ジョブ型雇用への転換で、日本企業が失いかねないものとは?

2020.09.10
Share this...
Share on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter

コロナによるジョブ型雇用転換は、あなたの会社と社員を幸せにしますか

新型コロナウイルス対策として、在宅勤務(リモートワーク)を導入した企業が増えました。

一方在宅勤務により生じた問題への対応として、『ジョブ型雇用』が取り上げられるようにもなりました。

 

ジョブ型雇用は、事前に社員一人一人のやるべき業務内容を明確にし、担当業務の達成状況(成果)で評価する。

個人の仕事状況を随時把握する必要がなく、在宅勤務で管理者が抱える問題を解決してくれると言われています。

社員も自分のやるべき仕事が終われば、他の時間は自由にできるというメリットが挙げられています。

若い世代を中心に、社員の中からもジョブ型雇用を求める声が増えているようです。

 

あなたの会社では、ジョブ型雇用は議論に上がっておりますか?

 

ジョブ型雇用をめぐる今の議論を端から見ていると、使い方次第では、日本が築いてきた大切なものが失われてしまうのではと感じます。

 

 

欧米のジョブ型雇用の実情と課題

ジョブ型雇用が広く採用されている、欧米と欧米企業の実情を紹介します。

欧米企業もジョブ型雇用だけで機能しているわけではありません。
社員が職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)に定められた仕事を行うだけでは、企業経営は成り行きません。

ジョブとジョブの間に発生する仕事(定義しきれない仕事)を埋める役割が必須です。

 

では欧米企業ではどのようにジョブを定めているのでしょうか?

「あなたの仕事は〇〇と□□です!」
というジョブの定義を行うには、各現場の上司と部下が相談するだけでは不十分です。

そもそもどのような職務(業務)が必要になるか、企業理念やビジョンに立ち返って戦略から考える人が必要です。

『生活の糧を得る』や『次の転職に向けた経験を積む』という短期的視点のみで、日々決められた業務を繰り返している社員には、担うことができない仕事です。

 

そこで欧米企業では、幹部(リーダー)候補となる社員を選び、リーダーに必要な知識や経験を積むためのローテーションや研修などの仕組みが構築されています。

これにより、中長期的な視点(会社の持続性)や部門横断的な視野(全社の立場)で、会社の戦略から考える人材を確保しています。

 

実際の欧米企業では以下の2種類の人材が、各ポジションや社員毎の仕事観(仕事に求めること)に応じて、バランスを取りながら運営されています。

■ジョブ型雇用で働く人材
ポジション毎に落とし込まれた職務を行うために雇われる、費用(コスト)としての社員。
固定業務や高い専門性(知識・経験)を要する業務に対応する人材

■メンバーシップ型雇用で働く人材
中長期視点で、企業理念やビジョンの実現を目指す仲間としての社員。
自社の幹部候補育成を目的にした、会社への共感が強い人材

 

上記2種類の人材を適切にマネジメントするため、欧米の管理職には、部下のモチベーションや仕事観をタイムリーに把握し、仕事に集中できるようサポートすることが求められます。

同時に上司は、自分の仕事を任せることができる後継者候補を、日々の部下との対話を通じて選び育てることまで求められているのです。

 

 

欧米企業でありながら、ジョブ型雇用の逆をいくサウスウエスト航空

ジョブ型雇用を前提にキャリア形成が行われる欧米において、異彩な企業があります。

書籍や講演でもよく取り上げられる、アメリカのサウスウエスト航空です。

 

サウスウエスト航空では、顧客を喜ばせることができる人材(自社の価値観に合う人材)であれば、職種を問わず採用しています。

また配属先が合わない場合、別職種に異動することで継続して働けるよう対応しています。

定義された職務と紐づくポジション別に採用する、ジョブ型雇用とは全く異なります。

社員に期待されるのは、決められた職務をこなすことではありません。
決められた職務を超え、仲間と共に顧客満足を高めることが、社員に期待されているのです。

 

なんだか日本企業がメンバーシップ型雇用を通して目指している姿に、似ていると思いませんか。

 

またサウスウエスト航空では、『お客様第二主義、従業員第一主義』を掲げています。

社員の会社への愛着心を高め、顧客満足度を高める行動がとれる社員を惹きつけているのです。

 

 

メンバーシップ型からジョブ型への移行で失うもの

あえて、会社(経営者)の社員に対する期待を極端に表現してみると、

■ ジョブ型雇用
社員とは、定義された職務を確実に処理する機能
: 業務の処理・短期的な成果 > 総合的な人間性・会社に中長期もたらす影響

■ メンバーシップ型雇用
社員とは、会社のビジョン実現に向け共に戦う、取り換えのきかない仲間
: 総合的な人間性・会社に中長期でもたらす影響 > 業務の処理・短期的な成果

と言えるのではないでしょうか。

 

日本企業がジョブ型雇用を表面的な議論で導入するリスクは、メンバーシップ型で培ってきた『会社や職場に愛着や想いを持つ文化』や、『そのなかで育った社員の価値』を失うことです。

なぜなら、メンバーシップ型社員のいる組織は、危機への対応力(レジリエンス)が高いからです。

与えられた役割(仕事内容)を中心としながらも、過度に縦割り(タコツボ)に陥らず、変化に柔軟に対応して、危機に立ち向かえるのが、メンバーシップ型社員のいい所です。

ジョブ型社員には、職務記述書に書かれていない仕事を機動的に行う柔軟性が欠けています。

 

新型コロナウイルスという危機に直面し、本当に頼れる社員が誰なのか、考え直した方も少なくないと思います。

 

メンバーシップ型でもリモートワークの評価は可能

誤解されがちな観点ですが、そもそもジョブ型雇用を導入しなくても、各職務の仕事内容や役割を具体化することは可能です。

また評価基準の明確化や評価者の育成などによって、離れて働く社員の適切な評価もできるようになります。

リモートワークで難しくなった問題は、ジョブ型雇用に移行すれば解決できるわけではありません。

制度の如何にかかわらず、仕事の役割を明確にして、その進捗を上司と部下で定期的に共有し、次に向けた対話をすることが何より大切です。

ジョブ型に捉われず、従来型制度の改善も含めて、自社にあったやり方を選択すべきです。

 

今こそ経営者に実施していただきたいこと

今回の新型コロナウイルスを機会に、今だからこそ考えていただきたいことがあります。

  • あなたの会社にとって、社員とはどういう存在なのか?
  • 本当に社員に期待していることは何なのか?

そして考えたことを、素直な気持ちと言葉で社員に伝えてみる。

また社員一人一人に、『会社で働く意味や目的』や『会社に対する考え』など、社員の本音に耳を傾けてみて下さい。
 

社内での相互理解を深めることが、在宅勤務の課題に立ち向かう正攻法であり、近道でもあると考えています。

 

以上、『ジョブ型雇用への転換で、日本企業が失いかねないものとは?』でした。

 

Share this...
Share on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter

筆者紹介

大西隆仁
株式会社インターブリッジグループ マネージャー

大西隆仁

幅広い企業に対して、課題の特定から解決まで長期的な視点で支援しています。企業理念再整理やビジョン策定、実現に向けた戦略立案、遂行に向けた変革活動に対し、クライアントに伴走する形で関わらせていただいています。

筆者プロフィール詳細