2017年~2019年頃「 働き方改革 」という言葉を見ない日はありませんでした。
最近は「働き方改革」が議論されることも少なくなりましたが、今こそコロナの外圧をきっかけに、もう一歩踏み込んだ働き方改革の見直しを進める時ではないでしょうか。
今週のブログでは、コロナ禍を経て、「働き方改革セカンドステージ」として今進めるべきことについてお伝えします。
目次
働き方改革 の経緯
まず、「働き方改革」の経緯を簡単に振り返ります。
安倍内閣時代の2015年頃から議論が始まり、2016年に働き方改革実現会議が発足、2018年には働き方改革関連法案が成立しました。
このようにもともとは官が仕掛けた動きであり、当初は世論もそこまで反応していませんでしたが、電通の若手社員の自殺事件なども背景となり、長時間労働削減を軸として世の中が一気にそちらの方向に動きました。
しかし個々の企業にとってはこの動きがしっくりきていない感もありました。
当時の働き方改革の対策議論が定番メニューに偏っており、本質的な議論に踏み込めていなかったからです。
定番メニュー
- 長時間労働削減
- 有給取得促進
- 女性活躍
- 育児介護支援
- シニア活用 など
しかし、この定番メニューは働き方改革の「目的」ではなく、あくまでもその「手段」にすぎません。
「働き方改革」を通じて本来企業が目指すべきなのは、
① 社員がイキイキ意欲的かつ自律的に働く環境づくり
② 社員の定着および能力向上
③ 採用力の向上
これら3点を実現して会社の発展につなげることでした。
コロナ禍で 働き方改革 はどうなった?
2020年春から今に至るコロナと格闘した1年間、職場環境にも大きな変化が訪れました。
従前は全く進まなかったリモートワークの普及は特筆すべき変化です。
これによって、通勤時間の削減、体力的負担の軽減、趣味の時間や家族と共にする時間の拡大など、個人にとって様々なメリットが得られました。
同時に仕事のやり方にも変化が生じました。
何となく開催していた会議が減り、報連相がよりシンプルで効率的になり、個々の仕事の分担を明確にするようになりました。
業務の整理や承認関係の電子化等により生産性を改善した事例も多くあります。
出張の大半もしなくて済むようになりました。
このようにコロナ禍の1年で働き方に大いなる変化が生じ、一歩前進したことは確かだと思います。
これから 働き方改革 はどうなるか?
では「働き方改革」はもうこれで終了させていいのでしょうか?
先の働き方改革を通じて企業が目指すべき目的を踏まえると、まだ終了させられる段階ではないことがお分かりだと思います。
コロナ禍の変化でメリットをより多く享受したのは働き手個人です。個人の自由度と選択肢が拡大しました。
- 通勤時間がなくなり、自由に使える時間が増えた
- 出社や時間の使い方の選択の幅が広がった
- 遠方の会社に就職して自宅で働くという選択肢が生まれた
- 副業など本業以外の仕事をする環境と時間的余力が整った
見方を変えれば、企業が社員を自社に縛り付けておくことがますます難しくなってきたと言えます。
従前は目の届く範囲に座っていた部下を、リモート環境でマネジメントする手腕も問われるようになりました。
コロナ前に進めていた長時間労働削減を軸とした働き方改革に加え、コロナ禍で生じた変化も取り込んだ働き方改革のセカンドステージが必要とされています。
働き方改革 のセカンドステージで進めること
セカンドステージでは何を進めていけばいいでしょうか?
既に進行中で今後も続くと想定されるトレンド(下記)も抑えつつ、考える必要があります。
- 少子高齢化、若者の減少による恒常的な労働力不足
- 給与格差の拡大(新卒採用時から既に差が出始めている)
- 転職、副業、フリーランスの増加
- ITエンジニアなど専門性の高い職種の取り合い
- 外国人、シニアなど労働力の多様化
先に掲げた働き方改革で目指す目的を実現するために進めるべきことは、5つあります。
生産性の向上
コロナ前の働き方改革でも取り組んだ会社が多いテーマですが、まだまだ改善の余地があります。
今後の長期的な人手不足を見据え、また限られた人材に少しでも付加価値の高い仕事をしてもらうためにも、ルーティン業務の効率化、自動化などは避けて通れません。
まず各部署で断捨離を行い、不要な資料、不要な会議、不要な業務プロセス、不要な習慣を減らしてみましょう。
その上で業務プロセスをITツール等も活用しながらいかに効率化するか考えてみましょう。
働く魅力づくり、魅力の発信
社員がその会社で働く理由は、お金だけではなく、やりがい、成長、仕事の面白さ、誇り、同僚や上司との関係性など様々です。
給料が低いからいい人材が採れないとは限りません。
個人の選択肢が増えている今だからこそ、なぜその会社で働きたいか?という理由が大事です。
例えば以下のような特徴のうち、自社ならではの特徴がある会社には人が集まってくるはずです。
(全てに魅力を出すことは不可能なので、メリハリで構いません。他社に抜きん出た特徴や魅力があると働き手に響きやすいです。それを明確に打ち出していきましょう)
会社の魅力の例
- 個々の家庭の事情や望む働き方に応じて仕事ができる
- 年齢に関係なく、優秀な人材はどんどん出世や昇給がある
- 社員同士がどこよりも仲が良い。家族的であたたかい
- 仕事のやりがい、社会的意義、顧客からの感謝を深く感じられる
- 教育の仕組み、社員同士で高め合う企業風土など、どこよりも成長できる
人材マネジメントの見直し
働き方の多様化、リモートワーク等の働く環境の変化に伴い、個人の役割を明確に定義し、(時間ではなく)成果で評価する必要性が高まっています。
何をもってして成果を測るのか、それに伴う報酬をどのように設計するかも考えなければなりません。
上司による「部下の管理の仕方」も変わり、従来の制度や仕組みではカバーしきれなくなっており、見直しが求められています。
多様な雇用形態の活用
労働力不足かつ高い専門性が求められる中で、正社員だけで全てをまかなうのは限界が来ています。
自社の社員が他社で副業したり、転職していくことも増えますが、逆に外部の人材を副業や顧問の形態で活用するチャンスでもあります。
自社を退職する社員に、一部の業務を継続的に委託するケースも増えるでしょう。
リモートワーク環境も整備されていくため、遠隔地に居住する人材を雇用したり、週3日だけ働きたい優秀な人材を活用するといったことがスムーズにできるようになっていきます。
今後は様々な雇用形態やワークスタイルを、活用目的に応じて組み合わせていく時代です。
いい人材であれば、自社の制度にはめるより、相手の望む働き方に近づけていく。
そういう考え方で自社の雇用を見直していきましょう。
コミュニケーションと情報の透明性向上
業務効率の悪さ、無駄な仕事、連携の悪さなどは、大抵お互いのコミュニケーション不足や情報不足に起因しています。
あなたの会社では、「そんな話、聞いてないよ!」、「何でこんな仕事する必要あるの?」、「これってうちの部署の仕事?」、「上が現場分かってないんだよね・・・」といった発言はありませんか?
まさにコミュニケーションや情報伝達の問題です。
皆が気持ちよく効率よく働くために、さらに会社が社員から信頼されるためには、ぜひここを改善していく必要があります。
リモート環境ではお互いのコミュニケーションが疎かになりがちなので、一層重要です。
- 経営方針や施策の伝達(背景も含めて)
- 会社の動きや進捗の情報共有
- 仕事の連携に関わる擦り合わせの場づくり
- オフサイトコミュニケーションの場づくり
ぜひこれらを進めていきましょう。
できるだけ社内情報格差をなくして透明性を高め、上から下へ、下から上へ、横同士でスムーズに情報が流れる組織が理想的です。
まとめ
コロナ禍で一段落した働き方改革ですが、本来目指すべきゴールに対して、まだ道半ばです。
コロナの外圧で進んで変化に乗じて、さらに踏み込んで働き方改革セカンドステージを進めていきましょう。
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