こんな発言は 組織が弱体化 の兆候| 会議で頻出しがちな8つの危険フレーズ

2025.07.25

組織が弱体化

ミーティングをしていると、「あっ、これは危険な徴候だな」と感じる瞬間があります。

それは、議論の参加者全員が何となく、本来やるべきこと、立ち向かうべき事象から目を逸らし、安易な方向へ流れてしまう瞬間です。
 

こうした場面では誰かが「ちょっと待ってください」と歯止めをかけ、更に一歩踏み込んで議論を深めるべきです。 
 

しかし実際には、会議の場に漂う「余計なこと言うな」的な無言の圧力に屈してしまったり、

「波風立てずにやり過ごそう」という場の空気に飲み込まれてしまうことが少なくありません。
 

今週のブログでは、本来ならば深い議論を交わさなければならないはずが、つい安きに流れてしまう8つの危険フレーズについてお伝えします。
 

このような事象がよく見られる組織は、徐々に弱体化が進み、いずれ淘汰されてしまうでしょう。

もしあなたがこうした場面に遭遇したならば、自ら「危険察知アラート」を発し、流れに屈しない姿勢を示して、組織を正しい方向へ導いてほしいと思います。

 

組織が安きに流れる8つの危険な徴候

以下は、会議やちょっとした打合せでよく耳にする危険フレーズと、それが出やすいシチュエーションです。

発言者が無意識のうちに「もっともらしい言葉」で問題を先送りしようとするため、周囲も疑問を感じることなくそのまま流されがちです。

 

シチュエーション危険フレーズ
1. 解決が難しい問題が論点に上がったが、良い解決策が見つかりそうにないとき「一旦今後の議題としましょう」
「一旦〇〇部で持ち帰ります」
2. 重要だけど負荷の重い業務をやめたいが、やめる正当な理由を言えないとき「一旦止めて、様子を見てから再開を検討しましょう」
3. 議論を経て結論を出すタイミングで「反対意見がないようなので、この案で進めたいと思います」
「多数決により、この案で決定します」
4. 改革方針が話し合われたとき「いきなり変化が大きいと現場がついてこれないので、段階的に進めましょう」
5. 会議で配布した資料の説明時間が足りなかったとき「後ほど各自で資料を見ておいてください」
6. 会議でほとんど議論が起きなかったとき「意見のある方は後ほどメールください」
7. 致命的になりかねない問題への対策がまとまらなかったとき「もうしばらく今のやり方でやってみましょう」
8. 明らかにうまくいっていない問題について議論しているとき「現場は必死に頑張っているので、もう少し様子を見ましょう」

 

あなたの職場でも、上記のような発言を耳にしたことはありませんか?
 

ここからは①~⑧それぞれについて、なぜそれが危険な兆候なのか、本来はどのように対応すべきなのか?を考えてみたいと思います。

 

よくある危険フレーズと「本来すべきこと」

 

1. 解決の難しい問題が論点になったが良い解決策を出せそうにないとき

「一旦今後の議題としましょう」「一旦〇〇部で持ち帰ります」

 

解決の難しい問題は、人の心理として避けたくなるものです。

そのため「今後の議題としましょう」と先送りされた場合、多くのケースでは再度議題に上がることはなく、完全に流れてしまいます。
 

「〇〇部」が持ち帰ったとしても、それが更に磨かれて議題として戻ってくることも滅多にありません。
 

こうした場面で解決策が出なかった場合、その問題自体が解決すべき重要な問題であるか、もしくは先送りしてよい問題か、を明確にします。

もし前者の重要な課題と判断したならば、「次回はどの会議で話し合うか」をその場で日程調整し、

「その会議までに誰が何を準備をしてくるか」まで詰めなければなりません。

 

 

2. 重要だけど負荷の重い業務をやめたいが、やめる正当な理由を言えないとき

「一旦止めて、様子を見てから再検討しましょう」

 

「様子を見てから再検討しましょう」と言って、実際に様子を見ることも、再検討されることもほぼありません。

発言した本人も、会議が終わった段階で「これはもう廃止だな」と内心決めており、晴れ晴れしていることでしょう。
 

この発言者は本来継続すべき重要な仕事であることを分かっていながら、何とか止める理屈として「様子見の暫定停止」という巧妙な言い訳を持ち出したに過ぎません。

一度こうなってしまうと、ここから再開に向けて知恵を絞る人は滅多にいません。一度止めてしまった事は、再起動がとても大変です。
 

このようなケースにおいては、負荷の重さを軽減する知恵を出し、何とか継続できる道を議論することが第一歩です。

特に上層部の人は、あらゆるリソースを使って何とかできる道を考えなければなりません。

あらゆる手を尽くしても継続が難しい場合には、正式に「止める」という意思決定をすべきです。

 

 

3. 議論を経て結論を出すタイミングで

「反対意見がないようなので、この案で進めたいと思います」
「多数決により、この案で決定します」

 

 

反対意見が出ないからといって、全員が現状案に賛成しているとは限りません。

反対意見や異なる見解を吟味しない結論は、議論不十分となり、脆弱な意思決定にとどまっている可能性が高いです。
 

さらに、経営の意思決定は多数決で決めるものではありません。

社員旅行の行き先のなど軽微な事項なら多数決でも構いませんが、業務上の議論は多数決をとるのではなく、広く議論を尽くした上で組織のリーダーが責任を持って決断することが基本です。
 

ここで多数決を使いたくなるのは、組織のリーダーが意思決定する重圧に耐えられないからかもしれません。

「みんなで決めた」という形にしている決断回避/責任回避の兆候が見てとれます。
 

しかし、リーダーは孤独の意思決定を幾度も経験してこそ、真のリーダーに育っていくものです。

 

 

4. 改革方針が話し合われたとき

「いきなり変化が大きいと現場がついてこれないので、段階的に進めていきましょう」

 

「変化が大きいので段階的に」という表現は、一見もっともらしく聞こえます。

たしかに、人は変化やリスクを避ける防衛本能が強いので「いきなりではなく、少しずつ変わっていこう」と言われると安心します。
 

ただし、すべての変革が段階的である必要はありません。

組織に変化をもたらそうとする時は、緩やかに進めるよりも一気に進める荒療治の方が「人の意識を切り替えやすく効果的」な場合もあります。
 

さまざまな可能性を検討した上で「段階的に」という結論であれば問題ありませんが、

「変化を嫌う人たち」からこの言葉が出てくるとしたら、変化そのものを封じる口実になっていないか要注意です。

 

 

5. 会議で配布した資料の説明時間が足りなかったとき

「後ほど各自で資料を見ておいてください」

こんな部長は危険

 

これもよくあるケースですが、会議が終わって自席に戻った後、その資料を見る人はほぼいないのが実情です。

本当にちゃんと見てもらわないと困る資料ならば「後で見てください」ではなくそれなりの仕掛けが必要となります。
 

もし会議が時間切れになったのなら「各自で見ておいて」と丸投げするのではなく、

「見てほしいポイント」「何がどう重要なのか」をメール等に記載して送付するか、次回の会議で再度取り上げるべきではないでしょうか。
 

「見ても見なくてもどちらでも良い資料」ならば、最初から共有する必要すらないかもしれません。

 

 

6. 会議でほとんど議論が起きなかったとき

「意見のある方は後ほどメールください」

 
このように伝えても、経験則上メールが来ることはほとんどありません。
 

賛成も反対も何の意見も出なかったということは、聞き手が提案された内容に関してそもそも理解できていないか、自分は関係ないと興味を持たれていないか、言いたいことは山ほどあるけど言える雰囲気がなく黙っていたか、いずれかでしょう。

このように「議論が起きなかった理由」を考えてみれば、後ほど意見をメールで送ってくる人が誰もいないのも合点がいくことです。
 

このケースの問題点はファシリテーションが機能していない会議そのものにあります。
 

「意見が出ない会議が多い」と感じている方は、以下の観点を見直してみると良いでしょう。
 

参加メンバーが提案をきちんと理解しているか

分かりやすい説明になっているか

皆から意見を引き出す問いかけができているか

意見が言いやすい雰囲気を作れているか 
 

※ファシリテーションの具体的な方法については、ぜひこちらの記事をご覧ください。

 

 

7. 致命的になりかねない問題への対策がまとまらなかったとき

「もうしばらく今のやり方でやってみましょう」

 

今のやり方では問題があると分かっていながら「対策案がまとまらないから」という理由で先送りするのは非常に危険です。
 

既に今のやり方では致命的になりかねない以上、いったんの対策結論を出すしかありません。

決める勇気を持つのみです。
 

ベストな対策がなくても、ベター論でやるべき事を決め、やりながら次の対策を講じるでいいのではないでしょうか。

致命的な問題が見えている状況で「何も変えないこと(現状維持)」は最大のリスクになります。

よって、「問題の先送り」はリーダーが決して屈してはならないことの1つです。

 

 

8. 明らかにうまくいっていない問題について議論しているとき

「現場は必死に頑張っているので、もう少し様子をみましょう」

組織が弱体化

 

頑張る → 成果が出る

この矢印は、成立することもあればしないこともあります。
 

たとえ現場がどんなに頑張っても、その手法や手順が正しくなければ成果は出ません。
 

成果が出ない以上、本来ならばその頑張り方自体を根底から見直す必要がありますが、

「現場が頑張っているのだから今のままやらせてあげましょう」という発言には実際には根拠がないことが多く、問題の本質を見誤るリスクがあります。
 

リーダーの仕事は「頑張っているけど成果が出ないチーム」を作ることではなく「成果を出すチーム」を作ることです。

そのためには「頑張っている」と「成果が出ている」現実を切り分けて考えることが大事です。

 

まとめ

 
今回紹介したような発言や場面に出くわしたとき、どうか「耳障りのよさ」に流されず、違和感をしっかり受け止めてください。

自分の中の「危険アラート」を作動させ、その安易な流れを止め、本来あるべき議論に立ち戻っていただきたいと思います。


会議でこれらの言葉が頻繁に出てくるようになったとき、しかもそれが幹部や上層部から発せられている場合、組織の意思決定のあり方や、組織風土そのものを見直す必要があるかもしれません。

そのきっかけを作れるのはまさに「気づいたあなた」

気づいたあなたが声を上げることで、組織は前に進む力を失わずにいられるでしょう。

 

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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