社員の成長
「どのようなやり方で社員を育成するか?」を議論すると、研修の話になりがちです。
もちろん研修も人材育成の1つの手段ですが、社員の成長を最も左右するのは「日々の仕事を通じた成長」です。
年間250日の仕事を通じて一日一日成長する人と、日々停滞する人では、1年後、3年後、さらに5年後に大きな力の差がつきます。
日々の仕事を通じて一歩一歩成長できているか?という事が人材育成において最も注視すべき点ですが、意外にもその観点があまり議論されない傾向があります。
今週のブログでは、日々成長する意義と、そのシンプルで効果的な方法についてお伝えします。
目次
3年後に40倍の差がつく
日々0.1%成長する社員と、日々停滞する社員がいたとします。
この二者の成長率を比べてみましょう。
0.1%の成長とは、自分の持っている実力の1/1000ずつ毎日成長させていくことを意味します。
若い社員であれば十分に達成可能な水準です。
この場合、1年後(250日後)には元の実力(=戦闘力1)に対して、28%成長して戦闘力が1.28になります。
3年後(350日後)には、211%成長して戦闘力が2.1になります。
つまり、3年後には日々停滞する人の2.1倍の実力になっています。
若手社員にとって、上記の1日0.1%成長は控えめな目標かもしれません。
よって、仮に1日0.5%成長するとしたらどうなるでしょうか?
1年後(250日後)に3.5倍、3年後(750日後)には何と42倍になります。
あくまで計算上の話ではありますが、日々成長する社員と停滞する社員では3年後に40倍ほどの差がつくのは十分にあり得ることだと言えます。
成長は複利
なぜここまで差がつくのでしょうか?
一日一日の成長率は小さく見えるかもしれませんが、成長は複利のように作用します。
元本についた利子に対して更に利子がつくのと同様に、元の実力に上乗せされた戦闘力に対して更に成長が重ねられるため、複利のように能力が高まっていきます。
誰しも「今日くらい無駄にしてもいいか・・・」という甘えが出ることがあります。
しかしそれが2日続き、3日続き、気づけば3ヶ月間、ほとんど成長せず、ただ目の前の仕事を処理してるだけということになりかねません。
たとえ亀の歩みであっても、毎日着実に成長している人ならば、3年努力した先には大きな成長を遂げることができます。
日々の成長を支える仕組み
自己管理だけで毎日着実に成長できる人は滅多にいません。
人はついつい怠けてしまうものなので、その習性自体を責める必要もありません。
人のそのような特性を理解した上で、外からの刺激を与えることによって、日々成長してもらう仕組みを考えるべきです。
その仕組みとは、「日々の振り返り」に他なりません。
サッカー選手であれば、試合が終わったらビデオ映像を見ながら、自分のポジション、一つ一つのプレーを確認し、良かった点や改善点をチェックするでしょう。
そして、翌日は改善点を意識しながら練習に取り組みます。
コンビニの店長であれば、1日が終わったら売上を集計し、売れた商品/売れなかった商品、在庫の適正数などをチェックし、次の日の陳列や販促ポップ、声がけなどに生かします。
コールセンターのチームリーダーであれば、1日のコール件数、対応効率、クレーム処理状況などをチェックし、次の日にスタッフにアドバイスや指示を送ります。
このような振り返りを社員が当たり前の習慣のように行うことができれば、1人1人が着実に成長するはずです。
では、これらの振り返りを毎日歯磨きをするように習慣化してもらうにはどうしたらいいでしょうか?
「日々の振り返り」に最適な方法は?
日々の振り返りを習慣化してもらう方法は、それほど選択肢はありません。
日報、夕礼(または朝礼)、上司口頭報告のいずれかしかないと思っています。
簡易に行うのであれば夕礼か上司口頭報告が適しているでしょう。
毎日の帰り際に、夕礼の場または上司への口頭報告として、その日の振り返りを報告してもらいます。
例えば以下のようなテーマが考えられます。
- 本日行った主な業務/明日実施予定の業務
- 本日予定していたけどできなかった業務 & その対応策
- 今日成長したこと/今日のチャレンジ
- 今日の気づき(業務課題、良かった点、顧客情報/競合情報、リスクなど)
- 改善提案
これらの内容で夕礼を実施したり、帰り際に上司に報告してもらいます。
ただしこの方法には限界があります。
直帰する社員がいる場合や、上司が出張中である場合は実施が難しく、加えて口頭報告だとあまり深く考えず報告のための報告になりかねません。
そこで、日報の活用が有効です。
日報の利点
日報は上司口頭報告や夕礼(朝礼)の弱点をカバーできるのが良い所です。
- 文章として書かせるため、それなりにちゃんと考えないと書くことができない
- 記録が毎日残るため、いい加減なことを書きづらくなる
- 誰でもいつでもどこでも書くことができ、見ることができるので、時間の制約やエリアの制約がない
もちろん、日報を毎日継続してもらうための仕掛けや工夫は必要です。
継続自体が大変なことなので。
特に重要なのは、書きっぱなしにさせず上司が何らかのフィードバックを行うことです。
これにより、社員は真剣に振り返りを行うようになり、成長の手助けとなります。
振り返りの2つのメリット
最後に、日々の振り返りがどのような効果をもつかをお伝えします。
「考える」時間を持てる
「振り返る」という行為は、1日の終わりに今日の仕事について「考える」ことです。
この「考える」時間こそが人の成長の大いなる栄養源になります。
考える時間を持たない人は、日々の作業に埋没し、1年たっても2年たっても同じ仕事をしている・・・なんてことになりかねません。
先ほどのサッカー選手同様、良かった点、できなかったことその対策、気づいたことなどを考える時間があれば、次の日の行動改善につながります。
仕事は「行動」と「考える」の繰り返しであり、「振り返り」は、日々「考える」時間を持つ効果があります。
そして、振り返りの時間を持つことにはもう1つ意義があります。
日中の業務の質が上がる
夕方に必ず振り返りの時間があると、社員は日中の時間に振り返りを意識するようになります。
例えば振り返りの項目の中に「今日の気づき」というテーマが入っていれば、日中仕事しながら何か気づきがないか意識します。
業務改善の気づきやマーケット情報の気づきなど、アンテナを立てて仕事に取り組むことになります。
「今日の成長」というテーマが入っていれば、日中から自分がどのような成長しているかを意識せざるを得ません。
結果として小さなことであっても「自分なりに成長しなければ!」という気持ちになります。
先輩の良い仕事の仕方に気づき真似してみたり、業務知識をプラスしてみようとなります。
以上のように、振り返りには2つの大きな効果があります。
1. 毎日「考える」時間を持てること
2. 日中の業務の質が上がること
まとめ
人材育成を考える場合、社員の成長を支えるのは職場における「日々の仕事を通じた成長」にあることに着目すべきです。
研修の実施も有効な方法ではありますが、あくまで成長のエンジンは日々の仕事です。
社員が皆日々の成長を遂げるためには、本人の自助努力にまかせていても限界があり、何らかの仕組みが必要です。
その仕組みとは振り返りの習慣化です。
振り返りには、毎日「考える」時間を持ち、日中の業務の質を向上させる効果があります。
日々の振り返りを工夫して継続することで社員一人一人の成長を後押しし、組織全体のパフォーマンス向上につなげていきましょう。
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