フラット組織 信仰の危険性|組織の階層は何階層が適切か?

2022.07.08
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フラット組織 にこだわりを持つ経営者が意外と多くおられます。

何か明確な根拠があるからというわけではなく、感覚的に「階層が多い組織は良くない」「組織はフラットであるほど素晴らしい」と感じている場合が多いです。
 

そのような経営者に「階層は何階層くらいが妥当だと思いますか?」と問いかけると、明確な回答はあまり出てきません。

「階層が多すぎる組織が良くない」ことは論を待ちませんが、かと言って「階層が少ないほど良い」という単純図式でもありません。
 

今週のブログでは、フラット組織志向が強すぎて逆に組織の力を阻害することがないよう、フラット組織の限界と適切な階層組織についてお伝えします。

 

組織設計の大前提

 
ロジカルシンキングでよく出てくるMECEという考え方があります。
 

MECE = Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive(モレなく、ダブリなく)
 

情報を整理分類するときに、情報同士のかぶりがなく、漏れもないようにする考え方です。

実は、組織設計においてもこの考え方は有効です。
 

MECEの例

 
例えばある中小企業の人事課では、4人のメンバーを次のように業務分担しています。

  

 

人事で発生する業務が分業され、Aさんはプレイングマネージャーとして自分の担当業務を縦兼務で持ちつつ、他3名への指示、仕事の進捗管理、サポート等を行っています。

4人の業務は基本的に重なりがなく、また人事で必要とされる仕事を一通り漏れなくカバーしているので、「MECEの状態」と言えます。
 

もちろん、必要に応じてBさんの仕事をCさんが手伝うとか、お互いに助け合うことはありますが、少なくとも、誰がどの業務に責任をもっているか?が明確です。

業務のダブリがなく、漏れもなく、責任が明確になっているので、組織設計の基本に沿った形といえます。

 

この組織の中での管理職の役割

 
上記組織の管理職であるAさんの大事な役割の1つとして、「Bさん、Cさん、Dさんの仕事の分担や業務量バランスが適切かをウォッチし、問題があれば修正する」というものがあります。
 

例えばCさんの業務量が増えすぎて滞っていたら「Aさん自らCさんの仕事を手伝う」「Dさんにヘルプをお願いする」もしくは「Cさんの当該業務をDさんに移行する」などの解決策を判断します。

また、元々の業務分担では想定していなかった仕事が発生した時に、その仕事を誰に担当してもらうかを決めるのもAさんの仕事です。

 例:支店でパワハラ問題が起きてその対応を人事が行う
 

なおこの会社の人事課の上には管理部があります。
 

 
人事課長のAさんは、管理部長に進捗報告する仕事や、総務課と一緒に動いている業務の相互調整などの役割もあります。

 

フラット組織の条件

 
では上記の組織をフラットにしたらどうなるでしょうか?

 

フラット組織

 

現在は、社長 → 管理部長 → 人事課長 → 担当者 という4階層構造になっていますが、これを完全フラットにした場合、社長の下に直接Aさん、Bさん、Cさん、Dさんがぶら下がる組織になります。
 

社長が直接4人の人事担当者を部下にもったとしても、社長は他にたくさん仕事を抱えているので、人事担当者1人1人に細かい指示を出す余裕はありません。

4人の間の業務バランスが適正か把握したり、特定の人の残業が突出していないか?などを見る余裕もありません。
 

よってフラット組織でこの4人の人事に強く求められるのは「4人全員による自律的な組織運営」です。
 


 

 
階層組織で課長のAさんが行っていた下記業務を、4人が対等の立場で相互に相談しながらバランスよく進める必要があります。

Aさんの業務

4人の業務分担や目標の決定、担当が明確でない仕事が発生した場合の割り振り、各メンバーの仕事の進捗チェック、メンバーの育成、滞っている場合のサポートなど

 

■ もしBさんの仕事がうまく進んでいなければ、Aさん、Cさん、Dさんは放置してはいけません。3人のいずれかが声をかけ、悩みを聞いて、解決策を一緒に考えます。

■ Dさんが朝体調が悪く会社を休む場合、Aさん、Bさん、Cさんに連絡し、その3人でDさんの業務を誰が代わりに対応するか相談して決めます。

■ 誰もやりたがらない大変な仕事が発生した時も、4人でフラットに話し合い、誰が担当するかを決める必要があります。

■ 人事の仕事が増えて4人では到底処理しきれない業務量になった場合、4人で話し合って、誰かが社長の所に行って増員をお願いする必要があります。
 

ここまで読んだだけでも、フラット組織を適切に機能させるのって、なかなか容易なことではないのがお分かりだと思います。

 

フラット組織 が適切に機能する前提は

 
フラット組織をきちんと機能させるには、いくつかの前提条件があります。

 

  • 各自が自分の仕事に強い責任をもち、基本的に他者に頼らず完遂する能力を備え、自己管理ができること
     
  • 困っているメンバーがいたら、皆が主体的に歩み寄ってサポートできる姿勢をチームの雰囲気があること
     
  • 各自の間に落ちる仕事、あまりやりたくない大変な仕事を、皆が積極的に自分から取りにいくような人材集団であること、自分の仕事が増えるのを厭わないこと
     
  • 「自分ばかり仕事が多くて、●●さんは楽をしている・・・」というような被害者意識を持たないこと
     
  • チームメンバ―同士で悪口を言ったり、ひがんだりしない、大人度の高い集団であること
     
  • 何か問題があればすぐに集まって話し合い、フランクにお互い何でも言い合い、それでも良好な人間関係を保てること

 

以上のように、フラット組織が機能するためのハードルは非常に高いと言えます。 

 

形だけの フラット組織 の弊害

 
決して「フラット組織は成り立たない」というつもりはなく、実際に機能している会社もありますが、フラット組織を成り立たせるのは簡単なことではありません。

優秀で性格の良い人材の採用、チーム作りの工夫、相互コミュニケーションの場づくりなど、高度な組織人事マネジメントが問われることになります。
 

組織人事マネジメント不在のまま形だけフラット組織を作ってしまうとさまざまな問題が噴出するリスクがあるので要注意です。
 

【フラット組織の問題点】

● 仕事に漏れが出る。お互いお見合いして誰もやらない(ポテンヒット)

● 面倒な仕事、嫌な仕事を誰もやらない

● 自己管理能力の弱い人が仕事の期限に間に合わない

● 能力が低い人の仕事の精度がより低くなる

● ひがみ、やっかみ、陰口、足の引っ張り合い、相互不信などが芽生え、人間関係が悪くなる

 

組織の階層は何階層が適切か?

 
10人のベンチャー企業であれば、社長以下全員フラットな組織でもやっていけるでしょう。
 

30人の会社では、社長以下全員フラットになると組織が回りません。

少なくとも社長の下に3~4人の管理職がいて、その下にメンバーがぶら下がるのが現実的な組織でしょう。

つまりトップから現場まで3階層の組織です。
 

100人の組織になると、3階層でやっていけるか、4階層にするか微妙な領域になります。

3階層であれば、社長の下に10人程度の管理職がいて、その下にそれぞれ10人近いメンバーがいる状態です。

社長が10人もの部下をダイレクトに管理するのは難しい場合、社長の下に4~5人の部長がいて、その下に「課長→メンバー」がぶら下がる4階層がやりやすいかもしれません。

 

 

職務経歴書等で「部下200人を管理していました!」などの記載を見ることがありますが、実際にダイレクトに200人管理することは不可能です。
 

一般的に、スパン・オブ・コントロール(1人の上司が直接管理できる適正人数)は5~7人程度とされています。

部下の能力や業務の仕組み化の状況などで当然その人数は変わりますが、直接管理できる人数に一定の限界があることは否めません。
 

直部下と週に1回程度進捗報告や課題の議論などについてしっかり対話する時間がとろうとすると、5~7人という適正人数は実体験的にもそんなものかなと思います。

スパンオブコントロールを踏まえつつ、社内の情報が上下に迅速に行き交うのは何階層なのか、ぜひ考えてみてください。

 

階層組織の落とし穴に落ちないために

 
フラット組織に比べて階層組織の方がマネジメントしやすいです。

しかし階層組織には落とし穴もあるので、その対策が必要です。
 

階層組織の最大の問題点は2つあります。
 

①    経営トップと現場の距離が間延びし、経営陣に正しい情報が入ってこないこと(=結果として正しい経営判断ができない)

②    経営トップの指示が現場に届くまで時間がかかり、経営スピードを阻害すること

 

2つの問題点を克服する鍵は「情報」です。

階層をベースとしつつ、階層にとらわれない情報ルート、情報の社内流通を作ることが効果的です。

「組織は階層、情報はフラット」という状態を目指しましょう。
 

情報をフラットに流通させるための具体例

 

  • 全社ミーティング等で社長が全社員に語り掛ける
     
  • 社長メール、社内報、掲示板など様々な経路を通じて、社長の考えを現場に伝える
     
  • 経営陣と現場担当者が交流する場(飲み会、ランチ会など)をもうける
     
  • 社員の日報を全社公開とし、経営陣も社員の生の声を把握する
     
  • 役員会や経営会議など会社の重要会議に、社員誰でも参加を認める(オンライン参加なども有効。オブザーバーとしての参加でもよい)
     
  • 会議の議事録等を全社公開し、誰でも会社の各部署、各階層の情報にアクセスできる
     
  • 社員アンケートなどを定期的に実施し、社員の状態を把握する

 

今はさまざまなITツールがあるので、情報流通を活性化するハードルは非常に低くなりました。

階層組織の弱点を補う方法はいくらでもあると言えます。

  

階層を跳び越すことをタブー視しない

 
「組織は階層、情報はフラット」を実現した場合、最も脅威にさらされるのは中間管理職です。
 

これまでの中間管理職は、一般社員より多くの情報をもっていることが存在意義になっていましたが、情報がフラット化されると、その権威が消滅します。

仕事の能力、マネジメント力、指導力、リーダーシップなどで力を発揮しない限り、求心力がなくなります。
 

さらにトップと現場が近くなればなるほど、中間管理職を飛び越えてトップから現場に直接指示が出たり、現場担当者から直接社長に報告が行くこともあります。

中間管理職にとっては、「自分の知らないところで・・・」というやりづらさがあります。
 

つまり「組織は階層、情報はフラット」は、中間管理職にとって非常にマネジメントに苦慮する状態になります。
 

だからこそ、会社は中間管理職を大事にしてください。

 
担当者からトップに直接情報が入るのは悪いことではありませんが、トップはその情報が入ったことを担当者の上司に後で伝えましょう。

トップが現場担当者に直接指示を出したならば、同じ内容を後で担当者の上司に伝えましょう。
 

そうして情報の同期をとりながら、中間管理職が動きやすいようにする配慮があると、「組織は階層、情報はフラット化」がうまく機能していきます。
 

中間管理職は組織の「連結ピン(connected pin)」であり、絶対に欠かせない重要な役割ですが、間に挟まれる大変な仕事でもあります。

会社は中間管理職の頑張りに感謝し、彼らが動きやすい環境を作っていくこと。

それが階層組織の成功に欠かせない条件です。 

 

まとめ

 
「フラット組織の方が階層組織より優れている」との考えもありますが、実際にフラット組織を成り立たせるためには、社員の能力と成熟度、高度な組織マネジメントが問われるため、容易なことではありません。
 

階層が多すぎる組織はたしかによくありませんが、適切な階層構造にもとづく組織設計が、現実的かつ効果的に組織を機能させる方法です。
 

ただし階層組織には現場の情報がトップに伝わりづらく、経営のスピードが遅くなるという弱点があるので、そうならないよう「組織は階層、情報はフラット」の組織を目指していきましょう。

 

 

  

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

中小ベンチャー企業が「人と組織の力を最大化して持続的に発展」できるよう、戦略人事アドバイザー、幹部/管理職育成、組織開発、人事制度づくりなどを行っています。

筆者プロフィール詳細