部下の育成
「部下を育てたい気持ちはあるけれど、毎日が業務で手一杯・・・」
そんな声を、マネージャーの方からよく耳にします。
1on1を丁寧に行いたい。フィードバックをしっかり伝えたい。
そう思っても、現実には急ぎの対応やトラブル対応に追われ、気づけば育成は後回しになってしまいます。
しかしながら、部下が育たなければ、結局マネージャー自身の業務量は減らず、次の世代も育ってきません。
今週のブログでは、“育成したいけど時間がない”という現場マネージャーの方に向けて、3分でできる日常の育成アプローチをご紹介します。
目次
なぜ「3分」で効果があがるのか?

「育成」というと、丁寧に時間をかけた1on1や、研修などを思い浮かべがちです。
もちろん、そうした方法ならではの効果はありますが、ビジネスパーソンの成長においては、日々の仕事を通じてどれだけ学びを得られるかが重要です。
部下に腰を据えてじっくり教える時間が取れなくても、ちょっとした声がけや気づきの提供を繰り返すことで、十分に成長を促すことが可能です。
心理学的にも、成長を促進するには “高頻度” “軽めの負荷” “即時性” がカギだと言われています。
3分でできる育成の6原則
小まめに声をかける
通りすがりや雑談の延長線で構いません。
「あの仕事どう?」
「先週お願いした件、順調?」
と気軽に声をかけましょう。
部下にとっては、見てもらえているという安心感があるだけでなく、
「ちゃんと進めなければ!」と気を引き締める効果にもなり、上司にも声をかけやすくなります。
何か分からないことがあったり、ちょっとした事でつまづいていても、上司に尋ねるタイミングを逸して仕事が停滞することがあります。
小まめな声がけによって、部下も適宜疑問や不安をその場で解消することができます。
小まめに自己振り返りをさせる
部下がお客様に商品説明をする場に同席していたら、商談終了後に
「説明してみてどうだった?」
「上手くいったところと、上手くいかなかたところは何だと思う?」
「次回はどの辺りを改善したらいいと思う?」
と問いかけ、振り返る時間をとりましょう。
移動中の立ち話程度でも全然構いません。
こうした振り返りの機会がないと、経験からの学びが整理されない状態のまま流れてしまいます。
自分の気づきを振り返り、上司に話すことによって、課題が具体的に浮かびあがり、次回以降の仕事に活かすきっかけになります。
上司が自らお客様に説明する場に部下が同席した場合も、やはり問いかけてみると有効です。
「私の説明を聞いていてどう思った?」
「自分も同じようにできると思ったところと、まだ自分はできないなと思ったところはどこ?」
などと聞いてみましょう。
毎回このような場があれば、部下は上司によるお客様への説明をぼーっと受け身で聞いていることができません。
1つ1つしっかり聞きながら、自分に足りていない商品知識や、お客様からの難しい質問への答え方などを学び、吸収していきます。
小まめにフィードバックする
部下の仕事を見ていて上司が気づいたことは、その都度小まめにフィードバックしましょう。
良い点も、改善すべき点も、気づいたその場で伝えるのが原則です。
上述のように、お客様への説明を部下が行ったら、終わった後に上司として気づいたこと(良い点と改善すべき点)を即時フィードバックします。
いずれまとめてフィードバックしよう、と思っているといつの間にか忘れてしまいます。
部下も1週間も経ってからフィードバックされても、当時の商談内容の記憶が薄れているので、効果が半減します。
よって「気づいたらその場で」が鉄則です。
例えば、部下が取引先と電話しているのが聞こえてきて、もし気になることがあったら、電話が終わった時にその場でフィードバックしましょう。
「今伝えた内容だと相手が誤解する可能性があるから、〇〇〇と伝えた方がいいよ」
「お客様が当社商品に興味もってくれていたのなら、そのタイミングでプッシュして具体的な提案期日まで約束するといいよ」
「電話の最後に、取引先に凄く配慮した言葉を伝えていて、とても良かったよ。相手も安心したと思うよ」
今、目の前で起きたことに対して、その場で手短かつ具体的にフィードバックするほど効果があります。

「〇〇したいです」にはwhyを問う
部下から
「〇〇したいです」
「〇〇の方向で進めたいです」
と提案がきたら、why(なぜそう考えましたか? 目的は何ですか? 狙いはどこにありますか?)と問いかけましょう。
その問いに対して、
「以前からそのようにやっています」
「前任者からそうするように言われました」
「□□部から強いリクエストがあったので」
などの返答が来るとしたら、その部下はまだまだ自分で考えて仕事する習慣がついていない証拠です。
どんな仕事にも目的があり、個々のアクションはその目的に近づくための手段です。
手段だけの提案(目的なき提案)をしてくることがないようにすることで、部下に考える習慣づけをします。
上司に相談に行くと、必ず「なぜ?」「何のため?」「目的は?」と聞かれると分かっていたら、相談に行く前に自分で考えるようになります。
間違っても「〇〇したいです」という提案に対して「それは必要ないからNO」とだけ答えるのはやめましょう。
仮に「NO」だとしても、なぜNOなのか考えさせる。
部下がわからないとしたら、なぜNOかをちゃんと伝え、次回の提案が改善するよう導いてください。

質問には質問で返す
「〇〇の件、どう進めたらいいでしょうか?」
「見積りはどのくらいで提案したらいいでしょうか?」
部下からこのような質問がきた時、すぐに答えるのは控えましょう。
「あなたはどうしたらいいと思いますか?」
と問いかけてください。
最終的に意思決定するのは上司だとしても、質問に全て答えている限り、部下はいつまで経っても上司を頼り、自分で考えることなく上司に聞いて解決しようとします。
人材育成においてよく言われるのが「1つ上の立場でものを考えましょう」というものです。
部下にそうなってもらうためには、1つ上の立場で「あなたならどう判断しますか?」と考えてもらう訓練が必要です。
上司に決めてもらうスタンスを卒業し、
「今回の見積りは〇〇の理由でこれくらいの価格で出そうと思いますが、いかがでしょうか?」
と言えるようになるのが理想です。
気づき・学びの情報を提供する
上司が普段触れる情報の中で「この情報は部下のA君に役立ちそう」と思うものがあれば、それをその場でA君に共有してください。
競合他社のやり方、他社事例、参考になる書籍や雑誌記事、社内の関連情報などなど、A君の仕事の成果につながるものがあればなんでも構いません。
「(経験値豊富な)B先輩から話を聞いてごらん」など他者から学ぶきっかけを提案するのもいいですね。
上司は全てを自分が教える必要などなく、さまざまな方法から部下が学んでくれれば、それに越したことはありません。
部下の気づき、学びを深めるきっかけを提供することで、成長を間接的に促すのも育成の1つのテクニックです。
以上の6原則を、ぜひ場面に応じて使い分けてみてください。
それぞれ1回あたりの時間は3分程度で十分です。
気づいた都度、相談のあった都度、部下の成長を促すための質問、発言を繰り返していけば、部下は確実に力をつけ、仕事への取組みが変わってくるはずです。
日常の仕事における“ただのやりとり”を、育成の場に変換していきましょう。
まとめ

忙しいマネージャーにとって、部下育成はどうしても“後回しになりがち”です。
「育成にまとまった時間が必要だ」という思い込みがあると、他の業務に追われる中で手をつけられず、結果的に育成の機会がどんどん遠ざかってしまいます。
しかし、育成は必ずしも特別な場や長時間を必要とするものではありません。
日常の業務の中にこそ、育成のチャンスが無数に存在しています。
まずは「時間がなくてもできる方法」を上手く活用してみましょう。
本記事でご紹介した3分育成法は、忙しい現場でも無理なく取り入れられる、実践的なアプローチです。
小さな声がけ、問いかけ、フィードバック、情報提供のひとつひとつが、部下の成長を促す確かなきっかけになるので、是非試してみてください。
「今日、このあと誰に声をかけようか?」
そこから、あなたのチームの育成サイクルが動き始めることでしょう。
こちらの記事もおすすめです。