ネガティブフィードバック
人事評価の結果が出たら、上司は部下に結果のフィードバックを行う流れとなります。
その際、多くの上司が悩むのは「評価が低い人へのフィードバックはどのようにやればよいか?」です。
評価の高い人へのフィードバックはスムーズに進められても、低い人にはどう対応したらよいかわからず、つい後回しにしてしまう・・・という方も多いのではないでしょうか。
今週のブログでは、評価のフィードバックをどのように行うべきかについてお伝えします。
目次
「評価の低い人へのフィードバックは難しい」は本当か?

まず、立ち止まって考えてみてほしいことがあります。
本当に「評価の低い人へのフィードバック」だけが難しいのでしょうか?
逆に言うと、本当に「評価の高い人へのフィードバック」は簡単なのでしょうか?
実は、この点を誤解しているケースが少なくありません。
このような誤解をしている人たちによくあるのが、評価の高い人へのフィードバックを
「〇〇さん、すごく評価が高かったよ。これで給料も上がるね。来期も頑張って!」
といった程度の内容で終わらせてしまうパターンです。
しかし、フィードバックはそれだけでは十分ではありません。
高評価者に対しても、以下のようなステップでしっかり説明する必要があります。
評価結果(5段階評価の結果、評価項目ごとの結果など)
評価の理由(具体的にどのような点が良かったかなど前期からの変化も交えて伝える)
今後さらに期待することや改善すべき点(評価が高い人であっても改善すべき点やもっと伸ばすべき点があるのでそれも伝える)
高評価者へのフィードバックでは、このような説明を省いたとしても部下から不満が出づらいため、上司はそつなくこなした気持ちになりますが
本来は省くべきではありません。
部下も
「何が良かったのかの説明がないからよくわからないな・・・」
と納得感がない状態かもしれません。
フィードバックの効果を高めるには、高評価者にもしっかり伝えなければなりません。
評価の低い人へのフィードバック方法

既にここまで読んでお察しの方もいると思いますが、低評価者へのフィードバックも高評価者へのフィードバックも基本的なやり方は同じです。
低評価者の場合も、次のステップでしっかり説明する流れになります。
評価結果(5段階評価の結果、評価項目ごとの結果など)
評価の理由(特にどのような点が評価されなかったか、どこに課題があったかなど、前期からの変化も交えて伝える)
良かった点や成長した点(前期からの変化も交えて伝える)
今後の期待や改善すべき点
意識してもらいたいのは、低評価者に対しても「低いなりに良かった点」についてしっかり伝えることです。
欠点のみ指摘されると人は心理的な抵抗感を感じますが、良いところとセットで欠点を指摘すれば、受け止めやすくなります。
しっかり見てくれている上司への信頼も上がります。
その点以外は評価が高い人へのフィードバックと特段の違いはありません。
評価の高い人にも低い人にも、事前にしっかり準備をして、良い点も改善すべき点も伝えられるようにするのが鉄則です。
低評価者にフィードバックする際の3つのポイント
「高評価者も低評価者もフィードバックの基本的なやり方は同様」とお伝えしたものの、いざ低評価者に対するフィードバックを行う段になると、心理的に及び腰になるのはよく理解できます。
では、なぜ低評価を伝えることに腰が引けてしまうのか?冷静に考えてみましょう。
多くの場合、
- 不満や文句を言われる
- 根拠を問われる
- 反論される
- 嫌われる
- その後の仕事がやりづらくなる
などの不安があるからではないでしょうか。
もちろん、相手がいる以上、このような事象を完全に失くすことはできません。
しかし、やり方次第で大きく減らすことは可能です。
そのために、次の3つをぜひ意識してみてください。
良いところもしっかり伝える

改善点ばかりの話になると、本人は「全否定された」と受け取りやすくなります。
フィードバックステップで説明したように、低評価者であっても良いところが必ずあるはずです。
- 前期より改善したこと
- 強みとして発揮できていること
- 周囲から評価されていること
- 仕事に対する姿勢でよいところ
これらを具体的に伝えましょう。
欠点や課題の改善策を一緒に考える

課題を伝えるだけでは不十分です。
低い評価の原因となった行動や能力について、どうやったら改善できるかの対策、アイディアを伝えましょう。
その場で一緒に考えるでも構いません。
ダメなところを指摘するだけではなく、良くするための方策を本気で考えてあげましょう。
例えば、行動力はあるものの思考力に課題があり、それが仕事の成果が出ない要因になっている場合
- 思考のフレームワークの学習を勧める
- 参考書籍を教えてあげる
- 思考トレーニングの課題を与える
- 日々の仕事のやり取りで考えさせる機会(上司から「あなたはどう思う?」と問いかける機会)を増やす
- 同僚で論理的で分かりやすい思考を備えた人の資料を読んでもらう
このような具体策を提示できます。
「思考力は継続努力によって誰でも向上する」というマインドを持ってもらうことも意味があります。
改善した未来にどんないいことがあるかを伝える

「改善したら将来どのようなよいことがあるか」が分かると、人は行動しやすくなります。
例えば、若手社員(Aさん)は、とても賢くて仕事も早いけれど、他人への配慮ない言動が多かったり、会議で露骨につまらなそうな態度をとって周囲に悪影響を与えるなどの欠点があります。
その点が低評価につながったのであれば、理由をきちんと伝えた上で、欠点を直すとどんないい未来があるか?を伝えてあげましょう。
例えばこのような言い方はどうでしょうか。
状況によって2パターンを紹介します。
将来的に管理職を期待するケース
「Aさんは能力も高く、高いポテンシャルを持っている。ただ、伝えたような課題もある。私としては、Aさんには今のステージではなく、将来的に部署を率いるような立場になって欲しいと願っている。ただし、そのような中間管理職の立場になると調整事が多く、各方面への気遣いも求められる。なので、他者に配慮して、チームとして気持ちよく動けるような振る舞いを、是非身につけてもらいたい」
将来的に企画や分析などの強みを活かした仕事を期待するケース
「Aさんは強みと弱みがはっきりしている。私としては、できるだけ強みを活かしてシャープな思考力や分析力をいかした仕事で力を発揮していってもらいたいと思っている。とはいえ、どんな仕事でも他者との関わりは不可欠。お互い気持ちよく仕事をできた方が、自分の仕事も進めやすく、Aさんの長所を更に発揮しやすくなる。だからこそ、他者への気遣いや配慮も一定程度習得していく方が、Aさんのキャリアにとってもいいと思うよ」
繰り返しになりますが、低評価者へのフィードバックでは
良いところもしっかり伝える
欠点や課題の改善策を一緒に考える
改善した未来にどんないいことがあるかを伝える
以上の3点を心がけると、低い評価を伝えたからといって、文句を言われたり、部下から嫌われたり、その後の仕事がやりづらくなるなどは起きづらくなります。
率直に伝えないことのリスク

もし評価の低い人に対し、その理由を曖昧にして伝えなかったとしたらどうなるでしょうか?
フィードバック面談の場は、相手にとって耳の痛いことを言わないで済むので、逃げ切れるかもしれません。
しかし、その代償は小さくありません。結果は倍の悲劇になって跳ね返ってきます。
「理由がはっきりしないのに低い評価をつけられたこと」への不満が蓄積し、仕事の態度が悪くなったり、上司との関係が悪化する。転職を考える人も出てくる
自分自身の欠点を認識できていないので、次の年度に入っても欠点が改善されない
これは本人にとっても周囲にとっても全くよいことではありません。
このように「伝えないリスク」は非常に大きいので、逃げてはいけません。
フィードバックでは、相手の気持ちに配慮しつつも、「丁寧に、率直に伝えること」が何より重要です。
フィードバックの土台は日常にある
人事評価が終わったらフィードバックするという流れは決まっていますが、その時になって急に「何を伝えよう?」と考えているとしたら、少々手遅れです。
評価のタイミングだけではなく、普段から部下のことをちゃんと見れているでしょうか?
日常の部下をしっかり見ていれば、良いところも良くないところも分かっているはずです。
評価の時期を待たずして、普段のやり取りの中で、良いところを褒め、良くないところは改善するよう伝えている。
これが本来の望ましい関係です。
そのような関係性が築けているならば、評価のフィードバックで焦ることは何もありません。
いかに普段から部下の事をちゃんと見ているか?
部下がもっと成長し、もっと力を発揮するためにはどうしたらよいかを考えているか?
その平時の振る舞いによって、部下から信頼されるフィードバックができるか、その場しのぎのフィードバックになってしまうかが決まってきます。
部下に応じた対応の違い

フィードバックの相手が誰であれ、率直に伝えるという基本姿勢は変わりません。
とはいえ、多少配慮した方がいいのは、部下のタイプによって受け止める力の差があることです。
欠点を指摘された時に、前向きに受け止められる人もいれば、グサっときて落ち込んでしまう人もいます。
その違いは、
- 上司との関係性
- 過去に叱られた経験の有無
- 楽観的か悲観的か
- 鈍感か敏感か
- 自分でも分かっている課題や欠点の指摘かそうでないか
などによって変わってきます。
そのような違いが出ることは想定した上で、伝える表現には工夫が必要です。
厳しさの表現度合いをうまくコントロールできればベターです。
例えば、「やると言ったことをやらない部下」に対してフィードバックする場合、伝え方はいくつもあります。
強度の強い順に記載しています。
「やると言ってもやらないことが多かったよね。それは絶対に直してほしい」
「やると言ってやらなかったことがあったけど、どうやったら直せるかな?」
「やると言ったけど結果としてできていないことがあったよね。色々理由はあると思うけど自分自身ではどう思っている?」
「やると決めたけど結果としてできていないこともあったよね。それぞれ事情はあったと思うんだ。なぜそうなったか、今後どうやったら直せるかを一緒に考えてみようよ」
伝えている内容は同じでも、受ける印象は大きく変わりますよね。
また同じセリフを言うにしても、突き放すような言い方をするか、寄り添った言い方をするかで印象は変わります。
表情も大きく影響します。
厳しい表情で伝えるか、柔らかい表情で話すかでも、相手の受け止めが変わります。
コミュニケーション手法が問われる場面でもありますので、あなたなりにやり方を工夫してみてください。
厳しく伝えるべきケースもある
なお、稀にとんでもなく仕事の態度が悪かったり、周囲にマイナス影響をもたらす人もいますよね。
ちょっとやそっとの改善では到底どうにもならないレベルの人です。
そのような人に対しては、変な遠慮や配慮は不要です。
問題点をありのまま、厳しく、突き放すくらいの言い方で伝えていいと思います。
結果として嫌われたり、不満を言われたりするかもしれません。
それでも伝えるべきことは伝える必要があります。
フィードバックしないまま泳がせてしまったら、組織全体を後退させかねません。
そこは上司の大事な任務として、しっかり向き合ってほしいと思います。
まとめ
評価の低い人へのフィードバックは気が重いものです。しかし、フィードバックの基本的なやり方は評価の高低に関わらず同じです。
評価結果とその理由を伝えた上で、良かった点や今後の期待、改善点についてもしっかり説明することが大切です。
評価が低かった理由を曖昧にしたり、伝えるべきことを伝えなかったりすると、部下の不満につながるだけでなく、本人が自分の欠点に気づけないままになってしまいます。
そして何より、フィードバックの質は評価面談の場だけで決まるものではありません。
日頃から部下をよく見て、良いところも課題も伝えておくことが重要です。
評価の時期だけ向き合うのではなく、部下の成長について考え、信頼関係を築いておくこと。
それが有意義なフィードバックにつながるのではないでしょうか。
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