「 仕事のコミュニケーション 能力」の誤解と真実|ビジネスにおける本当のコミュ力とは?

2024.02.16

 
仕事のコミュニケーション 能力は、若手からベテラン、経営者クラスにいたるまですべての人に求められるものです。

ところが、その能力については誤解がつきまといます。
 

企業が人材を採用する時や人事評価を行う時など、「コミュニケーション能力」が評価対象となりますが、その具体的な基準は非常に曖昧です。

人によってコミュニケーション能力の高低を判断する尺度が異なるからです。
 

今週のブログでは、仕事におけるコミュニケーション力とは何か?について改めて考えてみたいと思います。

 

プライベート vs 仕事 のコミュニケーション 能力

 

まず、プライベートにおけるコミュニケーション能力について考えてみましょう。

学校のクラスやクラブ活動、プライベートの飲み会、公園のママ友グループといったコミュニティにおいて、「コミュ力がある」と言われる人は以下のような特性を持ち合わせています。

 

プライベートでのコミュ力

Ÿ明るい

Ÿ話し上手、話題が豊富

Ÿ面白い

Ÿ会話のリズムがいい

Ÿ誰とでも話ができる

Ÿ相手に合わせられる

 

それぞれコミュニケーションの大事な特性をあらわしていますが、プライベートでの会話は「仕事のコミュニケーションとは違う」ということを頭に入れておかねばなりません。

プライベートと仕事のコミュニケーションは目的が異なるからです。

 
プライベートコミュニティでの会話の目的は、どちらかと言うと「楽しく、明るく、深刻過ぎない話題を皆でワイワイ話し、良好な関係を維持すること」です。

何か明確な目的や達成目標に向かって会話をしているわけではありません。

 

仕事のコミュニケーション 能力

 

一方で仕事のコミュニケーションは、共通のゴールを設定し、それに向かって共に突き進むための会話です。
 

「明るい」にこしたことはありませんが、仕事のコミュニケーションにおいては、いわゆる「明るい人」でなくても仕事は着実に進められます。

「会話のリズムがいい」がふさわしい場面もありますが、リズムがゆっくりで、途中沈黙があって、深く深くじっくり話し合うべき場面もあります。

「話題が豊富」「面白い」人であっても、相手の話をしっかり聞ける人でなければ、仕事のコミュ力が高いとは言えません。

 
ビジネスにおいても良好な関係を維持することは大切ですが、それが決して目的ではありません。
ビジネスには目指すゴールがあり、ゴールに辿り着くためには、激しい議論も時には喧嘩も必要です。
 

このように、プライベートコミュニケーションにおける「コミュ力が高い人」と、仕事の「コミュ力が高い人」では、求められるものが異なります。

 

仕事のコミュニケーション 能力とは?

ビジネスの現場は他人とのコミュニケーションの連続です。

打合せ、会議、電話、立ち話、メール、チャットなど、次から次へとコミュニケーションが続きます。

コミュニケ―ションは、言い換えれば言葉や動作を介したキャッチボールと言えます。
 

いかに上手にボールを投げ(分かりやすく伝え)、いかに上手にボールを受けるか(相手の言葉を理解する)の相互作業。

この投げと受けの相互作業をしっかり行うことが仕事のコミュニケーションの基本です。
 

さらに会話のやりとりがされるだけでなく、相互の感情も行き交うので、相手の気持ちにいかに配慮できるかも求められます。

ビジネスコミュニケーション力を整理してみると、このようになります。

 

 

仕事のコミュニケーションの基盤(OS)に位置付けられるのが、「人に対する考え方・姿勢」です。

「他人を尊重する、受容する、公平に接する、人に関心を持つ、他人を理解しようと努力する、誠実に対応する、感謝する」といった、人に対する考え方や姿勢がベースとなります。

仮に「俺は偉い」と思って他人を見下す人や、相手によって露骨に態度を変える人、不誠実な人などは、仕事のコミュニケーションの入り口でつまづくことになります。

基盤(OS)の上に求められる3つの力の詳細について詳しく説明していきます。

 

伝える力

仕事のコミュニケーション

 
伝えたいことを分かりやすい言葉でシンプルかつ率直に伝える力と、思いや感情を表現する力がセットになります。

思いや感情を表現する力は鍛えるのが少々大変ですが、シンプルに伝える力は努力すれば確実に上達するものです。

特に若手社員に推奨されるのは、「結論から話す」「話の最初に全体図を示す」「難しい片仮名言葉を使わない」などがあります。

 

理解力

 
会話を通じて相手を理解するためには、相手が発する言葉を正しく聞いて理解する力と、身振りや表情から沁み出す非言語のメッセージを理解する力がいります。

加えて大事なのが「質問力」です。

仕事のコミュニケーションにおいては、相手が言っていることが理解できないまま話を流してしまうと、後々大きな誤解につながりかねません。

会話をしていれば「おやっ? どういうこと?」という発言が沢山あるはずです。
それを放置せずに確認し、質問を投げかけ、理解度を上げていけるかどうかが、ビジネスコミュニケーションの根幹の能力とも言えます。

(プライベートコミュニティの会話では適当に話を流すことも大事なスキルですが、ビジネスではリスキーな行為となります)

こちらの話しに対して「はい!」と素直にうなずいているけれど、「何か質問ある?」との問いかけには反応のない人がいますよね。

これはちゃんと理解できていない状態だと思った方がいいでしょう。

 

感情力

 
会話のキャッチボールでは、お互いの意見を伝え合うのと並行して、相手の感情への対応も大事です。

怒っている時に、いったん受け止めて相手の怒りを鎮める場合もあれば、あえてこちらも怒り返して強い姿勢を示す交渉の場もあるかもしれません。

悩んでいる人に対しては、「そんなことでクヨクヨしてんじゃないよ」と一蹴せず、その悩みに寄り添ってあげる共感力も求められます。

「非言語理解力」を通じて相手の感情を理解した上で、感情面で適切な対応をとれるかどうかが、この感情力です。

 

仕事のコミュニケーション力の評価と育成

仕事のコミュニケーション力を評価するときは、プライベートコミュニケーションにおける「コミュ力」に引っ張られないように注意が必要です。

特に新卒採用等で先輩が面談する時など、「明るい、会話のテンポがいい、話し上手、物おじしない」などの要素に評価が引っ張られ過ぎる場合があります。

先の仕事のコミュニケーション力体系図で示したように、「話し上手」は求められる能力のごく一部でしかありません。

「仕事のコミュ力」は下図のように、主に思考系の能力と感受性系の能力から成り立っており、両面から評価が求められます。

 

一般的に「発言が少ない、大人しい、ハキハキしていない」人は、「コミュニケーション力が弱い」と言われがちです。

一つの側面から見れば弱いと言えますが、実は思考が論理的で相手の話の理解力が高い人もいます。

その人は決してコミュニケーション力が低い人とは言えません。

コミュニケーション力の一翼である思考力の強みを認めた上で、指導、育成をしてあげましょう。

 

仕事のコミュニケーション力 上級編

 

仕事のコミュニケーションの基本についてお伝えしてきました。

仕事のコミュニケーションには、更にワンランク上の能力もあるので、最後に軽く触れておきます。

組織で上の立場になれはなるほど、高いレベルのコミュニケーション力が求められ、コミュニケーション力の向上に終わりはありません。

上級編は、単なる会話のやりとりを超えて、対話を通じて課題解決につなげていく力です。

 

問題発見力

 
会話を通じて、業務上の問題点や組織/個人の問題点などに気づく力

発言の中で、曖昧な返答や言いよどみ、反論などがあった時、その背景に何が起きているかを推察し、問題に気づく力が上に立つ人には必要です。

 

ヒアリング力

 
相手から本音や真実を引き出す力(相手の警戒心や防御を解いて、率直に話してもらう力)

社長が現場を訪れると、皆遠慮してしまい、本音やそこで起きている問題を言ってくれません。

そのような時に、相手の緊張をほぐし、同じ目線に立っていると感じてもらい、真剣に現場の話を聞こうとする姿勢が伝われば、相手は率直に話をしてくれるはずです。

ヒアリング力は上下関係がある中でのコミュニケーションにおいて非常に重要な能力です。

これが弱い上司は現場情報を正しく把握することができなくなります。

(いわゆる、下から正しい情報が上がってこない状態)

 

ファシリテーション力

 
会議等の場で、皆の意見を引き出し、皆の理解を深め、生産性の高い議論を行い、良い結論を導く力

日々の打合せ、様々な会議で、都度良い結論を出せる会社はスピーディーに成長していきます。一方、毎度ぐだぐだ議論を繰り返す会社はやがて衰退していきます。

ファシリテーション力を備えたメンバーの厚みが、意思決定の質を左右するといっても過言ではありません。

上司に不可欠の能力と言えるでしょう。

 

共有・展開力

 
打合せや会議で出た情報を、必要な第三者に共有、展開する力

会議で出た内容は、その会議に参加しているメンバーだけでなく、関連する他部署やチームにも情報共有が必要になることがあります。

例えば、営業1部の会議で新製品の売れ行きが芳しくない話があればマーケティング部にも伝えが方がいいし、製品の改良が必要ならば開発や製造にも共有した方がいいでしょう。

営業2部も同じ問題で悩んでいるかもしれないので、営業2部とも摺り合わせをしておいが方がいいでしょう。
 

仕事上発生する問題や試みは、特定のメンバー間で閉じるものではなく、関係者が広がっていくものです。

ただ会議に出て自分が情報を得るだけの人は共有、展開の苦手な人です。

必要な人に必要なタイミングで共有する意識、第三者を巻き込んでいくマインドも、リーダーシップを発揮する立場の人には不可欠です。

 

この「仕事のコミュニケーション 上級編」を見ていただくと、プライべ―トコミュニケーションにおける「コミュ力」と仕事の「コミュ力」の違いがどこにあるか、さらに明確にご理解いただけたのではないかと思います。

 

まとめ

 
「コミュニケーション力」はほとんどの会社、ほとんどの職種において大切なビジネススキルのトップクラスに上げられるものですが、「仕事のコミュニケーション力」についての定義、理解は個々人で随分と認識がずれているものです。

仕事のコミュニケーション力とは何か?を正しく理解し、社員のコミュ力の育成、コミュ力の評価に活かしていきましょう。

 

 

こちらの記事もおすすめです。

筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

筆者プロフィール詳細