組織改革を進める 正しいステップとは?

2020.08.20

 
組織の改革とか、意識の変革というものは、すぐに結果が出るものではなく、決断とともに粘り強く進めなければ成果につながりません。

しかしながら、人はついつい短期的に成果が出る特効薬を求めがちです。

その気持ちを上手く取り込んで急成長したのがライザップのビジネスです。

ライザップは、減量という継続が大変で途中で挫折しがちなことを、たった2ヶ月で実現できるという驚きで新たな市場を開拓しました

では組織変革において、ライザップのように2ヶ月で結果が出る特効薬はあるでしょうか?

 

組織改革の普遍的なステップ

 

組織変革には、普遍的なステップがあるように思います。

<例えば次の①から②へ組織を変革したい場合>

①ルートセールスで定期訪問して注文をさばく営業組織
②顧客ニーズを拾い上げ開発部隊にフィードバックし新製品を次々生みだす営業組織

 

いきなり全員の意識が変わることはない:
最初は皆一様に「無理だ、経験がない」という。仮に賛同する人がいてもごく少数。徐々に時間と見える成果とともにオセロがひっくり返っていく

上が変わらないのに、下だけ変わることはない:
上の人がこの変革を信じて実践していなければ、下が変わるわけがない

ルール変更だけでは変わらない:
決まり事だけ定めても行動は殆ど変わらない

死の谷が訪れる:
新方式に移行する途上では、従前のやり方も中途半端になるため、売上が下がったり、既存のお客様からクレームが来たりする。それでもひるまず変革を継続するか、目先の業績に負けて凍結するか、という岐路に立つ

成功ストーリーが見えてくると周囲の反応が変わる:
先にトライした人を、周囲は当初冷ややかに見ているが、何か上手く行き出すと自分もやろうかなと反応が変わってくる

確固たる信念。ぶれない気持ちが人を動かす:
そもそも変革する目的は何でしょうか? その意図と将来像を貫き、それを皆に伝え続ければ、苦しい時に乗り越える原動力となる

 

組織を変革するということは、組織に属する社員の習慣を変えることに他なりません。

ライザップの減量は個人の生活習慣の変革なので短期間でも可能です。

一方、企業変革は人間集団の仕事習慣の変革なので、どうしても時間がかかります。

 

社員の意識を変える特効薬はありますか?

 

私が人材育成がテーマのセミナーで講演をさせて頂いた後など、よく聞かれる質問があります。

 

  • 「社員1人1人の意欲を高めるにはどうしたらいいですか?」
  • 「仕事の効率を皆に意識させるにはどうしたらいいですか?」
  • 「管理職に経営者意識を持ってもらうにはどうすればいいですか?」

 

いずれも部下を持つ人が抱く普遍的な悩みです。

 

しかし、この質問の裏に、何か特効薬を期待されているニュアンスを感じ取ることがあります

特効薬があればいいなと私も常に考えを巡らしますが、今のところ、聞いたことも見たこともないので、こう答えます。

「組織変革や意識改革を一気に解決できる特効薬はないと思います。

組織変革は長い道のりです。

多くの会社が道半ばで挫折するからこそ、やり遂げた会社には大いなる競争優位性が生じます」

もっとスカっとする回答を期待したお客様には大変申し訳ないのですが、経営の真髄は「思いと覚悟と持続力」だと思っているので、特効薬はない事を理解してもらいます。

 

組織改革では、最初の成功事例をつくろう

組織変革を進めるスタート段階では、まず変革の目指す所を明確に示します。

最初は殆どの人がピンとこないかもしれません。

それでも気にすることなく、一部の人だけでもいいので変われるところから変えていく。

途中で困難が生じてもぶれずにやり抜く。

そうしているうちに1つの成功事例が生まれます。

さらにそれを伝播させると2つ目の成功事例が生まれ、3つ目、4つ目と追随する人が出てくるのです。

 

こう書いていたら、正に「ビジョナリー・カンパニー2」で描かれた「偉大な企業」の誕生の仕組みと同じ話になってきたので、引用させて頂きます。

 

『魔法の瞬間はなかったのだ。

外部から眺めているものにとっては、一撃によって突破口を開いたようにみえるが、

内部で転換を経験したものにとっては、印象が全く違っている。

考え抜かれた静かな過程であり、まず、将来に最高の業績を達成するために何が必要なのかを認識し、

つぎに、各段階をひとつずつ順にとっていく。弾み車を1回ずつ回転させていくように。

弾み車を同じ方向に、長期にわたって押し続けていれば、いずれ必ず突破の時点がくる』

 

組織変革が挫折する原因

組織改革を進める

 

組織変革が途中で挫折する大きな原因の1つは、推進する人達が”常識”を理解していないためです。

理解していないから、焦って逆戻りしたり、途中で放棄してしまうのです。 

 

組織変革に伴う”常識”とは、下記のようなことです。

 

  • 短期間で成果は出ない
  • 反対派がいて当たり前
  • 一時的な売上減少などの副作用が伴う(=死の谷)
  • 最初から理解して動く人はごく一部
  • 小さな事実、小さな成功事例から徐々に伝播していく
  • 気づいたら変革の車輪が回り始める

 

社長、事業部長、部長など、関わる人達がこの”常識”をスタート時点から覚悟していれば、途中で挫折する可能性をもっと減らせるはずです。

決してのんびり進めるということではありませんよ。

ゴールを焦らず、ゴールに向けて日々やるべき事をぶれずに着実にやり抜く。

そうすれば結果としてゴールが早く近づいてくるでしょう。

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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