多くがAIに置き換わっていくと考えられます。

特に知識や技能などのテクニカルスキルを教える研修では、AIが教材開発(動画教材、講師ナレーションなど含む)、習熟度テストの作成、受講案内、受講履歴管理まで完結できます。

これまで研修会社にお願いしていた教材開発は、社員がAIとやり取りするだけで完成度の高いものを作れるので、外部発注する必要がなくなります。
 

仮に外部発注するとしても、発注コストが従前よりも安くなるのは間違いありません。
 

一方でマネジメントスキルなどの研修は、単に知識を習得するだけでなく、自分の抱える課題について他者と話し合ったり、事例を元に他者とディスカッションするなどによって理解が深まるため、

ファシリテーション力の高い講師(コンサルタント)の価値は依然として高いです。
 

教材開発の大半はAIに任せつつ、受講生に深い気づきを与えるファシリテーションや伝え方は、人間ならではの価値を大いに出せる領域となります。
 

研修領域におけるコンサルタントの役割は今後さらに変化していくのではないかと思います。
 

教材の企画や開発はAI主導

知識・スキル習得がメインの研修はeラーニングやAI教材で十分

コンプラ研修やハラスメント研修など、どこの会社でも内容が近しい研修も、AIによる企画・教材・ナレーション・テスト等で十分

双方向の対話が必要な研修では、経験知がありファシリテーションの上手なコンサルタント(講師)が重宝される

単発研修よりも学びを実践につなげるための継続サポートがコンサルタントには求められる。研修をやって終わりではなく、研修で学んだことの反復学習の仕組みや継続指導などを行い、会社の業績向上につながる育成を求められる

 
総じて、研修屋さんの市場は縮小しますが、「会社の成長のために我が社の社員をどのように育成したらいいですか?」という問いに対応できるコンサルタントは生き残っていくでしょう。

 

採用戦略~採用代行(△)

 
採用成功の法則はある程度パターン化できるので、採用の企画はAIが得意とする業務です。

AIに採用職種、ターゲット、現状の採用の課題、採用予算、選考基準、選考プロセス、プロセス毎の歩留まり、応募の多かった求人票とそうでない求人票の違い、求人手法による費用対効果などの情報を伝えれば、かなり的確なアドバイスが返ってきます。

求人票も書き直してくれます。スカウトもうってくれます。

業務の大半を自動化し、結果を見ながら改善していくこともAIでできてしまいます。
 

一方でAIでは対応が難しい領域として残るところもあります。

  

本当の採用戦略デザインの業務

  • どの職種を外部採用で確保するか / どの職種を社内異動・育成でまかなうか
     
  • どの部署・職種を積極採用していくか
     
  • どの部署・職種を縮小・維持または削減していくか
     
  • 採用競争力を左右する報酬水準をどの程度に設定するか(市場水準・競合との比較・社内バランス)
     
  • 母集団が少ない職種・希少職種の場合 → 選考基準を引き下げて採用し、入社後の教育・OJTで補う方式をいかに確立するか
     
  • AIと人の役割分担・共存をどう設計するか など

 
このように、採用戦略で考えるべき事は多岐にわたります。

あらかじめ決められた職種の採用をどのように進めるか?のコンサルティングはAIが担いますが、そもそも会社として人材の採用及びそれに関連する領域全体の戦略デザインができるコンサルタントは需要があります。

  

採用代行業務

 
採用代行は今より市場は縮小しますが、消えることはないでしょう。

AI書類選考、AI面接、AIスカウトなどがどんどん普及しているので、代行業務の市場は確実に縮小します。


一方で、AIにスカウトや面接を委ねていても採用の結果が全然ついてこないという事態は確実に起こり得ます。

相手の心に響くスカウトであったり、面接の場での魅力づけ、選考基準に満たないが実は採用すべき人材を落とさないなどは、コンサルタントが力を発揮するところです。

 

AI活用が進んだ先での差別化

各社が採用にAIを使いまくると、結果としてどこの会社の採用手法も似たり寄ったりになり、自社だけが抜きんでることが難しくなる可能性もあります。

その時に、人の経験知やアナログ手法、人脈形成、ファンづくりなども人間ならではできる領域となります。

 

就業規則や規程の作成(△)

 
就業規則や人事関連規程(育児休業規程、介護休業規程、出張旅費規程、ハラスメント防止規程、安全衛生管理規程など)は、会社間による差が少ないものです。

これら規程類作成業務はAIが大いに活躍する領域と言えます。
 

従来は人事コンサルタントや社労士にお願いして規程を作ることが一般的でしたが、今後はAIを軸に作成し、最後に社労士などプロの見解をもらえば十分になります。

例えば、就業規則の作成手順は以下のような流れになります。
 

AIに就業規則作成を指示。会社の業務内容、従業員数、職種の特徴、業務の特徴、自社の考え方、明確に定めたいと思っている事などを伝える。

ついでに、世の中の標準型とするか、社員に対して厳しめ&会社のリスクヘッジ型とするか、社員寄りとするか、なども伝える。

出てきた就業規則(案)が、世の中の平均的な就業規則と比べてどのような点に特徴があるかをAIに考えさせ、自社の定めとして本当にそれでよいかを考えて結論を出す

近年の労働法改正や社会トレンドの変化がどのように反映されているかをAIに尋ね、その考え方を踏襲すべきか考えて結論を出す

就業規則(案)で自分自身が気づいた疑問や懸念点を書き出し、納得がいくまでAIとやり取りする

以上を経て大よそ出来上がった就業規則(案)を、社労士やプロのコンサルタントに見てもらう。気になる箇所や法令に沿っていない箇所、修正すべき箇所などを検討してもらい、納得のいくアドバイスをもらう
 

コンサルタントの役割はかなり縮小するものの、最終判断に際しては有効なご意見番として機能していくことでしょう。

 

労務相談(〇)

 

労務相談はAIでは代替しづらい領域です。

従業員がいれば、ハラスメント、労災、残業上限時間超え、サービス残業などなど、さまざまな労務トラブルが発生します。

その解決策についてAIに考えさせれば十分参考になる見解を出してきますが、そのまま対策に活かせるかというとそうはいきません。
 

労務トラブルは、答えが白黒はっきりしないものが多く、その問題が発生した状況、発生した理由、関係者の発言、初期対応、制度や規程などが絡み合っているので、それぞれを検証した上で次の対応を決めていく必要があります。

生成AIはそこまで内部事情を理解しておらず、AIに相談する人事側も労務のプロではない場合が多いので問いの投げかけ自体が的を得ないことも少なくありません。
 

その意味でも、経験豊富な社労士さんに相談するのが最も確実です。

数々の現場を見てきた社労士であれば、優れた医者のように各事象を整理しながら、事実確認や対話を通じて問題の本質を探り当て、社風や関わる人の性格にも配慮した解決案を提示してくれるでしょう。

 

組織開発・エンゲージメント向上(◎) 

中小企業の人材戦略

 

組織開発やエンゲージメント向上もAIが代替しづらい領域です。

これらは具体的に何をするかわかりづらい言葉ですが、「従業員が前向きかつ意欲的に働き、相互信頼・相互協力があり、職場への帰属感や仕事のやりがいを感じ、高い生産性で働けている状態」 をより高めるための活動です。
 

例えば、「ここ最近職場の中堅社員の士気がとても低い。彼らが率いる部署も離職者が増え、業績も落ち込んでいる」という問題を解決したい場合、その処方箋は一つではありません。

考えられるアプローチとしては、中堅社員向け教育、対話の場づくり、業務量を減らすためのDX化、人員不足の解消、理念の浸透、人事制度等の見直し、働きやすい環境づくり、オフサイト活動による横のつながり強化など、考えられるアプローチは多岐にわたります。
 

その中から、打ち手の優先度を決めていく仕事は難易度の高い仕事です。

社長の考え、職場風土、社員の気質、守るべき強み、社内力学、事業の成長性、投資余力なども総合的に勘案して対策提案していくことになるので、会社に対する深い理解も求められます。

お客様に、対策を納得してもらうための説得力、見識、推進力もあってこそなので、AIはまだ太刀打ちできません。

AIは具体策を考える上での壁打ち相手や、他社事例調査などに有効活用できますが、貢献はその程度にとどまると考えられます。

 

まとめ

AIの普及が進む中で「人事コンサルタントの業務はAIにどの程度奪われるのか」について人事領域ごとに整理してきました。

AIに代替されず、今後も人事コンサルタントが価値を出せる仕事には幾つかの共通項が見えてきました。
 

◎メタ認知

 
問題の事象をより大きく捉える業務は簡単には代替されません。

特定の職種の採用を具体的にどう行うかを考えるのはAIの特技ですが、採用する/しないの判断や採用ターゲティングは、そもそもの事業戦略、業務設計、会社の育成能力、AIと人の並存のあり方、などの周辺領域と密接に関わることなので、AIは簡単には答えを出せません。

採用業務を一段、二段引き上げた広い視座で捉えられる力(=メタ認知)は、AIに代替されにくい領域と言えるでしょう。
 

HOWを教えるのではなく、WHY(目的・なぜ)を問いかける力とも言えます。

「人事制度設計」や「組織開発」がAIに代替されにくいのは、その業務自体が複雑系であり、広い見識とメタ認知を求められる業務だからです。
 

◎対話力・ファシリテーション力

 
人事コンサルタントの仕事には、クライアントがもやもやしている課題に対して、どのような打ち手をうつべきかを納得してもらう役割もあります。

いわば意思決定の後押し役です。

AIが良い提言をしたからといって、それを「はい、わかりました。その通り実行します」とはならないでしょう。

鵜呑みにしてもし上手くいかなかった時に「AIの指示通りやったのに失敗しました」と言い訳ができるでしょうか?
 

意思決定者は自分なりに腹落ちし、納得の上で決めてこそ、その結果に対して責任を負うことができます。

その決断を後押しする役割こそ、今後もAIではなく人間ではないでしょうか。
 

であるからこそ、経験に裏打ちされた対話力や説得力、意思決定に導くファシリテーション力はますます人事コンサルタントのコアスキルとなります。
 

◎知識の提供より実質的な成果

 
単なる知識の提供ではAIに勝てません。

しかし、労務トラブルをどのように解決すべきか対策を考え調整しながら解決に導くのは人間ならではの仕事です。

研修の教材開発はAIに任せたとしても、実際に研修の場で受講生にインパクトを与えたり、研修実施後の改善が見られない時にその状況を把握し、次の一手を考える主役は人間です。受講生に寄り添っにたサポートができるのも人間ならではです。

知識やHOWの提供にとどまらず、お客様が真に求めている成果を出すためのコンサルティングはAIには代替できません。

 

◎長期伴走

 
規程をつくる、制度を設計する、研修を実施するなどの仕事の価値は、程度の違いこそあれ、従前に比べるとコンサルタントに依存する度合いが下がります。

企業側が自分たちでできることが増えます。
 

しかし企業側でやれる事が増えたからといって、それが「社員育成がうまくいく」「よい人事制度ができる」「採用がうまくいく」事の保証にはなりません。

必ずや問題が発生し、試行錯誤し、それを乗り越えながら、会社の成長につなげていくステップが必要となります。
 

その過程において、寄り添って伴走してくれる人事コンサルタントは今後もお客様にとって有難い存在ではないでしょうか。

実務面の寄り添いだけでなく、感情面の寄り添いができるのも人間の強みですよね。

 

 

以上、AI時代に人事コンサルタントが生き残るためには何をすればよいか?を考察してきました。
 

今後は、人事コンサルタントにとっても、コンサルタントを活用する企業にとっても、

「AIに任せるべき業務は徹底的に任せ、人が担うべき業務に時間とリソースを集中させる」判断が重要になります。
 

コンサルタント自身がリスキリングするための指針にもなれば幸いです。

 

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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