中小企業の人材育成 |マネジメント層はY理論を見直そう

2021.07.01

「中小企業にはいい人材がいない」というのは本当でしょうか?

新卒採用市場では大手企業の人気が高く、優秀な学生は大手企業に集まる傾向があります。

転職市場においても、知名度の低い中小企業がいい人材を確保するのは簡単ではありません。

つまり、人材採用の入り口で中小企業が不利な立場にあるのは事実です。

しかしそれはあくまで入り口の議論です。

例え入り口で劣っていたとしても、入社した後にどのような力をつけ、能力を発揮させるかは別問題です。

今週のブログでは、中小企業の人材育成は伸びシロが大いにあるということについて、「X理論・Y理論」の考え方とともにお伝えします。

 

私が初めて中小企業に勤めた時に感じた「驚き」

 
私は新卒で大手製造業に入社し4年半ほど働きました。

職場には非常に優秀で人間的にも魅力ある上司や先輩方がいて、たくさんのことを教わりました。

その後コンサルティング会社で3年働いた後、社員数60名強の中小企業に転職しました。

新卒で入った大手製造業の社員と比べたら、学歴は雲泥の差です。

さらに、一癖二癖ある人が多く、人としてのバランスもいいとは言えません。
毎日大遅刻してきたり、取引先の女性を手当たり次第に口説いたり、コミュニケーションが極端に苦手だったり・・・

 

ところが、仕事をさせれば、皆、自分の得意領域において圧倒的な力を出します。

全方位ではありませんが、一点突破の強みが光っていました。

社員のうち何名かは、抜群にできる優秀人材もいました。

「こんなにできる人材が小さな会社にいるのか!?」と当時驚いたものです。

自分の先入観と思い込みを恥ずかしくも思いました。

 

隠れた才能がいる中小企業

中小企業の人材育成

 
その後、M&A、業務提携、コンサルティングなどを通じて多くの中小企業と出会ってきましたが、例外なく、どの会社にもキラリと光る抜群に優秀な人材がいました。

(経営者がその人材の価値に気づいていないケースもありますが・・)

先日、ある会社の社長が仰っていました。

「今まで色んな有名大学出身者や有名企業出身者を採用してきたけど、当社で本当に優秀で歯を食いしばってやり抜いた人材は高卒か、誰も知らないような大学を出た人達です」

別の会社の社長はこんな事を仰っていました。

「当社の工場の現場社員は非常に優秀。家庭の事情など色々な要因で大学に行けなかったり、高校中退している者もいるが、実際の能力や心意気は素晴らしい。非常に伸びしろのある人達だ」

 

このように、中小企業には磨けば光る人材が必ずいるものです。

 

人間の動機づけに関わる「マクレガーのX理論とY理論」 

 
アメリカの心理学者ダグラス・マクレガー氏によって提唱された「X理論・Y理論」という人間の動機づけに関わる理論があります。
 

 
上図にあるように、X理論はどちらかという性悪説で、人は命令や強制をしないと怠けるという考え方。
Y理論は人は本来自発的に行動するものであるという考え方です。

従ってX理論では、厳しく強制的にやらせるマネジメント方式をとります。

細かい指示を出し、決まったやり方を確実に遂行するよう、そして怠けることがないよう、厳しく管理します。

短期的に社員が効率良い働きをするかもしれませんが、自分で考えることを放棄し、常に受け身の仕事スタイルが身につき、長期的な成長は見込めなくなるでしょう。

 

Y理論の場合は、人間が本来もっている能動性を引き出すマネジメント方式をとります。

本人に自ら仕事の目標を考えさせ、その目標に向けて主体的にPDCAを回せるよう導いていきます。

当初は思った通り動いてくれないかもしれませんが、自ら目標を立てて主体的に取り組んでいくうちに考える力が身に着き、行動力が養われ、やがて大きな成果につながっていくことでしょう。
 

 
これまで多くの中小企業では、X理論に近いやり方、決まったことを確実にこなすためのマネジメントスタイルをとってきました。

今後、社員1人1人が現場の変化を感じ取り、自分なりに考えて動けるようになるには、Y理論の考え方が求められます。

社員育成はマネジメントが立脚するスタンスがとても大切です。

会社として、またそれぞれの管理職が、Y理論の考え方を共有し意識していきましょう。

そうすることで、将来的な人材の厚みが変わってくるはずです。
 

 

 
余談になりますが、小さな子どもは好奇心の塊で、自発的に色々なことに挑戦していきます。

危険を省みず、家の中の高いところにもどんどん登っていきますよね。

幼稚園の園庭を見ていると、彼らは誰に指示されるでもなく、それはもう目まぐるしく動き回ります。

そんな子ども達が大人に育っていく過程で、親や先生に影響され、時に押さえつけられ、常識や世間体を学び、集団に自分を合わせるうち、チャレンジ精神や主体性を失っていくのではないでしょうか。

会社はこうして育った大人(若者)を育成する役割をもちます。

人は本来能動的に行動する力、向上心をもっている生き物であると信じて、その本能を引き出すマネジメントが求められます。

 
 

中小企業の方が人が育ちやすい

 
実は中小企業の職場環境は人材育成に向いています。

大企業の場合、仕事が細分化されてしまうため、その仕事は一部のパーツだけを担うものになりがちです。

仕事の全体像を見ることができません。

下働きの時代が長く続くため、若くして大きな責任を担う可能性も高くありません。

しかし、中小企業にはこのようなメリットがあります。
 

  • 専門部署が限られ色々な仕事を横断的に行っているため、社員は会社全体を意識した仕事ができる
  • 人が限られているので、若手社員、中堅社員にもどんどん責任ある仕事を任せる。若くして事業責任者や子会社社長になれるチャンスもある
  • 中小企業はスピードが命なので、様々な仕事をスピーディーかつ適切に対応する努力を通じて、判断力や決断力が身に着く
  • 理屈より行動重視なので、ある程度考えたら、どんどん行動に移し、やりながら修正していくスタイルが身に着く
  • 社長と近い距離感で仕事をするので、経営者視点を身近で学ぶことができる

 
上記のスキルはビジネスパーソンの成長において重要なことばかりです。

中小企業では、大企業のような体系だった研修やロールモデルとなる先輩は望めませんが、それでも大企業を凌駕する育成に適した環境があります。

 

「 中小企業の人材育成 」まとめ

 
「中小企業には人材がいない」ということはありません。

優秀な人材が必ずいますし、他にも磨けば伸びる人材がたくさんいます。

仮に今は能力の低い社員であったとしても、向上心がゼロという人を私は見たことがありません。

今までできなかったことができるようになり、少しずつ能力が高まっていくのを、誰が嫌がるでしょうか。

 
積極性に違いはあれど、吸収力に差はあれど、Y理論にもとづき本人の変化を信じて指導していけば、人は必ず変化していきます。

「人は本来主体的に行動する存在である」と信じて、粘り強く諦めることなく人材育成に取り組んでいきましょう。

そうすれば、あなたの会社はやがて他社がうらやむ人材豊富な会社に成長するでしょう。

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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