自ら考えない人、 主体性のない人 ・・・そう感じる社員が周りにいませんか?
目の前の作業をこなすばかりで、そこに生じる問題を発見し、問題解決行動をとれない人が多くいます。
そのような社員ばかりの会社は、いくら社長が旗を振っても前に進むことができません。
この問題の本質は、本人の姿勢や能力よりも会社としての業務の与え方にあります。
今週のブログは、社員が自分の仕事に主体的に取り組むよう促す業務の与え方についてお伝えします。
目次
タスクベースで仕事を与えると作業になる(事例)
半年前、営業企画部に「データ集計や受発注処理を担当する社員」としてAさんが入社しました。
入社時にAさんの上司は、Aさんの役割として下記の内容を伝えました。
■ 毎月末、営業各支店のデータ提出を依頼
■ 各支店から集まってくる売上、商品明細、価格などの情報を営業管理システムに入力
■ 店舗別の売上ランキング、月次売上推移グラフ、商品別売上グラフを作成
■ 毎日送られてくる注文書の内容確認。データを営業管理システムに入力
■ 納品書を確認の上で請求書を発行
よくある営業事務の仕事ですよね。
さて、半年経ちAさんは一通り仕事を覚えソツなくこなしてくれているものの、上司はいくつか不満があります。
具体的にはこのような不満です。
① 毎月のデータ提出が遅い支店があるせいで、営業企画としての集計が遅れる。
→Aさんに「もう少し早くできないか?」と聞くと、「〇〇支店は毎月提出が遅くて、言っても直りません」との答え。
②商品別売上の「その他」の数字が大きすぎる。最近新発売した商品の売上がぐんぐん伸びているが、「その他」の区分に集計されてしまっているため、新商品の動きがつかみづらい。
→Aさんは元々のフォーマット通り作成するだけで、自分から直そうとはしない。
③支店から提出されるデータに毎回間違いが多く、その確認やりとりに時間がかかっている。
→間違いが起きる原因と対策を考えて欲しいのだが、Aさんと各支店は同じことを繰り返している。
上司の不満をまとめると、Aさんは仕事の深堀りが足りない、自ら問題解決に動かないということでした。
Aさんは入社時に上司から言われた役割はパーフェクトにこなしています。
それなのに上司が不満に感じるのはなぜでしょうか?
それは仕事を箇条書きのタスクとして与えただけで、仕事のゴール、責任を伝えていないからです。
主体性のない人 には「ゴールと責任」を明示して仕事を与える
Aさんの仕事にも、本来は目的(ゴール)があるはずです。
お金をもらって仕事しているということは、何らかの責任も伴います。
その視点で捉え直すと、Aさんの役割は次のように定義し直すことができます。
Aさんの本来の目的(ゴール)
【スピード】
決められた期限までに営業データを取り揃え、迅速な経営判断を支えること【わかりやすさ】
営業の進捗状況がわかりやすく理解できる資料を作成し、関係者が適切に判断できる材料を提供すること【継続的な効率化】
営業データ集計業務の効率化/省力化を常に進め、会社全体のコストを削減する
上記のように役割を定義すると、単なるタスクの羅列ではなく、仕事のゴールと責任が明確になります。
Aさんが自分の仕事を上記のように認識したならば、自ら次のような行動ができるでしょう。
- 提出が遅い支店とその原因を話し合い、期限までに提出できる方法に改善します。
- 新商品の売上が「その他」区分に混ざっていて分かりづらければ、商品別売上グラフを自ら変更します。
- 支店の提出するデータに間違いがあると業務効率が落ちるので、最初から正しいデータで提出してくるよう支店と間違いの原因について話し合い改善策を講じます。
自分の仕事のゴールと責任を認識しているからこそ、生じる問題を自分事として捉え、改善できるよう知恵を絞り対策をうつのです。
認識の壁
もしAさんの能力が高ければ、いちいちゴールと責任を伝えなくても上司の期待に沿った仕事をするのではないか?と思う方もいるでしょう。
確かにその通りです。
しかしそれでは、Aさんの属人的な能力に依存するしかなくなります。
仮にAさんの能力が高くないとしても、Aさんが自分の仕事のゴールと責任を常に意識していれば、思考や向き合う姿勢が必ず変わっていきます。
それを毎日、毎年、ずっと続けていれば、Aさんの能力は必ずや相当なレベルまで上がっていくことでしょう。
マネジメント変革において「5つの壁」というものがあります。
5つの壁の一番最初に来るのが「認識」です。
少なくとも「認識」がなければ何も始まりません。
自分の仕事のゴールと責任を認識させることは主体性発揮の第一歩です。
「 責任のない仕事 」は一つもない
どんな仕事であっても、箇条書きのタスクベースではなく、「ゴールと責任」でその役割を表現することができます。
社長秘書、採用担当、経理担当のような仕事ももちろん責任を明文化できます。
「社長秘書」:社長の時間配分を最適化し、社長の対外ブランドを高める責任
「採用担当」:会社の発展に最適な人材を必要な時期に獲得する責任
「経理担当」:正確な数字、経営判断に使える数字をスピーディーに提供する責任
「タスク」vs「ゴールと責任」の事例
ビジネスホテルの会社でフロントスタッフの採用を担当しているBさんの事例です。
Bさんの仕事をタスクベースで捉えればこのような内容になります。
■ 求人票作成、求人媒体やハローワークへの掲載
■ 応募者の書類選考
■ 応募者への連絡対応、面接の設定
■ 面接官のサポート
■ 合格者フォロー
実際に採用をスタートしたところ、応募者は結構多いのに、応募者に連絡すると返信がないことが多くありました。
結果として面接を組める人数が少なく、想定の人数がなかなか採用できません。
もしBさんの役割が「応募者対応」というタスクのみだとしたら、これでも十分です。
ちゃんと対応はしていますから。
しかしBさんが「定めた時期までに人材を必ず獲得すること」に責任を負っていたら、行動は変わります。
なぜ採用が上手くいかないか、必死に考え、原因を探り当てにいくでしょう。
実際に応募者からの返信がない理由を色々調べたところ、面接日程を決めるまでのスピードが他社に比べて圧倒的に遅いことがわかりました。
待たせているうちに他社の内定が出てしまい、そちらに取られていたのです。
原因を突き止めたBさんは、とにかく採用プロセスのスピードを上げるため3つの改善を行いました。
①書類選考
部長に依頼していたのをやめ、Bさんともう1人の採用担当者で応募即日に行う
②面接日程調整
応募が来てから面接官と日程調整をするのではなく、最初から面接官に面接可能な日程を空けておいてもらい、その枠にどんどん面接を入れていく
③面接官の人数を増やす
この改善を通じて、採用数が格段に改善しました。
仕事の責任について ピーター・ドラッカーの言葉
ピータードラッカーが仕事の成功における責任の大切さについて述べています。
「成功の鍵は責任である。自らに責任を持たせることである。あらゆることがそこから始まる。大事なことは、地位ではなく責任である。責任ある存在になるということは、真剣に仕事に取り組むということであり、成長の必要性を認識するということである。」
(中略)
「責任ある所在になるということは、自らの総力を発揮する決心をすることである。【違いを生み出すために、何を学び、何をなすべきか】を問う。」
まとめ
仕事を作業として与えると、作業の見返りに報酬をもらっているという認識になります。
この認識はホワイトカラーの仕事においては大きな誤解です。
会社にとって損失であり、本人にとっても成長の放棄につながり、未来が描けません。
もちろん相手の能力やキャパシティを見ながらではありますが、仕事はできるだけ以下のことを意識して役割を与えるのが望ましいです。
クラウドの普及、DX推進などにより、頭を使わず定型業務をこなす仕事は世の中からどんどん減っていきます。
経営者はそんな仕事を減らしながら、社員の育成を並行していかなければなりません。
「作業をするのが仕事」と思っている人が、ゴールと責任を意識し、自ら問題を発見し、自ら問題解決に動く人材になってもらうよう、手を打つ時ではないでしょうか。
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