「 マネジメント力 がどの程度のレベルにあるか」
これを判断するのに最もわかりやすい方法があります。
それは、今とは違う組織、違う業務などアウェーの環境に行ってもすぐに適応してその組織を適切にマネージできるかどうかです。
同じ組織に長くいると、その「長くいることの強み」に頼ってマネジメントしている人がいます。
しかし、それは真のマネジメント力とは言えません。
真のマネジメントスキルはポータブル(持ち運び可能な)スキルであり、本来は環境に関わらずパフォーマンスを発揮できるものです。
今週のブログは「あなたの会社のマネージャー層がどの程度のレベルにあるか」「自分のマネジメント力がどの程度であるか」を見極める参考にしていただきたいと思います。
目次
真の「 マネジメント力 」とは?
あなたが仮に転職や異動で、アウェー環境でマネジメントすることになった場合、最初の3ヶ月で何をしますか?
このとき、マネジメントのプロフェッショナルたちがとる行動は、実はほとんど同じです。
彼らは最初の3ヶ月を次のような流れで過ごすでしょう。
①仕事理解と関係構築
共に仕事をするメンバー(上司、部下、同僚)と時間をとって話をする
▶目的は関係づくり、人物の理解、仕事の理解、起きている問題の理解のため
業務に関連する資料、データなども確認し、周囲の人に聞きながら理解を深める
主な会議に参加し、今起きている問題、組織内のコミュニケーションのあり方などを確認する
業界、業務に関連する書籍や記事などを収集して徹底的に勉強する
②課題の整理
①を進める過程で、当該組織が抱えている様々な課題が見えてくるので、それを整理して書き出す
整理したものを関連メンバーに伝え、皆のフィードバックをもらい、さらに課題リストの精度を高めていく
③計画づくり
②で整理した課題を、どのような順番でどのように解決していくかの計画を立てる
計画には、「実施するテーマ、担当責任者、スケジュール」を明記する
特に多くの組織で取り残されている「重要だけで緊急度が高くない課題」をどのような段取りで解決していくかを考える
計画は断片的なものではなく、MECEもある程度意識しながら、課題の全体像が見える計画とする
目的が明確で、関連メンバーの共感が得られる業務実施計画まで落とし込む
④実行・PDCAサイクル
③の計画を皆にしっかりと伝える。皆の疑問点を解消する
計画にもとづいてスタートする
進捗を確認する定例ミーティングなどの場を定め、PDCAを着実に回す
個々のメンバーとも適宜しっかりコミュニケーションをとり、問題が起きていないか、皆が納得して前向きに取り組んでいるかを確認する
実行過程で、「責任者に指名した人が日常業務で多忙すぎてタスクが滞る」、「他部署が協力してくれない」、「想定以上にコストがかかる」等々、様々な問題が発生するが、それらを適宜解決していく
どんな問題が生じても、絶対にゴールに辿り着くという強い執念をもつ
新しい組織や新業務などのアウェー環境でマネジメントを任された際、優れたマネージャーは上記の王道ステップを刻むことであっという間に新しい環境に溶け込み、仕事をぐいぐい動かし、成果を出していきます。
もう1回おさらいしますが、マネージャーがやることはとてもシンプルです。
メンバーと関係を作り
業務や職場の理解を深め
課題を明らかにし
解決のための全体計画を立て
皆にしっかり伝え
PDCAを回す
この非常にシンプルな流れを着実に実行します。
生え抜きベテランマネージャーの罠
生え抜きからマネージャーに昇格し、長年そのポジションにいる人は、当該組織、業務、業界のことをよくわかっている強みがあります。
一方でその強みは弱みに転じやすく、本来のマネジメント力が備わっていなくても、マネジメントできている錯覚になりやすい恐さがあります。
その要因を「4つの罠」の観点からご説明します。
関係性の罠
気心しれたメンバーと長年やっているので阿吽の呼吸が成り立つ反面、以下のような問題が生じがちです。
曖昧な指示や何となくの指示で部下が動いてくれるのに慣れてしまい、説明能力が低くなっている
長年の付き合いで部下をよく理解していると思い込んでいる
部下の考えをしっかり聞いたり、部下のキャリアを考えたり、今直面する課題や悩みに向き合えていない
当該部署で成果を出してきた重鎮であるため、問題提起や具申する部下がいない
部下たちもマネージャーの判断は正しいと盲目的に思い込んでいる
部下から反抗されたり、協力してもらえない、という経験をしていない
理不尽な指示でも文句を言わずについてくる部下が多いため、結果として他人の共感を醸成して導くリーダーシップが身につかず、部下に配慮することができない
プレイヤー能力の罠
一般的に、企業でマネージャーに任命される人は、担当者時代にプレイヤーとして高い成果をあげた人です。
マネジメント能力は未知数のまま、マネージャーに登用される場合が大半です。
そういう人はプレイヤーとして優秀だった自分に自信をもっています。
プレイヤーとしての能力はマネジメントの仕事とは別物ですが、自信があるがゆえに「マネジメントの仕事も自分ならすぐできる」という過信につながりやすくなります。
経験の罠
当該業界、業務、職場環境に慣れ過ぎているためそれが当たり前と思い込んでおり、第三者から普通に見たらおかしいことでも放置されがちです。
長年の経験があるので過去の経験則に頼って判断することが多く、気づきの感度が鈍りやすいです。
経験にとらわれすぎて勉強や新しい情報収集も怠っていると、時代に取り残されてしまいます。
同質性の罠
どこの会社にも職場にも独自の組織風土、所属する人の特性があります。
同じ環境に長くいるとそれが当たり前になってしまい
「一歩外に出れば全く違う組織風土、全く考え方の異なる人がいる」ということを忘れてしまいます。
真のマネジメント力は相手が誰であっても発揮されるものですが、同質的な環境に長くいると、異文化マネジメント力が身につかず、中途採用で入ってきた人(=文化の異なる人)を上手くマネジメントできない・・などの問題が生じます。
アウェーでも通用するマネジメント力の真髄
マネジメントのプロフェッショナルは、アウェ-な環境でも力を発揮することができます。
一見、なんてことなく力を発揮しているように見えますが、その能力は非常に奥深いものがあります。
長年の業務経験を通じて、以下のような能力に1つ1つ磨きをかけてきたからこそ、当たり前のようにできるのです。
対話力(訊く力、伝える力、質問力、説得力)
関係構築力
対人感受性
広い知識・経験に裏付けされた理解力
メッセージ発信力・共感を得る力
誠実な仕事姿勢に裏付けされた信頼獲得力
学習能力・思考力
問題発見力・解決力
計画策定能力
人物見きわめ力
業務管理力
プレッシャーに耐える胆力
いずれの能力も一朝一夕に身につくものではありません。
経験した場面の数、日々の修練の積み重ねを通じて血肉となるものです。
そしてアウェ-環境を経験する度に、上記の能力がまだまだ足りないことを思い知らされます。
自分の未熟さを痛感するからこそ、さらに努力しなければと身をもって感じ、もう1段上のステージへと上がっていけるのです。
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