ポジションパワー
「来週までに必ずやるよう、強く指示しておきました!」
そう部長に報告するマネージャー。しかし1週間後、部下は指示を全く実行していませんでした。
なぜ、部下は指示したにもかかわらず動いてくれなかったのでしょうか?
こうした悩みを持つマネージャーは少なくありません。
これらの原因を、部下のやる気や能力の問題で片づけてしまうと、本質を見誤ります。
なぜなら、同じ業務の指示であっても、「A課長から言われたらやるけど、B課長から言われたらやらない」ということが普通に起こり得るからです。
部下マネジメントがうまくいかない人ほど、無意識にポジションパワーに依存している傾向があります。
今週のブログは、マネージャーがポジションパワーに依存することの限界と、そこから脱却して普遍的なマネジメント力を身につける道筋についてお伝えします。
目次
ポジションパワー とは

ポジションパワーとは、役職や人事評価権など、上司という「立場」から生まれる力です。
「上司が言うのだから従いなさい」
「私の言うことを聞かないと評価が下がるよ」
このような、逆らい難い関係、”上下”の立場を利用するのがポジションパワーによるマネジメントです。
組織を円滑に回すためには指揮命令系統が必要不可欠なので、ポジションパワーを使うこと自体が悪いわけではありません。
迅速な意思決定ができる、統率をとりやすい、指示が明確になる、などのメリットもあります。
問題は、ポジションパワー「だけ」で人を動かそうとすることです。
部下は機械ではなく人間なので、言われただけで指示通り動くとは限りません。
なぜなら、受けた指示に対する納得感、腹落ち感がなく、理解も不十分だからです。
上司から指示されてその通りやるだけの完全受け身の状態では、自分なりに解釈して主体的に取り組む姿勢も生まれません。
また、一方的な指示の場合は部下の本音や反論も出てきづらく、相談もためらうようになるので、現場の重要な情報やリスクが上司に伝わらないリスクも高まります。
ポジションパワー に頼る人が多い理由
それでも多くのマネージャーがポジションパワーに頼りがちなのは、日本の企業組織において長らくそれが有効に機能してきたからです。
具体的には、以下の3つの背景があります。
年功要素の強い組織風土
年齢が上がれば役職も上がりやすく、「上司=年上」というのが一般的でした。
年長者を敬う文化もあり、「上司の指示には従うのが当たり前」という感覚がありました。
同質性の高い組織構成
組織メンバーは男性中心で、生え抜き社員の割合が高く、転職も比較的少ない組織が主流でした。
価値観が似ており、社内常識も通じ合うため、細かく説明しなくても空気で通じやすい環境でした。
忠誠心を評価する傾向
(日本人の特性もありますが)上に忠誠を尽くす人が評価されやすかったことも要因です。
自分の意見を出す人より、従順な人の方が目をかけてもらいやすいため、ポジションパワーによるマネジメントに違和感を感じる部下自体が少なかったのです。
つまり、ポジションパワー依存は「マネージャー個人の特質」というよりも、組織の歴史の中で脈々と継承され染みついてきたマネジメントスタイルとも言えるのです。
今はポジションパワーに頼れない理由

しかし、今はその前提が大きく崩れています。
今や年下の上司は当たり前。年齢に関係なく上司部下の関係が存在します。
この状況では「年長者だから」「役職者だから」という理由だけで黙って従わせることはできません。
人材の多様性も進みました。
職場における女性の割合が高まり、外国人も増えました。
新卒生え抜きに比して中途採用者が増え、様々なバックグラウンドを持つ集団となりました。
こうした環境では「言わなくても分かる」「上司の意図を察して動く」といった同質性への甘えは期待できません。
指示する仕事の目的、背景、目指すゴール、判断基準などを言葉で示さなければ、部下は動いてくれません。
今のマネジメントは立場の力で従わせる「押すマネジメント」ではなく、相手が納得して動ける「導くマネジメント」が中心になります。
ポジションパワー 依存から脱却する方法

では、ついついポジションパワーに頼ってしまうマネージャーはどうすればそこから脱却できるでしょうか?
実践できる4つの方法をご紹介します。
部下全員が「目上の人」や「外国人」だと思って接する
相手が目上の人なら、雑な命令はしないはずです。相手の状況や気持ちも理解しながら指示を伝えるでしょう。
相手が外国人なら、阿吽の呼吸や暗黙の了解に頼ることなく、背景や理由を説明するはずです。しかも、できるだけ平易な言葉でわかりやすく伝えるはずです。
この意識を持つだけで、「立場で動かす」から「納得できるように伝える」アプローチへと自然に変わります。
例えば「これやっておいて」ではなく
「この仕事の目的は何か」「なぜ今やるのか」「あなたに何を期待するか」「何を満たせば完了か」などを伝えましょう。
これだけでも、部下の反応は変わります。
部下全員が「入社直後の中途社員」だと思って接する
中途採用入社の人にとっては、プロパー社員の当たり前が当たり前ではありません。
今まで当たり前にやっていた業務に対しても
「なぜそんな仕事をする必要があるのか?」「もっと効率的なやり方があるのでは?」と感じるでしょう。
ここで「いいから(つべこべ言わずに)やって」、「そのうち分かるから」などは通用しません。
仕事の目的や期待値を伝える一方で、相手に
「もっといいやり方ないかな?」「前の会社ではどうやっていた?」
などの質問を投げかけ、知恵を出し合って仕事の質を高めていくスタンスが求められます。
全く異なる環境でのマネジメントを想定・経験する
決して転職を勧めているわけではありませんが、今の環境と全く異なる環境に身をおいた時にマネージャーとしてすぐに通用するか否かは試金石です。
従前の会社ではマネージャーに登用された実績から、部下も一定のリスペクトをもってくれていたかもしれません。
しかし転職したら、実績ゼロからのスタートです。周囲は「お手並み拝見」と注目しているだけでリスペクトはありません。
その環境において「ポジションパワーによるマネジメント」が通用するでしょうか?
立場の力が使えない状況において、いかに部下をマネジメントできるか。
自分のマネジメント力の真価が試される機会となるでしょう。
社内横断プロジェクトの責任者を担う
社内横断プロジェクトは、各部署からメンバーが集まり、メイン業務と並行してプロジェクト参画しながら共同で進めていく活動です。
ここでのメンバーは組織図上の上下関係ではないので、ポジションパワーによるマネジメントが通用しづらいです。
加えて、メンバー全員が本業と並行して参画しているため、プロジェクト業務の優先順位は下がりがちです。
本来業務が多忙を極めているとしたら「いついつまでにやりなさい!」と指示を受けたところで、手をつける時間すら確保できないかもしれません。
このような状況下であってもメンバーに何とか自分の時間を捻出して取り組んでもらうには、プロジェクトの目的や意義を語り、それに対する各人の深い共感を得ることが不可欠です。
社内横断プロジェクトの責任者になれば、ポジションパワーによるマネジメントがいかに無力であるかを思い知らされることでしょう。
ポジションパワー の逆はパーソナルパワー(人間力)
ポジションパワーの逆は「パーソナルパワー」です。
肩書きではなく、「この人と働きたい」「この人のためなら動きたい」と思ってもらえる力のことです。
その土台になるのは、以下の要素です。
上司その人への信頼と共感
目的や意義の伝達、共感
部下への深い理解
納得してもらえる説明、わかりやすい言葉
普段の声掛けや感謝の言葉・フィードバック
「上司と部下」という機能の関係を超えて、「人と人」という信頼関係を築けるかどうかが、パーソナルパワーを備える出発点となります。
まとめ

組織運営において「ポジションパワー」はマネジメントに必要な力ですが、それ「だけ」に頼るマネジメントは今の時代には機能しづらくなっています。
年齢も価値観もバックグラウンドも多様化する中で、部下はもはや「上司の指示だから」という理由だけでは動きません。
これからのマネージャーに必要なのは、「上司だから従え」ではなく「この人の言うことなら納得できる」と思ってもらうパーソナルパワーです。
本当に強いマネージャーは、肩書きで人を動かす人ではありません。
肩書きがなくても、人がついてくる人なのです。
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