平成の労働市場から展望する、令和時代の人材マネジメント

2019.05.10
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令和時代をおめでたい気持ちで迎えたのも束の間、北朝鮮はミサイルを発射、米中の貿易戦争も激化。
政治・経済ともに波乱を予感させる幕開けとなりました。

ちょうど元号の変わり目ということもあり、今回のブログでは平成時代の労働市場を振り返ってみます。

さらに、新しい令和時代はどのような労働市場が予想され、中小企業の経営者は何を備えておくべきか、考えてみたいと思います。

 

平成の労働市場を支えたのは女性とシニア

<総務省「労働力調査」>

平成の30年間、15-64歳の男性就業者数は少子高齢化の進展と共に減少トレンド。

一方で15-64歳の女性は就業率が上昇したことにより、就業者数を維持しました。

過去5年は特に就業率の上昇ペースが加速し、女性(15-64歳)の就業率は平成の30年間を通じて約55%から約70%まで到達。労働市場を支えました。

 

女性とともに新たな労働の担い手となったのはシニアです。

<総務省「労働力調査」>

男女ともに65歳以上の就業者が大幅に増加。
30年前の2.5倍となり、寿命の伸長とともに人生における働く期間が伸びました。

<総務省「労働力調査」>

国際比較においても日本の労働市場における高齢者の就業率は断トツですね。

元気なシニアが最前線で働いて下さるのは本当に有難いことです。

 

外国人労働者の急増

平成時代の後半戦以降は外国人労働者への依存度が急激に高まりました。

労働力不足が激化し、今や私達の身近ないたる所で外国人がライフラインを支えてくれています。

<職業安定局「外国人雇用状況の届出状況」>

この数は、就業ビザを取得した外国人のほか、技能実習生や留学生でアルバイトしている人も含みます。
平成6年から平成30年までで何と11倍になりました。特に増加率が大きいのはベトナム人、インドネシア人です。

 

平成の労働市場は非正規社員化の時代でもあった

平成の30年の労働市場においては、もう1つ大きな特徴がありました。

雇用労働者に占める非正規社員の比率が20%から約40%まで高まったことです。

<総務省「労働力調査」>

派遣社員、パート・アルバイトの活用が進み、従来正社員がやっていた仕事をコストが安く雇用リスクの低い非正規労働者におきかえた時代でした。

効率化、人件費抑制が進んだ半面、仕事内容が類似していても正社員と非正規社員では報酬が大きく異なり、同一労働非同一賃金という労働市場の歪みをもたらした側面もありました。

非正規社員の広がりにつれて、企業が長期的視点で人材を育てていく機能が弱体化したのは非常に残念であり、現在に続く大きな課題でもあります。

 

労働者の売り手市場化

平成は2度の不景気がありました。
90年代半ばのバブル崩壊後とリーマンショック後の2010年頃です。

しかし、リーマンショック回復後の好景気と労働力不足が重なり、雇用市場は空前の売り手市場となりました。

<厚生労働省「一般職業紹介状況」>

平成29年に到達した有効求人倍率1.5倍は44年ぶりの高水準となり、高度成長期を超えるほど、現在の人手不足は深刻です。

正社員求人倍率も1倍を超え、働き手の選択肢はどんどん広がっています。
労働市場の流動化がさらに進み、転職も今以上に当り前になっていくことでしょう。

 

新たな働き方の胎動

平成➔令和をまたぐタイミングで、労働市場にさらに大きな変化が起きています。

テクノロジーが働く場所や時間の制約をとりはらい、クラウドソーシングに代表されるように、企業と独立個人がネットを介して仕事をやり取りできる時代になりました。

また「働き方改革」は、企業に変革を迫るだけでなく、個人が副業兼業に代表されるような新しい働き方に目覚めるきっかけにもなりました。

 

副業兼業等の統計データはまだ手探り部分がありますが、幾つか数字を出す機関が出ています。

  • ランサーズ「フリーランス実態調査」によると、日本のフリーランス人口は、1119万人(2018年時点)
    • うち本業を持ちながら副業している人は、454万人
    • 複数の会社で働くパラレルワーカーは、290万人
  • 総務省「就業構造基本調査」によると、副業をしている人は268万人(2017年時点)
  • みずほ総合研究所によると、副業希望者は2200万人

このように、副業を希望する人、実際に副業を行う人が増えています。

私の回りでも、若くして独立する人や副業する人が結構いますが、そういう人に限って優秀だったりします。

 

昨年副業を推進するプロジェクトに関わっていましたが、今の副業市場は転職市場の真逆。
完全に買い手市場です。

副業の求人を出すと数倍、うまくいけば数十倍もの応募がくるほど、副業したい人の数に比べて、副業を募集する企業が少ないのが今の状況です。

 

AI、ロボットと共に働く令和時代

AIやロボットの活用が広がるにつれて、人の仕事がなくなるなくならないの議論があります。

労働力不足の日本にとって省力化・効率化はとてもいい流れだと思いますが、それに伴って労働者は仕事の質の転換を迫られます。

 

上図のように、単純作業や過去の知識の応用や経験則だけでできる仕事は、人がやらなくてもよくなるでしょう。

代わりにAI時代ならではの新しい仕事が出てくるはずですが、それに適応するには右側に記載したような能力を高めていく必要があります。
労働市場では適応する個人が生き残り、そういう人材を育てられる会社が生き残る時代となります。

 

変わる若者の価値観

若い人は時代の流れを敏感に察知し、それに適応して判断、選択をしていくものです。

下のグラフは、新卒入社する学生が会社を選ぶ基準が時代とともにどのように変わってきたかを示しています。

 

<日本生産性本部「平成30年度 新入社員 働くことの意識調査結果」>

注目すべきは赤い線。「会社の将来性」が企業選びの重要項目ではなくなっていることです。

逆に重視されているのは、「能力・構成が生かせる」、「仕事が面白い」です。

さすが学生たちは大人社会を見て、ちゃんと分かっていますね。
「どんな立派な会社でも一生安泰はない」
「自分の能力や個性を伸ばしていくことが安定への近道」
だということを。

会社経営も当然ながら若い人材の価値観に合わせたマネジメントをしていかなければなりません。

 

令和時代の人口推移

平成の30年間は少子高齢化が進んだとはいえ、一定の労働力を維持できた時代でした。

しかし令和以降の30年間を見通すと、労働市場においては大幅な人口減、労働力減は避けられません。

<国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」>

15-64歳という働き手を輩出する年齢層が、10年毎に約10%前後ずつ減少していきます。

次代を担う0-14歳も同様に減少していきます。

高齢化により65歳以上はしばらく増加が続きます。

人口減少によって全体の労働力が減るだけでなく、若い人材がなお一層少なくなり、その若い世代でも新しい働き方を選択する人も増えるので、いわゆる「若手正社員」を中小企業が採用するのはますます困難にならざるを得ません。

 

令和時代に求められる人材マネジメント

令和時代は人材戦略、人材マネジメントが経営の根幹となります。

ここまで述べてきたような環境の変化に対して、どのような組織を作り、どのように人材を動機づけ、彼らの力を最大限引き出していくか?

それを常に考え続けなければなりません。

ここでは4点、これからの人材マネジメントにおいて大切にしてほしいことをお伝えします。

 

自ら考え動ける人材の育成

恐らくこれまでも意識している事ですが、改めて「自ら考え動ける人材」を育てていただきたいです。

頭を使わない仕事は省力化してコストを落とし、社員には頭を使う仕事にシフトしてもらわねばなりません。

人口減少時代においては、少人数で高い生産性が理想です。
同じ売上をより少ない人数で実現し、その分皆に多く給料を分配できる組織の方が理に適っています。

高い生産性を実現するには、現場の一人一人が自ら問題を発見し、その解決策まで実行できる人材にならなければいけません。

指示通りやるだけの人材は変化の波についていけなくなります。

社員に答えを渡してしまう方がその場は早いかもしれませんが、上司は敢えて我慢し、自分で考え自ら実行する習慣を養っていきましょう。

 

社外人材の活用とネットワークづくり

正社員だけで目まぐるしい変化に対応していくのは限界があり、社外人材をいかに活用できるかで差がつく時代です。

ここで「社外」と言っているのは、副業兼業人材、外注先、顧問、コンサルタント、独立個人事業主、インターンシップ生、プロボノ人材などを指します。

名称は色々ですが、まとめてしまえば外部の専門人材群です。
この専門人材群を上手く活用できれば自社社員との相乗効果で事業のスピードと広がりが変わります。

とはいえ外部専門人材でいい人を探すのも簡単ではありません。

少しでも早く外部人材の活用にトライし、いい人材と巡り合えばその人の紹介で別の専門人材とつながり、更にその先のつながりで・・という信頼のネットワークを広げていきましょう。

社外人材を使うのもノウハウと経験が必要なので、最初は慣れないかもしれません。
しかしやっているうちにほどよい役割分担ができあがり、社員同士で仕事している時には学べない刺激を受け、成長の礎になるはずです。

 

ダイバーシティマネジメントの追求

労働市場の変化にともない、あなたの会社で働く顔ぶれも今とはだいぶ違ってものになるでしょう。

女性が活躍できない会社はそれだけで大きなハンディを背負うことになります。
シニア活用も同様です。
外国人を単純労働として受け入れるだけでなく、優秀な外国人を正規雇用する会社も増えるでしょう。

同じ日本人男性同士であっても、若手とミドルの価値観ギャップ、仕事に対する向き合い方の違い、正社員と外部人材とのギャップなどあります。

つまり同じ価値観の人同士で、同じやり方を踏襲する組織はもはや成り立ちません。
異なる価値観同士をうまくつなぎ合わせていくマネジメント、上下というよりは横のマネジメントが求められます。

私はこれはとてもいい事だと思っています。

なぜなら普段仕事でいつも感じるのは、企画会議のような場に色んなバックグラウンドの人が集まると、議論の幅が広がり、色んな視点から考えることができ、結論が見違えるように良くなるという事です。

同じ価値観の人同士では決してたどり着けないような企画を生み出すことができます。

そういう会議や議論が日本中の中小企業で交わされたら、どんなに面白くワクワクできることでしょう。

 

背負い系人材の育成

背負い系人材とは、会社のコア社員であり、会社の発展とともに様々な大事な役割を担ってくれる人材のことです。

一定の専門性を持ちながらも、そこにとどまらず様々な領域にチャレンジし、組織を率い、経営スキルを身につけていく人材です。

働き方の多様化がすすみ、専門スキルを磨く人や会社からほど良い距離感を保ちながら働く人は増えていきます。

その一方で、本気で会社にコミットし、副業など脇目もふらずに自社の事業拡大に心血を注ぐ人材が絶対に必要です。
そういう人材がいない限り、会社の持続的な発展は難しいでしょう。

 

しかし背負い系人材は待っていてもなかなか出てきません。

社長であるあなたが有望な人材を見つけ、目をかけ、引っ張りあげ、様々な困難や修羅場を経験させてください。
経営者の立場でものの見方や振る舞いを教えてあげてください。

中小企業に背負い系人材が数名育てば、あなたの会社の未来は大きく変わってくるはずです。

 

以上、「平成の労働市場から展望する、令和時代の人材マネジメント」でした。

 

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筆者紹介

竹居淳一
株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

中小ベンチャー企業が「人と組織の力を最大化して持続的に発展」できるよう、人材育成・組織開発のコンサルティング、トレーニング、人材育成プログラムなどを提供しています。

筆者プロフィール詳細