企業の発展 を妨げる「上にものを言えない体質」からの脱却|部下の声を聞くリーダーシップ

2024.02.08

 
企業の発展 に影響するような不祥事が相次いでいます。
 

日本を代表する自動車メーカーの不正を筆頭に、自動車修理会社、損害保険会社、大学、芸能事務所、歌劇団など、日本の多種多様な組織において問題が起きています。

これらの問題の原因として必ず上がるのが、「上にものを言えない体質」です。

 
「上にものを言えない体質」は不祥事を起こす企業に限らず、多くの企業にはびこる根深い問題ではないでしょうか。

そして、いかにしてこの問題を克服するかということが企業の発展の命運を握っているといっても過言ではありません。
 

今週のブログでは、「上にものを言えない体質」からの脱却について考えてみたいと思います。

 

なぜ上にものを言えなくなるのか?

 

組織人であれば、誰もが「上司に対して言いたいことを飲み込んだ」経験を持っていることでしょう。

では、なぜ言いたいことを言えなくなるのでしょうか?

私はこのような理由が背景にあると考えています。

 

部下が上司に意見できない理由 

 

上司に悪い評価をされたくない。上司の意に沿わないことを言うと冷遇されかねない

上司の気分を害して仕事がやりづらくなるのを避けたい

上司の指示に盲目的に従う方が楽
(上司を納得させるだけの意見を言うのは、その根拠を練るのも含めて骨が折れる)

意見を言うとその責任を押し付けられる

「上司の言う事は絶対」という固定観念がある

 

いずれも「確かにそうだよな〜」という理由ばかりだと思いませんか。

 

組織としては全く健全な状態とは言えませんが、部下側の気持ちに立てば「上司にものを言えなくなるのもしょうがないか・・・」と納得はできます。
 

つまり階層構造の組織においては「上にものを言えない体質」がはびこるのは当たり前の自然現象と考えた方がいいでしょう。
 

稀に、このような環境下におかれても上と戦ってでも突き進める人が出現しますが、その発生確率はごくごく低いものです。

つまり上の立場の人がスタンスを変えない限り、この構造は変わらないと言えます。
 

この出発点を間違えてはいけません。
 

上が変わらないのに、部下の立場の人に対して

「もっと積極的に意見を出してくれ」「反論だってどんどん言っていいんだよ」

というのは愚策の筆頭株と言えるでしょう。

 

なぜ上司は権力で部下を動かそうとするのか?

 

「上にものを言えない体質」は拡大再生産されます。

担当者時代に上司に意見を言えなくて苦労した人も、いざ自分が課長になると、同じように部下が意見を言いづらい課長になってしまうことがほとんどです。

なぜなら、その方が管理職として楽だからです。

自動車メーカーの不祥事において、このような経緯がありました。
 

企業風土として、もともと「量産開始のスケジュール順守は絶対」との認識がありました。

現実的にはどう頑張っても間に合うスケジュールではないので上司に相談すると、上司からは『で?』と言われるだけ。

従業員たちには「上に言ったところで何も変わらない。聞いてもらえない」という諦めがあり、やむなく不正に走りました。

 

『で?』

あなたの身近にも、部下からの相談に『で?』と返す上司がいませんか?
 

なぜ『で?』とやってしまうのでしょうか?

それは、これが一番楽なマネジメント方法だからです。
 

『で?』マネジメント

 
課長はその上の部長から高いハードルを課せられているので、それをそのまま部下に転嫁します。

(お客様から値下げを要求された会社が、下請け業者の同等の値下げを要求するのと似た構造です。)

部下から相談があっても、課長自身が解決策を持ち合わせていないので、何もアドバイスができません。

だから『で?』が最も楽なのです。
 

本来は上司のさらに上の上司に対して、「スケジュールが間に合いません」という相談をすべきですが、恐らく上の上司からも『で?』と言われるだけなので、このような発言をしたのではないか・・・と想像します。

つまり、会社の上から下まで “『で?』マネジメント” が企業風土として染みついていたのではないでしょうか。

 

上位下達マネジメントが通用した時代から通用しない時代へ

 

『で?』マネジメントは、上位下達マネジメントとも言えます。

上が決めたことを下にやらせるマネジメントです。「上の言うことは絶対」マネジメント。

<指示する上司>-<実行する部下> に分断されたマネジメントとも言えます。

このマネジメントには長所短所の両面があります。

 

上位下達マネジメントの長所

 
トップの指示が明確に現場の末端まで伝わりやすい、指示が一貫する、スピードが早いなど

このマネジメントが特に有効に機能するのは次のような場合です。
 

  • トップが現場を深く理解し、的確な戦略戦術を描いている場合
  • 行動量とスピード重視のマーケット下。つべこべ言わずにやれば一定の成果が出る環境
  • 社員の会社に対するロイヤリティが高く、多少の理不尽は耐えて長期間勤続する組織

 

上位下達マネジメントの短所

 
中間管理職も担当者も考えなくなる(盲目的に従う)、結果として人が育たない、トップの判断が間違っていてもそのまま走り続けるなど

このマネジメントが不利に働くのは次のような場合です。
 

  • 市場の変化、技術の変化が激しいマーケット下(現場最前線の感度の高さが問われる)
  • 市場のパイ自体は広がらず、量よりも質や細やかな顧客ニーズに対応すべきとき

 
下図のように、上位下達マネジメントが有効な領域はマーケットの観点から見ても限られています。

市場のパイが限られ、変化の激しい時代においては、現場最前線の”考えて行動する力”が求められるからです。 

加えて、今の時代は社員が理不尽を我慢せず自分のキャリア成長につながらない会社には見切りをつけます。 

経営トップや幹部が現場情報に精通していなければ、致命的なマネジメントになるでしょう。

 

「上にものを言えない体質」から脱却するマネジメント

課長さんや部長さんが、自組織において「上にものを言えない体質」を変えるには何をしたらいいでしょうか。

先ほど、部下が上にものを言わない理由を書きました。

その理由を一つずつなくしてあげることが変化につながります。
 

具体的には、自身のマネジメントにおいて以下の6つを心がけることです。

いずれか1つだけでも変えることで、組織に小さな変化が生まれるはずです。
 

  1. 意見を言う人を評価する。質問する人を評価する
     
  2. 上司は部下より偉いという勘違いをなくす(上司と部下は役割分担にすぎない)
     
  3. 部下の意見を受け止める度量と力量を備える
     
  4. 会議三昧のような仕事スタイルを変え、机上の議論を減らし、現場をよくすることに時間を割く。現場感覚を鋭敏にする
     
  5. 上手くいかない時こそ、部下と同じ目線で一緒に方策を考える
     
  6. 仕事を減らす

 
誤解がないよう伝えておきますが、「何でも部下の話を聞きましょう」という事ではありません。
「(つべこべ言わずに)とにかくやりなさい!」と伝える指示もあって構いません。
 
要は指示の内容次第です。

とにかくやれば成果につながる仕事であるならば、「迷わずやれ」という指示。
先の自動車メーカーの例のように、上司にも解決策が見えない難しい課題であるならば、押し付けるマネジメントは絶対に避けましょうということです。

 
6つをそれぞれ説明していきます。

 

1. 意見を言う人を評価する。質問する人を評価する

 

青山学院大学の駅伝監督である原晋さんが面白いことを仰っていました。
 

体育会系の「はいっ!」て子は伸びない。ちゃんと聞いてるのか、理解してるのか。こういう子は監督の目を見て練習する。

自分の意見を持つ子の方が伸びる。

 
自分の意見をもち、疑問があれば発することを奨励し、そういう人材を評価する。

自分の訓示にただ

「はい」

とうなずいているだけの部下ほど、一見素直なようで本質を理解していないので要注意です。

 

2. 上司は部下より偉いという勘違いをなくす(上司と部下は役割分担にすぎない)

 
この勘違いをした瞬間に全てが上手く機能しなくなります。立場や権限で相手を動かそうとしないことです。

こちらの記事もご覧ください。

 

3. 部下の意見を受け止める度量と力量を備える

 

ものを言える組織の長には度量と力量が求められます。

米国のビジネスシーンでは、たとえ変な意見が出ても、必ず「Good question!」というように一旦受け止めます。

このように、受け止めて対等な目線で対話するスタンスが必要です。
 

普段から知識や情報を吸収し勉強する姿勢も欠かせません。

ただし、部下より優秀でなければならない必要はありません。 ← これ、結構大事です。

優秀な部下に変に張り合おうとすると、自分で自分のクビを絞めます。

自分より優秀な部下がいるなんて、組織としては何と有難いことでしょうか。

優秀な部下を認め、その力を上手く活かす力量の方が大事です。

 

4. 会議三昧のような仕事スタイルを変え、机上の議論を減らし、現場をよくすることに時間を割く。現場感覚を鋭敏にする

 

報告資料を見て会議ばかりやっていても現場はよくなりません。

そういう仕事はできる限り効率化し、現場の動きを深く理解し、現場の問題にちゃんと首を突っ込んで解決する。

現場の仕事を担当者に丸投げし、結果だけを評論する上司であってはいけません。

 

5. 上手くいかない時こそ、部下と同じ目線で一緒に方策を考える

 

自動車メーカーの『で?』マネジメントは、部下が本当に苦しんでいる時に寄り添わず、全てを押し付ける姿勢をとりました。

これこそ部下が最も失望し、会社を去りたくなる瞬間です。

部下が解決策なく途方にくれていたら、一緒に考えアイディアを出す。

苦しい時こそワンチームの姿勢が欠かせません。

 

6. 仕事を減らす

 

仕事は油断するとどんどん増えます。次々に沸き起こる問題に対処しているうちに、やることが山積します。

その先に待っているのは、焦り、コミュニケーションの停滞、職場の沈滞、大きなミス、社員の脱落です。

上司の大きな権限は仕事を増やすことも減らすこともできることです。

何かを増やす時には何かを減らす

社員の仕事の総量を一定程度にコントロールする役目を全うしましょう。

 

ボスではなくリーダーへ

 
イギリスの高級百貨店「セルフリッジズ」の創業者 ハリー・ゴードン・セルフリッジの名言があります。
  

企業の発展

 

  • ボスは部下を追い立てる。リーダーは人を導く。
     
  • ボスは権威に頼る。リーダーは志、善意に頼る。
     
  • ボスは恐怖を吹き込む。リーダーは熱意を吹き込む。
     
  • ボスは「私」という。リーダーは「我々」という。
     
  • ボスは失敗の責任を負わせる。リーダーは黙って失敗を処理する。
     
  • ボスはやり方を胸に秘める。リーダーはやり方を具体的に教える。
     
  • ボスは仕事を苦役に変える。リーダーは仕事をゲームに変える。
     
  • ボスは「やれ」という。リーダーは「やろう」という。
https://en.wikipedia.org/wiki/Harry_Gordon_Selfridge

 

これが書かれたのは、100年以上前の1900年頃なので驚きです。
マネジメントの原理は1世紀前も今も変わらないということですね。

 
上司はボスではなく、リーダーであることを心に刻みたいものです。

 
 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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