中途採用の際に最も参考にする情報が「職務経歴書」です。 面接官 もこれを元に質問をしていきます。
しかし、職務経歴書からは「相手の本当の仕事ぶり・真の姿」は伝わってきません。
なぜなら、職務経歴書は本人が自由自在に表現でき、かつ面接官に良い印象を持ってもらえるよう相当知恵を絞って作成したものだからです。
よって面接の場では、職務経歴書を参考にすることはあっても、その情報に惑わされず、相手の真の実力を理解する必要があります。
今週のブログでは、職務経歴書に惑わされず人物評価を行なうための面接のコツについてお伝えします。
目次
職務経歴書には要注意!
面接の場では、面接官の手元には必ず相手の職務経歴書があります。
面接官はそれを見ながら、さまざまな質問を重ね、仕事の経験や成果を把握していくこととなりますが、「職務経歴書の美辞麗句に惑わされて真実を掴み損ねること」に注意してください。
職務経歴書は誰のチェックを受ける必要もなく、自分が思うがままに表現できる書類です。
人材紹介会社からの推薦であったとしても、人材紹介会社は職務経歴書の真実性や正確性はチェックしようがなく、どちらかと言うと職務経歴書を綺麗に見せるアドバイスをする方が多いです。
職務経歴書という書類の性格上、基本的には内容はある程度盛られていると思った方がいいでしょう。
職務経歴書に惑わされない面接質問
責任範囲と仕事の中身に注目
例えば人事の職種で応募してきた候補者の職務経歴書に、実績の1つとして「全社の人事評価制度の刷新」と書かれていたとします。
それだけを見れば、「この人は人事評価制度の経験が豊富で、入社したらその仕事を任せられるのでは?」と思ってしまいますが、本当にできるかどうかは分かりません。
そこで、面接で必ず確認すべき点が2つあります。
「どのような推進体制だったか」そして「具体的な中身」です。
【どのような推進体制だったか】
- 刷新プロジェクトのメンバー構成(人数、各々の役職、役割分担、レポートライン)
- そのメンバーの中における本人の役割、責任
- プロジェクトの期間と候補者が関わった期間
- 外注の活用状況(人事制度づくりは外部のコンサルティング会社に委託し、社員は外注コントロールと社内報告だけを担っている場合も多い)
【刷新プロジェクトの具体的な中身】
- 人事評価制度を刷新することになった背景、きっかけ
- 従前の制度の問題点
- 新制度で目指した姿
- 実際にどのような制度設計を行ったか
- どのくらいの時間軸で進めたか
- 理想通り進められた点と妥協した点はどういうところか
以上のような質問をすることで、
「候補者自身が刷新プロジェクトの中核メンバーだった」のか「補佐的な立場だった」のか?
「候補者が自ら知恵を出し社内説得にあたった」のか「補助的な業務を行っていた」のか?
これらの重要点が見えてきます。
評価制度自体への理解の深さ、問題認識の深さ、候補者自身がどこまで渦中に身を置き、どの程度考え抜いたかなどが手にとるようにわかります。
短期間で一気に進めたのか、検討・社内調整等にじっくり時間をかけて進めたのかも分かります。
「推進体制」と「具体的な中身」は両方質問する
「推進体制」と「具体的な中身」の2方面からの質問は、面接の質問において補完関係にあります。
「推進体制」を聞かずに「具体的な中身」だけを質問すると、理路整然とプロジェクトについて説明されますが、候補者がそのプロジェクトの主役だったのか横からサポートしていただけなのかが見えてきません。
「推進体制」だけを聞いて「具体的な中身」を聞かないと、プロジェクトの中心人物だったと説明を受けたらそう信じるしかありません。
必ず「推進体制」と併せて「具体的な中身」も質問しましょう。
そこで曖昧な回答しか出てこないのであれば、「本当に中心人物だったの?」という疑問が湧いてくるため、相手を見極めるための次の質問に繋がります。
日常業務を深堀りする
職務経歴書には、上記の「人事評価制度プロジェクト」のように、インパクトのある仕事を中心に記入する人が多いです。
同じように「子会社設立に伴う人事諸制度整備」、「人事評価制度の刷新」、「就業規則の改訂」・・・といった改善系の取り組みがズラっと書かれているとします。
それぞれの業務について、上述のように「推進体制」と「具体的な中身」を聞くことが大事ですが、さらに普段どんな仕事をしているかの質問も不可欠です。
なぜなら、職務履歴書にメインで書かれるような「改善系の取り組み」は、ある時期に集中して進めるものが多く、日常業務として日々発生するものではないからです。
そうすると、候補者は1日8時間、月160時間、どのような業務に時間を使っていたでしょうか?
最も時間を使っている仕事にこそ、その人の成果と取り組み姿勢があらわれます。よって、そこを深掘りしてください。
「実は日常業務のほとんどは定型業務に時間を使っていた」
ということであれば、その候補者はルーティン業務寄りの適性かもしれません。
「自ら問題現場を訪れて社員の声を聞いたり、他社のよいやり方を研究していた」
「人材紹介会社と採用課題を話し合ったり、制度不備のチューニングを小まめに行っていた」
ということであれば、その候補者は問題発見力、問題解決力、企画力、行動力のある人材と言えます。
成果の数字を検証する
職務経歴書には具体的な成果の数字を入れた方がいいと言われています。
「支店1位の売上達成!」「3年連続売上目標120%達成!」
などの勇ましい表現が並びます。
ぱっと見、なかなか営業力のある人だなと思いますが、これらの数字には要注意です。
実際の状況をもっと掘り下げて確認しましょう。
ここで確認すべきは「目標の難易度」です。目標は難易度によって達成しやすくも難しくもなるものなので、当該目標がどの程度の水準にあったかを確認します。
職務履歴書に記載の内容の「難易度」を測る質問
■ 会社の目標は前年比でどの程度チャレンジングか?
■ 本人の目標は市場環境と比べてどの程度チャレンジングか?
■ 同僚で目標達成した人は何割程度いたか? 支店で1位であれば支店には何人の営業担当者がいたか?
■ 目標達成できた要因は何か?(市場環境、商品力、価格競争力、マーケティング力、営業力などの要素に分解した時に、どの要因が大きかったか?)
■ 目標達成に向けて具体的にどのような工夫や努力を行ったか?
■ 目標達成できなかった同僚はなぜできなかったと思うか?
仮に同僚もほとんど達成していたならば、それは難しい目標ではなかったと言えます。
同僚の10%も達成しない中で候補者は達成したのであれば、得難い達成ということになります。
さらに、「達成したか否か」は、職務経歴書が語る本人申告の情報しかなく、本当にそうだったかはわかりません。
本当にその目標を達成したかどうかを知るために、目標を達成できた背景も質問します。
なぜ目標達成できたかを要素分解して考えてもらうことで、候補者本人の努力による部分が見えてきます。説明できる人は、自分の仕事を客観的かつロジカルに捉えられる人でもあります。
同僚との違いを教えてもらえば、候補者自身がどのような点で同僚よりも優秀な営業だったか否かが見えてきます。
社内での異動履歴から推測する
現在の会社に7年在籍しているとして、3年→2年→2年(計7年)のペースで役職や役割が変わっている場合、
それぞれの時期の具体的な仕事内容、レポートライン、業務の目標、成果などを聞いてみましょう。
実力があって会社から認められている人ならば、異動の度に責任範囲が広がり、難易度の高い仕事の割合が高くなっていくのが通常です。
逆に異動があっても仕事の責任や難易度が上がらず、担当業務だけコロコロ変わっているとしたら、あまりその会社では評価されていないことがわかります。
在籍7年間をまとめて話を聞くよりも、異動の変遷をしっかり追いかけて質問した方が、候補者の仕事ぶりがよく見えてくるはずです。
まとめ
職務経歴書は本人申告の書類なので、書かれている内容を額面通りに受け取ってしまうと、人物見極めに失敗する恐れがあります。
在籍した企業を退職した理由はどの面接官も必ず質問しますが、候補者側もその質問は「100%聞かれること」と思って周到な答えを用意しているので、あまり候補者のリアルな姿は見えてきません。
事前に職務経歴書をしっかり読み込み、上述した観点から深堀り質問をすることで、相手のリアルな姿が浮き上がってくるはずです。
面接官のクオリティは会社の成長に大いに関係してきますので、是非見極め力の向上にトライしてみてください。
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