「 最高人事責任者 」は超・稀少な存在|人事部長の採用問題(前編)

2022.04.01

あなたの会社の 最高人事責任者 は、長く安定的に会社に貢献されているでしょうか?

多くの経営者は、人事のトップへの期待に比して実際の役回りに物足りなさを感じている傾向があります。

理由はこのような状況によるものです。
 

  • 期待する業務範囲に対して、やっている仕事の役割が狭い
  • 採用した人事部長の仕事ぶりが期待値に届いていない
  • なかなか定着せず入れ替わりが頻繁にある
  • 新たに人事部長を採用しようと思っても良い人材が見つからない
     

優秀な人事部長を求めて、数年単位で人材を探し続けている会社もあります。

やっと採用できたとしても、社風との相性、経営者との相性などが原因で短期間で離職するケースも多々あります。

それほど人事部長のポジションは経営陣からの期待値が高く、期待に応えるための業務難易度も高くなっています。

今週のブログでは「人事部長の採用問題 前編」として、多くの経営者が悩むこの問題のそもそもの原因と、どのように向き合ったらいいか?というテーマでお伝えします。

 

最高人事責任者 に求められる能力

 
今の時代、人事責任者に期待される役割が大きく高まっており、仕事の難易度も格段に上昇しています。

そう言われてもあまりピンとこないかもしれませんので、こちらの表をご覧ください。

 

最高人事責任者

 
最高人事責任者に求められる能力・資質が非常に多岐にわたっていることがわかります。

同じバックオフィスの財務経理や法務は比較的専門分野に特化したタイプですが、人事はそれだけではなく、営業力、交渉力やITリテラシー、心理学の知識など、幅広い知見とマネジメント手腕が求められます。

これだけマルチな能力が求められるので、人事のトップを担える人材が少ない理由がお分かりになると思います。

 

最高人事責任者 の仕事

 
では、上記の能力が人事のどのような仕事で求められるのかを具体的に見てみましょう。
 


 

専門性から営業力、テクノロジー理解まで多様な能力が必要とされる仕事が多く存在し、その内容も非常に多岐にわたっていることが分かります。

これらの仕事をすべて100点でこなせる人はいないと言っても良いでしょう。
 

  • 労務管理の経験と知識は十分だけど、戦略性や採用に求められるような営業力達成欲に欠ける人
     
  • 調整力対人関係能力営業力は抜群だけど、テクノロジーに弱い人
     
  • 人事の幅広い業務経験があり、テクノロジーにも明るく、戦略性企画力も秀でた人材でありながら、社長と価値観が合わずに辞めてしまう人

 

このように、何かが欠けていることはごくごく当たり前のことです。

経営者が望むパーフェクトな「最高人事責任者」になかなか巡り合えない理由がお分かりになると思います。

 

人事の仕事の複雑化、高度化

 
なぜ人事責任者の仕事はここまで難しいものになったのでしょうか?

それはここ10年ほどの雇用市場や働き方の変化に起因しています。

 

採用市場に10年で起きた変化

 

有効求人倍率の上昇

リーマンショックで0.5倍を切った有効求人倍率が、コロナ前は1.6倍まで上昇。少子高齢化、団塊世代の退職などにより人手不足が加速。人材採用が格段に難しくなりました。
 
 

有効求人倍率の推移

 

採用手段の多様化

求人広告だけでなく、人材紹介、ダイレクトリクルーティング、ソーシャル採用、オウンドメディア強化、indeedなど人材専門の検索エンジン対応など、さまざまな手段が生まれ、キャッチアップが大変になりました。

 

働き方の変化 

副業解禁、リモートワークなど働く環境が大きく変化。働き手の意識も会社に依存しない考え方が変わってきたので、働く環境面など考えることが増えました。

 

社会の変化 

働き方改革に伴う残業管理の厳格化、女性管理職強化、男性の育休取得推進、LGBT対応、ストレスチェックなど、人事が対応すべき社会のテーマが増加しました。

 

人事評価制度の変化

2000年頃までは多くの会社が年功序列型の職能等級制度にもとづく人事評価を行っていましたが、会社毎の考えに合わせた制度に多様化しました。

 

ITサービスの出現

人材管理のためのクラウドツールや社員の状態を継続管理するツールなどさまざまなITサービスが出現。ITの活用が人事の高度化、効率化に直結するようになりました。

 

採用市場に起きた変化

 

このような大きな変化に伴い、人事の仕事の難易度が上がり、経営における重要性も高まりました。
今や経営の根幹を左右するポジションになったと言えます。

見方を変えると、10年前以前(2010年以前)の人事に関わっていた人達が経験していない業務、当時考える必要のなかった業務が数多く発生したとも言えます。

仮に2010年以降人事に携わっていたとしても、この変化に向き合いながら、経営に近い立場で責任をもって変革を推進してきた人は多くありません。

それが(今の時代に合った)優秀な「最高人事責任者」がマーケットに滅多にいない理由です。

 

まとめ

 
経営者が求めるレベルの人事責任者は滅多に巡り合えない人材です。

探しても探しても出会えないこともあるでしょう。

それはあなたの会社の運が悪いからではなく、そもそも求める人材がマーケットに少ないのです。

 

あなたの会社が人事責任者に求める役割は何か? 

その役割を遂行するには誰がどのような組織体制で進めていくのがよいか?

まずはこれらを考えてみてください。

後編では、人事部長の採用問題を現実的にどのようにクリアするかお伝えします。

 

 

後編はこちら。
 

https://tsudoi-katsuyaku.com/chief-human-resources-officer-part-two

 

筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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