採用の面接官をしていると、最初の5分か10分ほど話した時点で、「この人いいなあ。ぜひ当社に来てほしいなあ」と感じることがあります。
そのような人材には何としてでも入社していただきたいものです。
しかし考えることは他社も同じ。
いい人材は各社が高く評価し、本人は複数企業から内定をもらうので、自社を選んでもらえる可能性は決して高くありません。
それでも面接の場でできる工夫があります。
面接後、求職者に「この会社は良かった! 志望度が高まった!」と思ってもらい、他社と迷った際の最後のひと押しとなる工夫です。
今週のブログでは、面接で求職者の志望度を確実に高める6つの方法についてお伝えします。
目次
面接は選ぶ場であると同時に選ばれる場
言わずもがなの話ではありますが、面接は企業が求職者を選ぶ場であると同時に、求職者が企業を選ぶ場です。
特に優秀な人材ほど各社から引く手あまたなので、じっくりと企業を見極め、転職先候補を絞り込んでいきます。
それでは、面接の場で求職者に良い印象をもってもらい、志望度を高めてもらうために会社は何ができるでしょうか?
面接で求職者の志望度を高める6つの方法
面接に「これは!」という人材がきたら、面接官はその人にいかに良い印象をもってもらうか勝負の時です。
ぜひ以下のことを実践してみてください。
事前に履歴書・職務経歴書を読み込む
面接官は履歴書・職務経歴書を面接の前に事前に読み込んでおきましょう。
あらかじめ目を通しておいた方が、その場で見ながら質問するよりも深い質問ができます。
職務経歴書をしっかり読み込まないとできない質問をすると、求職者に「この会社は自分に興味をもってくれているんだな」という好印象を与えられます。
逆に、職務経歴書を見ればすぐにわかるような質問や、その場の思いつきのような質問ばかりされると、求職者はあまり良い印象を持ちません。
求職者の自己紹介の前に、自社/面接官自身の自己紹介をする
通常の面接では、軽く挨拶した後、すぐに求職者に自己紹介を求めます。
いかにも普通の面接の光景ですが、この時点で大きな情報の非対称性があります。
面接官は求職者の履歴書、職務経歴書などで相手のことをある程度分かっていますが、逆に求職者は面接官のことをほとんど何も理解していません。
通常のコミュニケーションにおいて、素性を知らない相手にいきなり自分のことをペラペラしゃべるのは変ですよね。
この違和感を払拭し、最初から心理的安全性を確保して話してもらうために、この順番を変えましょう。
挨拶の後は、先にに面接官が以下のような内容で簡単に自社と自分の紹介をします。
【自社の紹介】
- 設立、沿革
- 事業内容、事業の特徴
- 強み
- 現状の課題
- 今回の募集の背景
- 募集部署の紹介
【面接官の自己紹介】
- 所属部署
- 役割
先にこれを行うだけで、求職者の緊張感がほぐれ、表情が柔らかくなります。
求職者が安心したうえで自分の話に移っていくことができます。
笑顔を見せる
面接もコミュニケーションの1つですから、笑顔でいきましょう。
面接官として仏頂面一辺倒ではなく、話の内容によって笑ったり、普通の話をする時も柔らかい表情で笑顔も入れながら伝えましょう。
面接ですから質問は厳しくても構いませんが、厳しい質問を厳しい顔で行ったら相手は詰問されている気になってしまいます。
例えば、前職の在籍期間が非常に短い(半年)のが気になり質問する際・・・
①厳しい表情で「なぜ半年でやめてしまったのですか?」と聞く
②柔らかい表情で「半年って結構短いと思いますが、どのような経緯だったのでしょうか。同僚の方は困りませんでしたか?」と聞く
同じ答えを引き出す質問でも、②の方が相手は本音で答えやすくなります。
半年で退職したことについて質問されるのは求職者も最初から分かっていることなので、厳しい口調で質問されると傷口に塩を塗るような印象になりかねません。
共感の言葉
キャリアカウンセリングの経験がある人は必要性を実感されていると思いますが、求職者の言葉に共感することはとても意義深いです。
例えば求職者が、「フィリピンに3年ほど駐在しまして、現地政府との交渉に非常に苦労しました。まずは相手の懐に入り込んで、人間関係を作るところから始めました」という話をしたら、あなたはどのように反応しますか?
普通の面接官は「そうなんですね」くらいの軽いコメントで次の質問にいきます。
一方で共感性の高い面接官は「途上国の政府相手の仕事ですか。それはとてもタフな仕事をされましたね~」のような返しをします。
後者のリアクションをされた方が、求職者は気分がノリ、さらに深く話をしたいと思います。
なぜなら、面接において求職者は自分の発した言葉が面接官にどのように理解されているか?どのような印象になっているか?ずっと不安だからです。
共感の言葉をもらえると、「自分の話をちゃんと聞いてくれている」「自分のことを理解してくれている」という安心感をえて、さらに積極的にコミュニケーションしたい気持ちになります。
自己開示
面接官が自己開示すればするほど面接される側も本音を出しやすくなり、その人がどんな人物なのか、どのような考え方をもっているか、深く理解することにつながります。
自己開示の方法は色々ありますが、面接官自身の自己開示は相手との距離を縮め、会社に関する開示は会社への安心感につながります。
いくつか例を見てみましょう。
例1: 大手企業から中小企業に転職しようとしている求職者の場合
面接官自身の自己開示
「実は、私(面接官)も元々大手企業にいて、1年前に当社に転職してきたんですよ。最初はカルチャーに慣れるのに結構苦労したんですが・・・」
会社に関する自己開示
「以前、大手企業出身で当社に入社した方がいたのですが、企業カルチャーに慣れず半年で退職してしまったんですよ。これではお互い不幸なので、そういうミスマッチにならないよう、双方の理解をしっかり深める必要があると思っています」
例2: 小さいお子さんがいて仕事との両立を悩んでいる求職者の場合
面接官自身の自己開示
「実は私も3歳の子供がいて、何とか仕事と両立して頑張っているんですよ~。仕事に慣れるまでは定時に帰る余裕がなくしんどい時期もありましたが・・・」
会社に関する自己開示
「当社にも小さいお子さんのいる社員が多数おりまして、例えばAさんは〇〇のような働き方、Bさんは□□の工夫をしながら両立しています」
このような自己開示を行うと、面接官ならびに会社との距離が近づき信頼が増す効果があります。
加えて、求職者側も呼応してさらに自己開示しやすい気持ちになるので、相手の本音や素の姿を見せてくれ、理解が深まります。
面接後のステップの明示
面接の最後に、その後のステップについてしっかり説明しましょう。
「このポジションの面接は〇回を想定していますので、次回が最終面接です。最終面接は来週あたりでセットできるよう調整します。最終面接終了後、おおよそ1週間以内に結果をご連絡します」
このように、具体的に選考回数と時期、最終結論の出るタイミングを明示します。
仕事の打合せと同じです。打合せの最後では、その後のスケジュールやタスクをまとめるのが通常です。
それがない尻切れトンボの打合せみたくならないよう、最後に今後のステップを明示して、ちゃんとした会社であることを伝えてください。
求職者が複数の会社で迷ったとき、スケジュールが明示されている会社は結果を待ってもらいやすくなるという効果もあります。
まとめ
求職者の会社に対する印象は面接の場が強く影響します。
面接官次第で求職者の受ける印象をよくすることも悪くすることもあるため、面接官はどうやったら求職者によい印象をもってもらえるか、どうやったら志望度を高めてもらえるか、しっかり考えて対応する必要があります。
上記で説明した 面接官の心得 と6つの方法を実践すれば、求職者との距離が縮まり、会社に対する信頼と安心が増す効果が得られます。
同時に、面接官はより深く求職者のことを理解することができます。
正に一石二鳥の手法なので、面接官を担当する人はぜひ実践してみてください。
こちらの記事もおすすめです。