経営幹部クラスの人材を採用するときは誰しも慎重になるものです。
面接で「この人、とてもいい!」と思って入社してもらったのに、フタをあけてみたら全然仕事ができない・・・企業文化に合わない・・・なんてことがありがちです。
面接でじっくり見極めたはずなのに、なぜこういうことが起きてしまうのでしょうか?
この記事では、そういったミスマッチを避けるための質問と、面接で心がけるべきコツをお伝えします。
目次
経営幹部候補の面接で不要なこと&やるべきこと
不要なこと
面接の時に「入社したら当社でどのようなことができそうですか?」とか「当社の〇〇の企業文化に適応できると思いますか?」といった質問をしてしまう方がいます。
尋ねても構いませんが、あまりそういった未来の話に時間を使いすぎない方が賢明です。
未来のことは実際にやってみないと分からないし、答える側も会社の中を殆ど知らずに答えるので限界があるからです。
例えば、大手企業で仕組みの整った環境で仕事をしてきた人に、
「当社は設立3年のベンチャーで中がぐちゃぐちゃですが、そういう環境でも頑張れますか?」
と聞くと、どういう答えが返ってくるでしょうか?
「ベンチャーに入る以上、覚悟して頑張ります」と答えるしかありませんよね。
しかし、実際に適応できるかどうかは別問題です。
やるべきこと
未来への心構えを聞くより、大事なのは仕事の実績をしっかり聞くことです。
「大企業に属しながら買収した子会社の改善をやった」
「ベンチャー企業とのプロジェクトを深く一緒にやった」
「整備されていない混沌とした環境を実際に経験した」
とにかくこのような実績を引き出していきましょう。
人は過去に経験したことは高い確率で再現できますが、経験していないことで成果を出せる人はそう多くありません。
「経営幹部に相応わしいか」を見極めるためには経験を聞くのが一番です。
具体的に経験を聞き出す質問
面接で実際の経験を正しく深く聞き出すためには、その人が当時働いていた光景があたかも目に浮かぶくらいまで会話を進めましょう。
例えば小売り企業で「通販事業を中心メンバーとして立ち上げました」という方。
立ち上げは一人でできるわけではないので、色んな人が関わっているはずです。
そこで面接では次のような質問が湧いてきます。
ぜひこれらを参考にして質問を作ってみてください。
- いつからいつまで関わったか
プロジェクトの構想段階から立上げまでは数年を要しているはずなので、自身の具体的な関わりを確認します。
- プロジェクトはどのようなメンバー構成(人数、年齢、役割分担)で、あなたの役割は何か。そして、プロジェクトの進展と共にその役割はどのように変わったか?
- 直接の上司と部下は誰か。上司と部下とはどのように関わっていたか?
- 外部の会社が関わったのであれば、その会社には何を発注し、どういう関係だったか?
会社によっては企画から立上げまで脳みそ部分の大半を外注している場合もあるので、こちらも自身の具体的な関わりを確認します。
- 立上げ直前期は具体的にどのような仕事だったか
1週間の仕事のイメージを聞きます。
- プロジェクトでぶつかった壁は何か。どのように乗り越え、そこにあなたはどう関わったか
- 立上げ以降はどのような業務を担当したか?
以上のような質問でどんどん掘り下げていきましょう。
経験を聞き出すためのコツ
さて、以上のように例を並べてみましたが、このように掘り下げて聞くのにもコツが必要です。
この項では具体的な方法を見ていきましょう。
遠慮しないで聞く
経営幹部人材の面接はお互いの相性を腹を割って話し合う場です。
どちらが偉いとかではありません。
フランクな雰囲気の中で相手のことをしっかり理解するほど、入社後に「あれっ?」ということがなくなります。
面接する側が偉そうにするのは論外ですが、遠慮する必要もありません。
例えばファンドが出資した企業の再生を経験された社長の方の面接。
相手が社長だからといって遠慮せず、社長にも色々な役割や立場があるので、次のような内容を確認していきます。
- 就任当時の会社の課題は何でしたか?
- 役員構成、その下の部門責任者などはどのようなメンバー構成で、それぞれどのような役割を担っていましたか?
- 社長として特に時間を使ったのはどのような点ですか?
コスト削減、不採算事業からの撤退、経営管理、商品開発、トップ営業、マーケティング、組織風土など色々な可能性があります。
- 上記を進める上ではどのような人員体制で、具体的にどんな取り組みを行いましたか?
- ファンドと会社の板挟みで苦労したことはありますか?それはどんなことですか?
- 日常のコミュニケーション相手は幹部中心ですか?それとも社員との接点が多くありましたか?
このように面接の質問を深める中でこのようなことが見えてきます。
- 統率型の社長か社員を盛り立てていくタイプか
- 営業や商品に関心が高いか
- 会社の仕組みや管理に関心が強いか
- 大胆に変革するタイプか、過去を重んじるタイプか
こういったことはフランクな会話の中でしか見えてきませんので、ぜひそういった雰囲気を心がけてください。
なるべく今の仕事について聞く
過去に複数の会社で就業経験がある人に対して、古い順に1社1社似たような質問をしていく面接が多く見られます。
古い仕事はどうしても本人の記憶が曖昧になるので、あまり具体的に聞いても参考になりません。それよりも現在進行中の仕事にこそ、その人の過去からの経験や蓄積が最大限に生きています。
コツは直近2社程度の経験を深く掘り下げて聞きつつ、その仕事に過去の経験がどのように生きているかを聞いていくのが有効です。
その人なりの積み重ねや価値観が見えてきます。
候補者を尊重した会話を心がける
新卒採用の面接などは、仕事経験がなく価値観も定まっていない人を多数の母集団の中から見極めなければなりません。
そのため効率的に進めるテクニックや手法などもあります。
しかし、経営幹部クラスの面接は進め方が違います。
例えば「なぜ当社を志望しているんですか?」とお決まりの質問は失礼にあたります。
外部から入手できる情報しか知らない段階で、「その会社で働きたい」と思えるほど単純な相手ではありません。
向こうは向こうで、自分の人生をかけるにふさわしい会社かを真剣に見極めにきている場ですから。
そういう意味では、質問があまり出てこない人は不安ですね。
真剣に会社を理解して自身が活躍できる会社か知ろうと思ったら、面接官に聞きたいことが山ほどあって当然です。
「一緒に焼肉を食べに行くと人格がよく分かる」という手法も否定はしません。
しかし幹部人材であれば、お酒が入らずとも、会議室の場で相手と打ち解けて本音を出せる姿勢が必要ではないでしょうか。
あくまで面接の場で本音の交流があった上でのお酒です。
経営幹部の面接のコツ まとめ
自身の仕事の実績を、その光景が目に浮かぶくらいまで掘り下げて聞く。
そのためには
- フランクに打ち解けた雰囲気で行う
- とくに直近の仕事について尋ねる
- お互いを尊重した会話を心がける
経営幹部人材を面接で見極めるのは簡単ではありません。
勇気と決断力が求められます。
そして、少しでもその確率を高め、会社も転職者もお互いにハッピーになれることが何よりです。
今回の記事を参考にして、ミスマッチのない採用ができれば幸いです。
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