発展する会社の事業計画 とは? 社員の潜在能力を引き出す効果的な計画書の書き方

2021.01.14

発展する会社の事業計画

2021年を迎え、3月決算の会社は来年度の事業計画を立てる時期ですね。

単純に年度事業計画といっても、その考え方、作り方は会社によってかなり異なります。

事業計画は “計画” ですが、緻密な業績 “予想” を作ることが事業計画となってしまっている会社もあります。

果たしてそのような計画で、組織の力、社員の力を最大限に引き出すことができるでしょうか?

今回のブログでは、事業計画を有効なものにするため、つまり社員の力を引き出し高い目標に到達するために、どのように計画策定を進めるのがよいかをお伝えします。

 

事業計画は業績予想であってはならない

発展する会社の事業計画

 
まず、冒頭で述べた「事業計画を業績予想のように作る会社」についてお話しします。

これらの会社は、前年までの実績、市場動向、業界環境、社員の採用や離職の予想値などをベースに、売上と費用のあるべき予想を立てるやり方を取っており、

いかにして1年後の実績に近い数値を作るかというところに力点がおかれます。

このやり方は事業計画の立て方として正しか?というと、その答えはNOです。

 

上場会社が投資家に説明する業績予想や銀行に見通しを説明する資料としてはこれで良いかもしれません。

しかしこの「予想値をベースにした計画」を目標にしてしまうと、前年を踏襲した想定の範囲内での活動にしかならず、

予想を超えて力を大きくストレッチさせる推進力にはなりえません。

 

そもそも事業計画とは何か

 
ピーター・ドラッカーは次のように述べています。

『計画とは未来に関する現在の決定である』

つまり計画とは、「将来のことをあらかじめ決める」ということです。

例えば若い社会人が海外のMBAを取得したいと思ったら、まずは計画を立てます。

仮に「留学するのは3年後」と決めたら、そこから逆算してテストの必要点数に到達する時期、試験向けた英語の学習計画などを立てます。

 

会社の事業計画も同じことです。

どんな会社でありたいかというミッション、5年後、10年後にどんな姿になっていたいかというビジョンがあって、その将来像から逆算して今年やるべきことが、今年度の事業計画になります。

もちろん、考える上では昨年の実績を参考にしても構いませんが、

前期の延長線上で今期の計画を考えるのではなく、「未来の姿からの逆算で今期の計画を考える」のが事業計画の根幹です。

 

事業計画は「願望」ではなく「必ずやり遂げるもの」

事業計画

 
立派な事業計画を作って、期初で力尽きてしまうケースが見受けられます。

事業計画とは、それを作ることが目的ではなく、目指す地点に到達するための手段です。

よって、願望の事業計画を作り、社員が「できるだけ頑張ります!」となってしまっては計画を立てる意味がありません。

「できるだけ」と言っている時点で達成の見込みはほとんどありません。

将来に向けて今年やるべき計画を何が何でも実行するという企業文化、そして目標管理を実行しなければなりません。

 

事業計画で社員の潜在能力を引き出すには

 
さて、それでは計画の水準はどの程度に設定するのがいいでしょうか。

ストレッチトゴールという言葉は聞いたことがあると思います。

普通にやって届く目標ではなく、絶対に無理な目標でもなく、本気でやり切れば何とか到達する目標水準のことです。

 

目標の設定水準はストレッチトゴールが1つの基準となりますが、そのストレッチトゴールも目標を立てる人が変われば答えが違ってきます。

例えば市場全体が毎年10%成長している市場において、売上20%成長を目指すのをストレッチトゴールと考える会社もあるでしょう。

一方で、同じ条件下において売上倍増を掲げ、何としてもそこに辿り着くべく知恵を絞る会社もあるでしょう。

 

単純にどちらがいい悪いとは言えませんが、20%成長は常識の範囲内の打ち手をやり抜けば到達できる可能性があります。

ところが売上を倍増させようと思ったら、社員たちはとことん考え抜き、通常では思いつかない戦略、戦術を考え出すかもしれません。

それだけ人の潜在能力は深いものです。

 

ただし潜在能力は簡単には引っ張りだせないので、聞いてびっくりするような事業計画を提示した方が効果があります。

 

事業計画で高い目標を目指すためには

事業計画

 
潜在能力を引き出すためには高い目標が望ましいと書きましたが、単に高い目標を設定して社員に提示するだけでは全く機能しません。

「そんな計画、無理に決まってるじゃん・・」と、期初から達成する気力を失います。

では、どうすればいいでしょうか?

 

まずはストーリーを示す

 
なぜその目標を目指すのか?というストーリーを語ってください。

売上、利益を増やす「だけ」のために、どれほどの社員が本気で頑張るでしょうか?

会社のなりたい姿、事業を通じて社会に提供したい価値などがシンクロして、初めて目標に意義が吹き込まれます。

例えば、今年の箱根駅伝で選手の履いたシューズのシェアは(厚底シューズの)ナイキがダントツ1位でした。4年前の1位はアシックスでしたが、今年はアシックスを履いて出場した選手はいなかったようです。

さてアシックスさんは、これからスポーツシューズ市場においてどのようなビジョン、戦略を立てるでしょうか?

恐らく過去の延長線上の改善案ではなく、改めて自分達が市場でどのような存在になるべきかを議論されているのではないでしょうか。

単に「首位奪還」という数値目標だけでは弱いですよね。

目指す姿を社員にどのようなストーリーで語るかが、次の戦いに向かう原動力になるはずです。

 

ストーリーは表面的なとってつけたような話ではすぐ見透かされます。

経営者が本気でそれを実現したいと思い、幹部が深く共感しているか?
経営者や幹部が自分の言葉で社員に語りかけられるか?
が重要です。

その迫力と熱意があれば、社員も「その計画、無理・・・かもしれないけど、まずは知恵を絞って達成できるべく動いてみよう」となるはずです。

 

次は具現化の戦略を伝える

事業計画

 
ストレッチした計画を実現するためには、具体的な方策がなければ実行に移せません。

ストーリーを示すとともに、実現するための大きな方針、戦略を明確に伝えましょう。

ストーリーと戦略が明確になると、社員はその目標を目指す意義を感じるようになります。

目標に向けて各部署・各個人が具体的に何をすべきか、じっくり議論する時間をとりましょう。

 

具体的にはこのように進めます。

  1. 各部署の戦略、戦術、オペ―ションレベルまで考え、その計画を月毎、部署によっては週毎に落としていく。
  2. 必要な投資、人員計画、経費なども並行して具体的な数字に落としながら、着地させていく。

 

計画策定は相当負担のかかる作業なので、最初から全て詰め切れなければ一部は進めながら考える、でも構いません。

大事なことは、経営陣が目標数字だけ与えて受け身のスタンスにしないことです。

社員も巻き込んで(最低でも中間管理職は巻き込んで)計画実行策を考えることで、自分事に近づき当事者感覚が出てきます。

 

まとめ

 
最後に流れを改めて整理しておきます。
 

 

計画は予想ではなく会社の意志そのものです。

ぜひ有意義な事業計画を立てて、今年も会社を大きく成長させていきましょう。

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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