降格しても社員がやめない文化が会社を強くする理由

2019.05.31
Share this...
Share on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter

あなたの会社に降格のルールはありますか?

 

大抵の会社に「昇格」の基準はあります。
しかし「降格」については、特段の基準がない場合が多く見られます。

降格のルールがないと、どうしてもという場合に例外的に降格させることになりますが、降格させる上司もしんどいし、降格させられる本人も納得感がなかったりで、なかなかうまくいきません。

周りの社員も降格した人に変に気を遣ったり、対応の仕方に困ったり・・。
結局降格した人材は会社に居づらくなりやめてしまう。

 

こんな残念な結末を目にしたことが私も何度かあります。

 

これは本当にもったいないと思いませんか。

一度降格した人材であっても、改めて奮起して頑張って、再び昇格するような企業文化は作れないものでしょうか?

 

なぜ降格は避けられないか

社員を降格させるのはなかなか辛いものです。
できれば降格する人がいないに越したことはありません。

しかし企業経営の性格上、1人も降格させない仕組みというのは現実的ではありません。

 

少し違う世界の話をさせて下さい。

 

Jリーグ終盤の楽しみの1つは、J1からJ2へ降格する瀬戸際のチーム同士の戦いです。
選手も監督も何が何でもJ1に残ろうと、目の色を変えて必死に戦います。

しかしルールはルール。
J1の18チーム中、下位2チームは必ず降格しなければなりません。
代わりにJ2の上位2チームが昇格します。

これがJリーグの活力の1つであり、もし降格制度がなければ万年最下位でも安穏としたチームが出てきかねません。

 

 

プロ野球は2部リーグがないので入れ替えはありませんが、個々の選手達は常に降格の危機を感じながら戦っています。

1軍で試合に出られれば花形ですが、調子を落とせばすぐに2軍落ち。
大観衆にかこまれたスタジアムから、あっという間にローカル球場のドサ回りに転落です。

非常に厳しい世界ではありますが、この競争システムがなければ、緊張感のある試合を観客に見せることはできません。

 

ここであなたは、調子の波の大きいスポーツ選手と会社員は違うのでは?と思うかもしれません。

しかし職場の活力を維持する上で、降格は避けがたいものなのです。

 

それは次のような理由によります。

  • 努力して常に高いパフォーマンスを維持できる人もいれば、そうでない人もいる
  • ポストには限りがあり、皆が昇格すると組織が成り立たない
  • (管理職などに)昇格したものの、そこで期待される役割を果たせない人が出る
  • 一定の能力を見込んで中途採用したが、実際に働いてみると能力が足りない人がいる
  • 降格させられない文化だと、思い切って大胆に昇格させることができない(昇格しても上手くいかなかった場合には降格という選択肢があれば、優秀な人材にどんどんチャンスを与えられるのに)
  • 社員がずっと上がることを目指すのではなく、時には「降りる」という選択肢があった方が長く働きやすい場合もある

 

もし降格ルールがないとすると、上記のような事態がおきる都度、つぎはぎ的な対応をしてしまいがちです。

・役割の不明確なポストを新設する
・社員間の能力に比して給料の逆転現象が生じる
・ポストが下がり責任が軽くなったのに、給料は変わらない
・成果が出ていない社員間で降格する人とそうでない人が発生し、違いがよくわからない

 

このような対応を重ねれば重ねるほど、全社的に一貫性がなくなり、組織の運営が難しくなっていきます。

 

 

降格が受け入れられる風土づくり

降格を組織の活力とするためには、それがネガティブに捉えられることなく、J2降格とJ1昇格のような仕組み、組織の習慣にできるのが望ましいです。

 

そこで重要なのは、①適切な評価制度、②明確な降格基準、③対象範囲、④温情、⑤再チャレンジの5点だと考えます。

 

①公平で納得のいく評価制度がなければ昇格降格の理由が曖昧なので、降格させる根拠になりません。

②降格にはルールが必要です。例えば「D評価(最低ランクの評価)を2年連続とると降格」というようなルールです。

③降格制度の対象範囲をどこに定めるかも考えなければなりません。
幹部から新入社員レベルまで全階層に降格制度をいれるのか、一定以上の役職以上にいれるのか。

また降格する人がいる一方、新たに昇格する人材がいなければ組織に持続性がありません。
昇格可能な人材が一定程度育っているということも、降格制度を取りいれる際の条件です。

④降格した社員は給料も減ることになりますが、給料は社員にとって生活給です。
減給幅が大きい場合には段階的な削減にするなど、本人に寄り添う視点も欠かせません。

⑤降格はあくまでその時点における会社の判断にすぎません。
降格した人が再度昇格するのは大歓迎であることを、マネジメント陣は常に発信しましょう。

降格の原因は何か?
どこをどのように改善すれば再び昇格できるか?

などをしっかりコミュニケーションして、モチベーションを維持させることに時間を使ってください。

 

 

降格を上手く活用している事例

サービス業A社の場合

私がよく存じ上げているサービス業A社では、一定の役職以上の人は「毎年事業を10%以上伸ばす」という必須要件があります。

その要件を達成できなければ降格。
代わりの人材がそのポストにつきます。

事業の成長には外部環境などの運不運もありますが、そういう要素は考慮されません。
シンプルに10%以上か否かというわかりやすい基準で決まるので、降格する人も文句のつけようがないルールです。

 

降格者が出る分ポストがどんどん空くので、下の人材は常にチャンスを伺い、
降格から奮起して再昇格する人材も沢山います。

この仕組みがA社組織の原動力となっており、A社は長らく高成長を維持しています。

 

星野リゾートさんの場合

星野リゾートさんの降格の仕組みも良くできています。

社内で「昇格・降格」という言葉は使わないそうです。

「充電・発散」と表現することにより、ネガティブな印象をやわらげ、降格も企業文化にしようとしています。

ふだん役職名で呼び合うと降格した時に困るので、全社的に「さん付け」を習慣化。

意欲ある者にはどんどんチャンスを与える代わりに、成果が一定水準に届かなければ降格するというルールが対になっています。

降格した人には給料が急に下がらないよう、激変緩和措置をもうけて配慮しています。

 

 

降格した本人のメリット

降格は、当の本人にとってメリットになることも、最後に触れておきます。

降格当事者はその時「悔しい、恥ずかしい、つらい・・」という感情でいっぱいのはずです。
私もかつて減給を経験した時、「家族にどう伝えようか・・」真剣に悩みました。

 

しかしその経験は長いキャリアでみれば貴重な経験だと思います。

 

20歳過ぎから70歳まで働くとして、その間一度も降格や減給がないというキャリア人生はなかなか考えづらいですよね。

将来向き合うキャリアの山谷に上手く対処していけるようになるためには、そういう経験を積んでおくことが大事です。

ひたすら出世街道を駆け上がってきた人が、50歳過ぎて主要ポストから外れた途端に意欲喪失してしまうのは、昇った経験しかないからですよね。

逆境には耐えるメンタルが鍛えられてこなかったのだと思います。

 

自分自身が降格や減給の経験をしていれば、その境遇の人の気持ちがわかります。
一人の上司として厚みが出ます。

自分の部下を降格させざるを得ない時であっても、その気持ちも理解した上で次へのアドバイスをしてあげられるのではないでしょうか。

 

まとめ

「降格は仕事の結果に対する一時的な処遇」にすぎません。

決して能力の否定でも人格の否定でもありませんが、当事者にそう勘違いさせないことが肝要です。

 

降格の仕組みを上手く機能させれば、組織の活力になり、個人の原動力にもなります。

 

ぜひ、「降格しても社員がやめない文化」 「降格をきっかけに社員がさらに頑張る文化」を目指して頂きたいと思います。

 

以上、「降格しても社員がやめない文化が会社を強くする理由」でした。

 

Share this...
Share on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter

筆者紹介

竹居淳一
株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

中小ベンチャー企業が「人と組織の力を最大化して持続的に発展」できるよう、人材育成・組織開発のコンサルティング、トレーニング、人材育成プログラムなどを提供しています。

筆者プロフィール詳細