中小企業にこそ「 経営企画部 」を。具体的な仕事内容と計画の進め方

2021.06.24

「 経営企画部 」「 経営企画室 」といった部署は多くの大手企業や上場企業で設置されていますが、

中小企業では部署が存在しないだけでなく、経営企画の担当者すらいない場合がほとんどです。

「中小企業に経営企画部は不要」という考え方が多いと思いますが、本当にそうでしょうか?

今週のブログでは、中小企業における経営企画の役割の重要性についてお伝えします。

 

経営企画部の最も重要な役割 

 
経営企画部の最も重要な役割は何でしょうか?

それは、重要度×緊急度のマトリックスのうち、重要度が高く緊急度は低い領域をカバーすることです。

下図で言うとのBの領域です。

経営企画部

企業活動の大半は、緊急度の高いAないしCの領域に時間をとられています。

Aは当然力を入れる領域ですが、実際の現場はCにかなりの時間を投入しているのではないでしょうか。

 
Cの典型的な業務はこのようなものです。
 

  • 期限の迫った事務処理作業
  • 発生したミスの対応
  • 生産トラブルの解消
  • 上司が思いつきで指示した業務の対応
  • 明日の会議のための資料作成

 
やらないと次に進めないので緊急度は高いですが、本来は最小限の業務に絞るか、業務自体を発生させないようにすべきものです。

 

一方で最もおざなりになるのがB領域です。

非常に重要度が高いにもかかわらず、緊急性に欠けるため誰も手をつけていない仕事です。

成長する企業とそうでない企業はB領域の実行度合いで大きく差がついています。

このB領域は、営業部・製造部・開発部といったライン業務を担っている部署は余裕がなくてなかなか対応できません。
経理部、人事総務部といった部署も、ルーティン業務の対応でいっぱいいっぱいで、B領域には手がつけられません。

この状況下において、B領域を担うのが経営企画部です。

経営企画部は、会社で手がつけられていない「重要だが緊急度の高くない問題」を推進する起爆剤です。

会社全体が今の目の前の仕事だけに翻弄され、次の一手が打てない事態を防ぐための存在なのです。

 

経営企画部の仕事とは?

 
経営企画部が担うべきB領域の業務には例えば次のようなものがあります。

 

①     新規事業、M&A、海外進出などによる新たな事業領域へのチャレンジ

②     業務提携など外部との連携を通じた経営力強化

③     会社全体の生産性の抜本的な改善(ERP導入など含む)

④     企業理念、ビジョンづくり

⑤     企業文化、組織風土の改善

⑥     人事制度の見直し、人材管理システムの導入

⑦     営業各支店の生産性向上、オペレーションの共通化

⑧     新入社員(営業職)のオンライントレーニングツールの開発

などなど

 

いずれも重要な業務ですが緊急性に欠けるため、「やらなきゃやらなきゃ」と言っているうちに、時間が過ぎ去ってしまう類のものです。

⑦や⑧は「営業部の仕事でしょ」を思われるかもしれませんが、営業部の人員は日々の売上を追うことに精一杯で、⑦や⑧を営業部内で実行できている中小企業はあまり見たことがありません。

⑤や⑥は「人事部の仕事」というかもしれませんが、こちらも同様です。

 

経営企画部は、このような「重要度が高く、しかも改善すれば会社にとって大きなインパクトのある仕事」を担います。

社長が経営企画的機能を兼務している会社もありますが、上記のような業務には相応の時間と手間がかかるので、社長だけが動いて何とかなるものではありません。

社長と経営企画がしっかりタッグを組んで本腰を入れて、初めて動かせるものです。

 

教科書的な「経営企画の役割」は当てにならない

 
本に書かれているような「経営企画の役割」は、中小企業の現場ではあまり当てはまりません。

一般的に言われている経営企画の仕事は、このようなものです。
 

  • 中期経営計画、年度計画の策定
  • 取締役会、経営会議、株主総会などの資料作成・進行
  • 経営管理(予算実績管理、分析)
  • 経営戦略の立案、提言
  • 新規事業の創出

 
上から4つは大手企業では専門部署がやるべき仕事ですが、中小企業ではそこまでリソースを割かなくても何とかなります。

これらの業務のためだけに経営企画担当を置くというのは、中小企業の社長にはピンと来ないでしょう。

「中小企業の経営企画」では、教科書にあるような仕事にとらわれる必要はありません。

今この瞬間、会社にとって最も重要な業務を任せましょう。

 

経営企画担当者を誰にまかせるべきか

 
経営企画担当者は社内から登用するか社外から採用します。
 

社内登用の場合

 
会社全体のことがわかり、論理的思考力やクリティカルシンキングが強い人、かつ他者を巻き込んで全社的にプロジェクト推進できる人材が適任です。

既に幹部の地位にあるか、もしくは将来的な幹部として期待する人材を抜擢しましょう。

 

外部から採用する場合

 
大手企業の経営企画経験者は適応が難しいかもしれません。

先に述べたように、大手企業と中小企業では経営企画の業務内容が異なるからです。

経営企画の仕事はジャンルを問わず様々な課題がふってくるので、未経験の仕事にも十分に対応できる知的体力、チャレンジ精神、幅広い分野の業務経験が必要です。

社長と対等に議論しながら進めていく胆力、実行力、スピードなども問われます。

よって、中堅企業ないし中小企業で、社長と共に全社課題の解決を進めてきた人材が適任でしょう。

 

業務委託なども可

 
経営企画の業務量がまだ多くない場合、正社員採用ではない方法も考えられます。

例えば、顧問として週1~2日程度で活動してもらう形でも良いでしょう。

取り組むテーマを限定し、そのテーマについて社内メンバーと共にプロジェクトを作り、責任者として推進してもらいます。

今は様々な働き方の人材が増えているので、手始めに顧問として経営企画を置いてみるのも良い方法です。

 

まとめ

 
会社の競争力は「重要だけで緊急でない」領域の課題にどこまで対応できるかにあるといっても過言ではありません。

その領域を強力に推進する役割こそ経営企画です。

経営企画部や経営企画室という組織は設置しないとしても、その領域を担当する人材は必要です。

 「中小企業に経営企画は不要」という先入観を捨て、これまで手をつけられなかった「重要だが緊急でない」課題に強力に取り組んでいきましょう。

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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