あなたは社員の将来の「 キャリア 」を考えたことはありますか?
バブル崩壊、山一ショック、リーマンショックなどを経て、日本における会社と個人の関係、雇用のあり方が激しく変化してきました。
2020年の新型コロナウィルスを契機とする働き方大転換は、個人のキャリアに対する意識をさらに深めることとなりました。
しかし、多くの企業も個人も、まだ自分のキャリアを考えることに慣れていません。
会社の辞令に従って様々な職種や勤務地を経験してきた人にとって、自分自身で仕事を選択するという発想が希薄です。
企業側も、これまで社員の個別事情はあまり考慮せずに配属や役割を決めてきたので、いざ社員のキャリアと言われても「どう対処していいのかわからない」という状況ではないでしょうか?
今週のブログでは、会社と社員が共にキャリアを考える重要性と、その方法についてお伝えします。
目次
社員が転職するのは当たり前の時代へ
最近の調査を見ると次のようなことがわかります。
■2021年卒業予定の大学生への調査では、「将来的に転職もありだと思うか?」の問いに「はい」と答えた人が71.3%います。2019年の61.0%から増加しています。
就活生の「企業の魅力と働き方」に関する意識調査アンケート【2021年卒版】(OfferBox)
■2020年新卒入社の社会人に「今の会社で何年働くと思うか」と聞いたところ、「3年以内」が28.0%でした。50.3%が「10年以内」と答えています。
新入社員に聞いた「今の会社で何年働く?」(2020年新入社員の意識調査)(マイナビニュース)
私は、入社する以上、「その会社に一生いるつもりで貢献しよう!」という姿勢は、昔も今も変わらず大切だと思います。
一方で、「一生勤めたい」という思いはあったとしても、会社側が業績悪化により雇用を維持しきれないこともあります。
その社員の能力を生かせるポジションをどうしても用意できない時があるかもしれません。
だから、社員は頭の片隅では「いずれ転職するかもしれない(転職せざるを得ないかもしれない)」と考えているのが普通です。
もっと自分の力を活かせる環境があれば転職しよう!とも考えるでしょう。
このような転職が当たり前の時代、あなたは大事な社員にどうなってもらいたいですか?
大事な社員が、会社の中にいようが転職して外に出ようが、存分に力を発揮してイキイキ働いて欲しい、というのがあなたの偽らざる気持ちではないでしょうか。
それを実現するには社員1人1人に明確に力をつけてもらうことです。
何でもそつなくこなしてくれる社員は会社にとって便利ですが、そのスキルが社外で通用しなければ社員の明るい将来が約束できません。
個々の強みや特性、本人の意向も踏まえ、その人に合った領域で社外でも通用する力をつけてもらいましょう。
社員のキャリアを会社と社員で共に考える
転職が当たり前の時代では、担当業務が本人の将来キャリアに繋がっていることが問われます。
キャリアを社員任せにするのではなく、会社も社員と一緒になって考えていく必要があります。
では、社員に望ましいキャリアを、本人任せではなく、会社として共に考えていくために何をすれば良いでしょうか。
キャリア 面談の実施
社員と四半期または半期に1回程度、今の仕事の満足度等について話し合いましょう。
その時に、「仕事が楽しいか、人間関係は大丈夫か、残業は適切か」といった話だけでなく、「今の仕事はあなたの将来キャリアに向けて蓄積になっていますか?」というテーマも加えてください。
社員によっては今までキャリアなんて考えたことない人もいるでしょう。
敢えてそのテーマを入れることにより、
- 自分はどんな仕事で力をつけていきたいか、
- どの領域で専門性・能力を高めていきたいか?
これらを真剣に考えてもらいます。
面談を実施するのは上司が望ましいですが、人事部門で実施してもいいでしょう。
キャリア についての対話
キャリア面談で掘り下げて話し合うべきテーマは以下の内容です。
- 将来的にどのようなスキルや経験を積んでいきたいかという本人の希望
- それに向けて今何が足りないか?
- どんな改善や能力習得が必要か?
本人の振り返りと面談相手からの意見やアドバイスを加味しながら、今後に向けた方向性が見えてくれば「良い面談」と言えます。
また話を進めていくと、本人の将来的な希望と今の仕事のズレが発覚する場合があります。
その場合は、次の観点でよく話をしてみましょう。
※1回で話し切れなず、時々時間をとって、継続的な擦り合せでも構いません。
本人が希望する仕事のスキルを今の段階で備えているとは限りません。
会社としても「では明日から希望部署に異動OKです」とは言えないので、お互いの擦り合せが必要です。
業績フィードバック
あなたの会社でも定期的に人事評価を行っていると思います。
その評価フィードバックはしっかり行ってください。
・今の仕事でどれだけ成果を出したか
・いいところや強みは何か
・どのような課題があるか
・本人に対する改善要望は何か
などをしっかり伝える場をもってください。
今の仕事で成果を上げることは、キャリアを考えることと対だからです。
どんな仕事であっても楽しいことばかりではないので、目の前の仕事をしっかり取り組めない人は、異動しても転職しても信頼されません。
今の仕事に意欲的でしっかり成果を出している人には、どんどん次のステップ、もっと難易度の高い仕事の機会を与えましょう。
その際、会社が一方的に役割を与えるのではなく、本人のキャリア希望に沿った役割を与えると、より一層積極的に励んでくれるはずです。
キャリア 面談はベテラン社員とも必ず行う
若い社員とのキャリア面談だけ実施し、ベテラン社員には行わないケースがありますが、その方法は適切とは言えません。
会社として全員が自分のキャリアを考え、自分なりに努力して新しいスキルや経験を獲得することが目的なので、例外があると形式だけやっているように見えてしまいます。
そもそもベテラン社員は若手以上にキャリアを考える習慣を元々持っていません。
漫然と今の仕事を続けているだけでは将来のキャリアを社内で描けるとは限りません。お荷物になってしまうリスクもあります。
ベテランなりに自分の強み特徴を生かしてどのような仕事で価値を出していくか考えてもらう機会にしましょう。
キャリア 面談は記録する
キャリア面談は必ず記録しましょう。
簡易フォーマットを作成し、そこに面談者が記録し、人事部門等で保管しておいてください。
単に話をするだけの面談だと、雑談で終わってしまったり、社員が伝えた声が握りつぶされて会社に届かない場合があるので、必ず記録に残して双方に確認してもらいます。
開かれたキャリアへ
キャリアは1つの会社内で閉じるものではなく、外部と有機的につながりながら形成していくものです。
多くの社員は社内のつながりしかなく外に目が向いていませんが、それを拡げてあげましょう。
手近なところでは本を読む、セミナー等に参加する。
同業界の集まりであったり、SNSを通じたネットワーク構築なども有効です。
副業で他の会社で働いてみるのもありです。
視野を広げることが結果として今の会社の仕事にプラスになるので、箱入り娘にさせず、どんどん旅をさせましょう。
退職後も関係はつづく
転職が当たり前になると、辞めた人が戻ってくることも増えます。
かつては「退職は脱藩」みたいな感覚もありましたが、今の時代は一度勤めた社員とは長く付き合い、お互いのメリットを提供し合うのが賢明です。
辞めた社員の会社と協業したり、辞めた社員の会社から発注をもらったり、独立した社員の立上げに協力したり、そういう相互協力が新たな可能性をもたらしてくれます。
在籍時に頑張ってくれた社員であれば出戻りも大歓迎しましょう。
辞めた社員に業務委託で仕事をお願いするのも良いですね。
一度でも自社を理解してくれた社員はあなたの会社にとって貴重な存在なので、長く大事に付き合っていきましょう。
まとめ
自分のキャリアを会社に委ねる時代は終わりました。
会社も終身雇用を保証することができません。
お互いが縛り合うのではなく自律した存在として良い関係を作り、長きに亘って協力し合うのが今後の会社と個人の関係になるのではないでしょうか。
そのためには、在籍する社員のキャリアを共に考える仕組みが有効です。
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