【事例つき】 優秀な人材 を逃さない!転職者とWin-Winを目指す内定出しの秘策

2022.03.18

 
優秀な人材 の採用はどの企業も悩みの種です。

「採用」が重要な経営課題のトップ3に入る会社も多いのではないでしょうか?
 

採用がどうやったら上手くいくかについては、ターゲット設定から採用手法、選考プロセス設計までありとあらゆる議論がなされています。

しかし、実はその議論に滅多に出てこない盲点、というか秘策があります。
 

その秘策とは、「求人票通りに採用しないこと」

言い方を変えると、応募してきた人が求人票の条件に当てはまらないとしても、その人が優秀な人材ならば、何が何でも採用にこぎつけましょう!ということです。
 

知名度のない中小企業に優秀な人材が受けにくることは多くありません。

よって、せっかく受けに来てくれた素晴らしい人材に合わせて、カメレオンのように柔軟な対応をすることが重要です。

今回はその具体的なやり方について見ていきましょう。

 

優秀な人材 を採用する秘策とは

優秀な人材

 
秘策はシンプルです。

良い人材が応募してきたら、できるだけ相手が望む働き方を提供することです。
 

応募者に興味をもってもらうには、何らかの魅力を感じてもらう必要があります。

しかし、会社の事業内容、成長性、給与、勤務地、社風、上司同僚といった前提条件は、急に魅力的にしようと思っても簡単には変えられません。
 

そこで差別化できるのが「働き方」を柔軟に相手のニーズに合わせることです。

 

優秀な人材 を採用するための「働き方」の提案

 
転職者とWin-Winの条件になるための提案について、具体的な方法を事例で解説していきます。

例えば、Z社が以下の求人票で募集を出していたとします。
 

【職種】経理課長

【雇用形態】正社員

【勤務時間】9:00~18:00(休憩1時間)

【勤務地】東京都港区の本社オフィス

【休日】週休2日制、年間休日120日

【給与】年収500~600万円

 

副業兼業したい人への対応(Aさん)  

副業兼業したい人への対応

 
上記の情報を見て応募してきたAさんから、面接時に次のような質問が出ました。

「副業は認めていますか?」
 

Z社では就業規則上、副業を認めていません。

この時、あなたが面接官だとしたらどのように答えますか?

「当社では副業は認めていません」
 

もしこのように回答するだけだとしたら、あなたはAさんと共に働ける可能性を狭めてしまいます。

次のように回答してみてはいかがでしょうか?
 

「当社は副業は認めていませんが、そうですよねえ・・・今は多様な働き方の時代ですからね。当社としても何とか対応できることはしたいと思っていますが、Aさんは副業でやりたいことがあるのですか?」
 

するとAさんからこのような答えが返ってきます。
 

「実は前職時代から知人のベンチャー企業を少し手伝っていて、たまたま頼りにされていることもあり、当面の間は継続したいとも思っていまして。

実際の仕事量はさほど多くないので、御社での仕事に支障が出ない程度とは思っているのですが・・・」


 

もし面接を通じてAさんが是非とも働いて欲しい人材だとしたら、副業禁止ルールを理由にご縁がなくなるのは避けたいですよね。

とはいえ、会社の就業規則を「副業OK」に変更するのは社内調整含めて時間がかかります。
 

この時にできることは、Aさんと擦り合わせしながら次のような条件を提示することです。
 

  • 業務委託契約(週4日勤務程度を基準とした業務の委託)
  • 週4日勤務の正社員雇用

※給与は通常のフルタイム勤務の場合の年間労働日数と週4日勤務の場合の年間労働日数差に応じて設定する。

 
もともとAさんは正社員募集で応募してきたので業務委託契約には抵抗感があるかもしれませんが、人によっては(特に能力に自信がある人は)業務委託で構わない人もいます。

Aさんはメインの仕事に就きながら、知人のベンチャーの手伝いも継続できます。

業務委託の場合、会社が社会保険を負担しなくていい分を報酬に上乗せしてあげれば、本人にとっても悪くない条件になります。

 

年収希望が合わない人への対応(Bさん)

年収希望が合わない人への対応

 
先ほどの求人票に、経理課長としては業務経験が十分なBさんが応募してきました。

面接で希望年収を聞くと、「現職でもらっている700万円は欲しい」とのことです。
 

求人票では500〜600万円で出しており、630万円くらいなら何とか出せるものの、それ以上となると他の管理職とのバランスもあり難しい状況です。
 

さてあなたはどのようなオファーを提示しますか?
 

「ご希望通り700万を出したいのですが、弊社の給与テーブルではとどかず、何とか630万円で前向きに考えていただけないでしょうか」
 

これで終わってしまってはBさんが会社に来てくれる可能性を狭めてしまいます。

630万円の提示で感触が良くなければ、同時に以下のような提案をしてみるのはいかがでしょうか?
 

「例えば3日勤務の正社員として、年収は700万円×3/5=420万円という案も考えられますが、いかがでしょうか。

課長としてご入社頂き、細かい事務作業は基本的に担当者が行うので、まさに課長としての判断業務や業務効率化、改善などの仕事を中心に週3日でやっていただくのもありではないかと考えています。

もし正社員ではなく業務委託をお望みであれば、社会保険分を上乗せして契約することも可能です。」

 
Bさんは最初は驚くかもしれません。

しかしBさんにとっても自分のキャリアに拡がりが出るので、悪い話ではありません。

メインの会社で週3日で仕事をしつつ、週1日は将来に向けた勉強にあて、週1日は副業で別の会社の経理を手伝うという選択肢が生まれます。

会社側にとっても、経理課長の通常業務のうち半分程度は担当者でもできる仕事をやっていたりするので、

勤務を週3日に絞り、課長ならではの業務に専念してもらえるなら、費用対効果としても悪くありません。

 

家庭の事情で勤務時間が合わない人への対応(Cさん)

勤務時間が合わない人への対応

 
同じく上記の経理課長の求人票に応募してきたCさんとじっくり話してみると、家族の介護の関係で、退勤を18:00ではなく17:00にしたいということでした。

業務経験は十分で人柄もいい人です。希望給与も求人票の範囲内です。
 

この時に「当社の勤務時間は9:00~18:00までなので、残念ですが当社では難しいですね」

と返事をしてしまうのは非常にもったいないです。
 

「当社としてはCさんには是非お越しいただきたいので、時短勤務で対応したいと思います。勤務日は通常の社員と同様ですが、退勤時間を17:00とする時短正社員としてご提案させていただきます」

 

と返してみてはいかがでしょうか?
 

給与はフルタイム勤務想定時の年収に7/8時間を掛けた金額とします。
 

Cさんも介護の事情を考慮した条件を出してもらえたら悪い気はしません。前向きに考えてくれるはずです。
 

介護に限らず、子育てや様々な家庭の事情で出勤時間や退勤時間が生活リズムに合わない人がいます。

今は共働きが当たり前、少子高齢化で介護をする人も増えたり、多様なニーズがある中で、一律の勤務時間だけで対応するのは限界があります。

勤務時間8時間にこだわらず時短勤務を認められれば、受け入れの幅がかなり広がるはずです。

 

リモートワークを希望する人への対応(Dさん)

リモートワークを希望する人への対応

 
住まいが都内ではないDさんとの面接で「リモートワークは可能ですか?」という質問がありました。

この質問は今や定番です。

一度リモートワークの便利さを知ってしまったら、毎日オフィスに出勤したくないと思う人が出てくるのも当然です。
 

リモートワークについては賛否両論ありますが、全く対応できない会社は、時代の流れに取り残されていくように思います。

フルリモートである必要はありませんが、例えば「週に2日はリモートを選べる」とするだけで、家庭との両立や身体の負担などを大きく改善できます。
 

会社にとっても、より遠方に住む人からの応募が増える効果も見込めるでしょう。

コロナ禍のような緊急時や災害時に業務を止めない危機対応力もつきます。
 

雇用市場の変化や働き手の意識の変化も踏まえると、一刻も早くリモートワークを取り入れた働き方ルールを作成することをおすすめします。

 

副業でのつながり提案(Eさん)

副業でのつながり提案

 
Eさんは、業務経験が今回の募集に合わず見送りになりましたが、今後も何かつながりを持っておきたい魅力的な人材でした。

経理の決算や税務の経験は不足していましたが、エクセルやITツールを活用した業務効率化の経験が豊富で、簡単な在庫管理システム、給与計算システム、管理会計システムなどを自ら主導して作った経験がありました。
 

Eさんが今回の転職活動でどこの会社に行くかは分かりませんが、

「もし転職先が副業OKの会社でしたら、是非外部コンサルタントとして当社の業務改善にアドバイスをいただきたい」

という打診をしてみてはいかがでしょうか。将来的に良いご縁につながるかもしれません。

 

優秀な人材 を柔軟に採用するための面接方法

 
以上の事例でお伝えしたような提案を出せるか否か? その提案が相手の心に響くか否か?

これらは面接のやり方にあります。
 

大リーグで活躍する大谷選手がかつて移籍先を探していた時、エンゼルスは二刀流を約束しました。

大谷選手に来てもらうには、彼が何よりも二刀流にこだわっている事を大谷選手との対話を通じて理解したからこそ、エンゼルスはその提案ができました。
 

では、あなたが今面接している目の前の人が大事にしていることは何でしょうか?

面接では求職者の経験や能力、人柄、社風との相性などを見きわめるだけでなく、その人が何にこだわって会社を選ぼうとしているかを抑えておく必要があります。
 

柔軟に採用するための面接方法

 

  • 給料
  • 会社の将来性
  • 財務の安定性
  • 経営者
  • 社風
  • 同僚
  • 仕事内容、役割
  • 成長機会
  • 給与
  • 休日休暇
  • 働きやすさ
     

選択の判断軸としては大体こんなところでしょうか。
 

これに加えてぜひ聞いて欲しいのは、

  • 3~5年後にどのようになっていたいですか?(経験、専門性、能力、役割、ライフスタイル)
  • 3~5年後にどのくらい稼げるようになりたいですか?

 

会社を選ぶ判断軸と将来の展望を聞くことで、目の前の求職者の人となりがよく見えてきます。

求人票ぴったりの採用は無理だったとしても、どのような形なら相手のニーズに合う働き方や関わりができるのか、考えることができます。

 

まとめ

転職者とWin-Winを目指す内定出しの秘策

 
「これは!」という人材が応募してきたら、できる限りの知恵と柔軟な対応によって、その人に来てもらえる方法を考えましょう。

今後、雇用形態はどんどん多様化し、会社の人的資源は社員だけでなく、副業や業務委託なども含めたその会社を取り巻く人材の総和が価値となります。
 

「職場に正社員だけが毎日同じ時間に来て働く」という光景自体が過去のものになっていく以上、中小企業はその流れを先取りし、他社よりも柔軟な人の採り方を武器にしていきましょう。

一部就業規則を変更したり会社の制度をいじる必要はあるかもしれませんが、それを厭わずやる価値は十分あります。
まだ他社があまりやっていないからこそ価値があります。
 

「求人票通りの人材が来ない・・・」と嘆いていても始まりません。

自社に応募してくれた人材との細い縁をしっかり育て、長く会社を支える人材になってもらいましょう。

  

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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