コンサルティングの仕事で色々な企業の課題と向き合いますが、多くの問題の解は会社の中にあると常々実感します。
「会社の中」という意味は、社員の声、考え、アイディア、沢山のデータ、チャンスやリスクに関わる様々な情報、等々の事です。
(※以下では主に「社員の声、考え、アイディア」に絞ってお話します)
どんな会社にも必ず優秀な社員がいるもので、その人達は問題点も解決策も大体分かっています。
ところが既によい解決案をもっている社員がいるにもかかわらず、課題解決が全然進んでいないケースがままあります。
目次
経営課題に対して社員の声が活用できていない事例
業績が思うように伸びていないA社の事例
最初の打合せで経営陣が「市場が縮小し、営業力も弱っており非常に厳しい・・・」と仰っていました。
「では一度社員の方々にもヒアリングさせて下さい」とお願いして話を聞いて回ると、どうも様相が異なります。
「市場全体は縮小しているが当社の〇〇商品は伸びシロが大きい」、
「差別化のない商品を気合いで売り込む手法は顧客に望まれていない」、
「今は商品よりもアフターサービスが決め手となりつつあるが当社はそこが弱い」、
などなど。
聞けば聞くほど、社員それぞれが非常にいい意見やアイディアを持っているのです。
にもかかわらず、その声は経営陣に届いていません。
朝礼でムードが沈滞してしまうB社の事例
毎週月曜朝に全社員が集まる朝礼を行っていますが、社員の反応が薄く、嫌々出ているように感じるとの悩みです。
社長は朝礼を重視しており、週の初めに社員を激励、鼓舞する場にしたいと考えていました。
そのため経営幹部が度々集まっては朝礼のコンテンツを工夫してきました。
ところが状況は改善しません。
中間管理職や何人かの社員に本音を聞いてみると、色々と意見が出てきました。
- 朝礼が嫌なわけではないが、聞きたい話が聞けない
- いつも予算達成状況、部門長による今週の方針など目先の叱咤激励系ばかり
- 毎回「今が正念場だ」と言っている
- もっと社長の人間性を知りたい
- この会社の将来の姿などビジョンも時々聞きたい
- 現場で起きている課題をどうやって解決したとか、すごく頑張っている人とか、社員にスポットライトを当てる内容もあってほしい
経営陣が朝礼でやりたいことと、社員が望んでいることが全くかみ合っていなかったのが明らかになりました。
朝礼を意味ある場にするためには、「出し手と受け手」、「話し手と聞き手」がしっかり噛み合うことの大事さを経営陣は痛感しました。
経営課題改善に向けて社内でよい議論がされない理由
会社の経営課題改善に必要な解は、実は現場に転がっています。
ところが経営レベルでそれを生かし切れていません。
一体なぜでしょうか?
多くの場合、次のような問題がよく見受けられます。
【風土面】
・率直に会話する雰囲気や場がない
・「上司の言う事は絶対」の風潮が強く、ヒラメタイプが出世しがち
【スキル面】
・聞く力、伝える力が弱い
(→正しく伝わらないから解を間違う)
・周囲の巻き込みや意見調整が上手くない
(→問題解決は得てして他部署を巻き込む場合が多いので、そこで尻込みする)
・大量の情報を有機的に繋ぎ合わせ、単純化する力が弱い
(→色んな人の意見が統合されない)
【マインド面】
・自分が解決してやろうという気概が足りない(立場にかかわらず)
上記の傾向が、健全な議論やスムーズな情報流通を阻害します。
会社の中にある英知を生かすことができず、正しい次の一手が打てないのです。
経営課題の解決に社内の意見を活かす方法
ではどのような解決方法があるでしょうか?
私はこのような会社の問題の根っこは“信頼”の弱体化だと見ています。
・「会社への信頼、上司への信頼、同僚への信頼」が深ければ、会社のために頑張ろうという気持ちが湧く筈です。責任感も出ます。
・信頼し合い、お互いの意見をフラットに受け止める風土があれば、安心して発言し、議論がもっと活発化する筈です。
・部署をまたいだ信頼関係があれば、いざという時お互い協力して事にあたれます。
・失敗してもその経験を会社が評価してくれると信頼していれば、リスクの高い仕事にチャレンジする人が増えるでしょう。
企業活動は人と人の活動である以上、まずは信頼の絆を1つ1つ結び直すところが出発点ではないでしょうか。
並行して、個々の社員の「聞く力、伝える力」、「調整力」、「巻き込み力」なども磨きをかけていくことです。
以上、「経営課題の解は会社の中にある」でした。