強い会社は 組織運営 のハードウェアとソフトウェアのバランスが取れていると感じます。
ここでいう組織運営の「ハードウェア」とは、組織図、役割、レポートライン、報告・会議ルール、目標管理制度、人事制度、各種ルールなどを指します。
一方で「ソフトウェア」とは、メンバー同士のつながり、関係性、コミュニケーション、情報共有、信頼、相互協力などを指します。
組織マネジメントにおいてはこの両者が必要不可欠ですが、どちらか一方に偏っていたり、バランスを欠いている会社も少なくありません。
今週のブログでは、いずれかに偏った事例を見ながら、ハードとソフトの重要性とそのバランスについて考えてみましょう。
目次
ハードに偏った 組織運営

組織運営がハードウェアに偏っている事例を紹介します。
メディカル関係の機器販売やコンサルティングなどを行っている社員200人ほどの会社で、以下の特徴があります。
よくできたハードウェア
人事制度に紐づく目標管理が徹底されており、個人の役割と責任が明確
人事評価結果にもとづき、明確に昇給・降給が決まる
業務上のルールや報告義務が細かく規定されている
会議も統制がとれており、事前案内、アジェンダ設定、報告方法、議事録などが明確なルールで運営されている(遅刻などもなく時間通りに開始する)
課題
ビジネスモデルの強みで順調に拡大してきたものの、近年は成長が止まっている
市場の成熟や競争の激化において、営業最前線で競合に競り勝つ力が弱い。社員はやるべき事をやっているが創意工夫や新しい価値を提供するチャレンジ精神に欠ける
問題が生じると、原因が究明され、該当部署に対策が命じられるものの「決めただけで実行されない」ことが多い
企業風土
トップダウンの統制のとれたオーナー企業で、社員も真面目
個人商店的な色合いが強く、皆自分の役割、自分の目標達成にはこだわるものの、チームや組織全体への意識が薄い
「うちの部署をもっとこうしたいよね」「〇〇の問題、一緒に協力して解決しようよ」といった前向きな会話が聞こえてこない
同僚間のコミュニケーションは仕事上必要な会話がメインで、楽しげな会話や雑談などは少ない
同僚同士でランチや就業後の食事に行くことも少なく、たまに行くとしても固定メンバーの場合が多い
組織運営としてはよく考えられた仕組みがあり、拡大期にはその統制力ある組織が力を発揮しました。
しかし成熟期にさしかかった今、組織のメンバー同士をつなぎ相互作用を引き出すソフトウェアが足りないため、ブレイクスルーする組織力や個々の主体的な突破力が発揮されない状況に陥っています。
ソフトに偏った 組織運営

次は、組織運営がソフトウェアに偏っている事例を紹介します。
SaasプロダクトやECの集客支援などを行っている社員100人ほどの会社で、以下の特徴があります。
働きやすいソフトウェア
創業者が20代前半の時に学生時代の友人などを誘って立ち上げた経緯から、サークル的なノリで運営
顧客ニーズのあるSaasプロダクトが評価され、そこにいい人材も段階的に加わり、魅力的な人材とその人を慕うメンバーで会社が大きくなった
社員同士の仲がよく、上司部下も友達のような関係性。部署を超えて社員同士がつながっており、日中の会話も活発。仕事外では社内サークル活動が盛んで、就業後に連れだって飲みにいく人も多い
仕事においても協力的で互いにサポートし合う
業種的に働く環境を選ばないので、出勤の自由度やリモートワークなども積極的に取り入れており、働きやすい環境が整っている
課題
会社のルールなどに曖昧なものが多い。人事制度も一応存在しているものの、あまり優劣をつけない評価が行われている
市場環境としてはまだまだ伸びる余地のある商品だが、後発の競合が力をつけ、新規獲得で劣勢になりつつある
営業の目標が曖昧で、数字に対するこだわりや達成意欲が弱い
問題発生時に厳しい議論を交わして解決策を練る文化がなく、何となく議論で終わってしまい、本質的な対策が打てない
結果として細々した問題まで社長に判断が集中し、現場が社長に依存してしまっている
企業風土
離職率が低く、誰もが楽しそうに仕事をしている
会社や部署への帰属意識が高く上司部下関係なく意見も言えるストレスフリーな環境
協力的な反面、厳しさに欠け、馴れ合いになることがある。自由に意見は言うが、お互いの利害対立や責任問題になるような話には踏み込まない
会議がいつも遅れて始まるなど、ルーズな面も散見される
一定の利益が出ている現状に満足してしまっており、貪欲に事業を伸ばそうという機運があまりない
社員の中にはこうした「緩い風土」を密かに問題視する社員も出始めている
会社が好き、同僚が好きで、働きやすい環境であることは素晴らしい財産です。
しかし、さらに会社を成長させていくには、ルール作りや決定事項の徹底、目標の設定、評価、厳しさと優しさの両立、踏み込んだ本質的な議論などが必要な局面に来ています。
なぜ、ハードだけ/ソフトだけではダメなのか?

組織運営において、ハードハードとソフトのどちらか一方でも際立った強みがあれば、それはそれで優位性のある組織と言えます。
どちらも中途半端よりは、片側に振り切っている方が、会社は成長しやすいのも事実です。
しかし、組織の規模が拡大し、市場の一定のシェアを得た段階になると、そのままでは「次なる成長の壁」にぶつかります。
なぜでしょうか?
ハードウェアに偏った組織の弱点
ハードウェアにもとづく組織運営は、言い方を変えると「べき論」の組織運営です。
「こうあるべき」「こうでなければならない」というロジックにもとづいて構築されたルールや制度、階層に基づいて組織を動かします。
合理性があるので間違いはありませんが、それだけでは“非合理的な力”を生み出せないという弱点があります。
“非合理的な力”とは、「理屈で言えばやらなくてもいいこと」を、「理屈を超えてやりたい!」という想いで成し遂げる力のことです。
例えば
〇〇さんのために(本来は自分の仕事ではないけれど)できる限りサポートします
(忙しい時にさらに仕事が増えるとしても)これでチームの負担が減らせるなら私が担当します
今月のチーム目標達成まであと少しなので、残り3日間でやれる限りのことを全てやります
このような前向きな声です。
上司が強制したわけでもないのに、チームのため、誰かのために、自分の守備範囲を超えて頑張ってしまう。
このとき、社員たちは「べき論」で動いていません。理屈ではなく思いや感情で行動しています。
そのような行動の源泉こそが、組織への共感や信頼、同僚との相互理解、深いつながり、仲間意識といったソフトウェアです。
ハードウェア偏重の組織が“非合理な力”を引き出せないのは、ソフトウェアが不足しているからです。
ソフトウェアに偏った組織の弱点
一方で、ソフトウェアにもとづく組織運営は「背骨のない組織運営」と言えます。
チームで協力して進めていくことは得意ですが「将来目標を定め、そこから逆算して今やるべきことを決め、決めたことを徹底的に実施する」という、事業活動の骨格が中途半端な状態です。
ゴールを高く設定すれば、達成の過程において、メンバー同士の衝突もあり、激論を交わす必要も出てきます。
しかし明確なゴール設定もなく仲間組織でいるならば、衝突も激論も発生せず、結果として事業の発展にも限界が訪れてしまいます。
会社の指示を末端まで徹底させるというよりは、現場の社員1人1人の能力発揮や相互協力を重視する運営であるため、以下のような課題が徐々に露呈してきます。
結果を出すことへのプレッシャーがかからず、本気になりづらい
誤った方向に進んでいるのに、誰も気づかないか、気づいても対策議論を行わない。同調型組織、甘えの組織になりやすい
摩擦や対立を恐れて議論が深まらず、抜本的な改善、斬新なアイディア、チャレンジングな発想が出てこない
クリティカルな視点をもつ優秀な中途社員が、風土に馴染めず辞めてしまう
良好な人間関係と働きやすい環境は得難い強みではありますが、より強い組織に進化するためには、「ハードウェア」の導入が不可欠です。
チーム目標の設定、目標管理、会議やレポーティングの体系化、評価のメリハリ、ルールづくりとその徹底といった「丈夫な背骨」を通すことが求められているのです。
まとめ

私自身を振り返ってみても、過去に「いいチームだったな」と思える時は、その同僚たちとの仕事が楽しくて仕方ありませんでした。
とても忙しい環境ではありましたが、信頼関係で結ばれた仲間と、共に知恵を出し合い、手を取り合って仕事を進める毎日にワクワクしていたものです。
もしあの時、そのような仲間がおらず孤軍奮闘だったとしたら、自分の力は半分も出せなかったのではないでしょうか。
周りに生かされ、影響されることで、まさに“非合理的な力”が発揮されていました。
組織のソフトパワーは本当に偉大です。
一方で、お互いの関係性がよく笑顔もよく見られる職場でありながら、仕事のパフォーマンスの悪い組織もありました。
チームの目標が曖昧で、部門のトップが自分の仕事に甘く、問題が起きても原因究明と対策の議論が浅い。
仕事の規律やルールがなく、何となく形だけやる朝礼、議題の不明確な会議などが続き、緊張感のない状態でした。
ソフトウェアがある程度整っていても、ハードウェアがないと、意志なく流される組織になってしまうのだと痛感しました。
今あなたの組織は、ハードウェアとソフトウェアがバランスよく保たれていますか?
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