管理職に求められる役割
管理職(マネージャー)は、企業が成長する上で絶対に欠かせないポジションです。
会社の規模拡大につれ各部署において中間管理職としてマネジメントを担う人材が必要となり、その人材の厚みが会社の成長力を左右します。
ところが、色々な会社の管理職の方々と話をしていて感じるのは、意外と「 管理職に求められる役割 」を正しく理解していないことです。
自らの役割への理解が曖昧だと、当然ながら成果につながりません。
今週のブログでは、誰もが分かっているようで意外と分かっていない「管理職の役割とは何か?」についてです。
目次
管理職への期待は高まるばかり
会社組織は以前と比べると階層が簡素化しているため、中間管理職の担うべき範囲が上下に広がっています。
加えて、現代の管理職は管理業務だけでなく自らプレイヤーとしても活躍しているので、非常に仕事の難易度が高くなっていることも事実です。
時間が限られ、やることだらけの管理職が成果を出すためには、自らの役割を正しく理解し、その役割に時間を適切に配分することが出発点となります。
管理職の役割
当たり前のことと思われるかもしれませんが、仕事の第一歩は自分に期待される役割を正しく理解することです。
では、「管理職の仕事とは何ですか?」とあなたの会社のマネージャー陣に聞いてみてください。
恐らくほとんどの人が即答できず
「うーん・・・部下の管理でしょうか?」
みたいな回答が多いのではないでしょうか。
管理職の明々白々な役割は、自分の部署の「組織目標の達成」に他なりません。
あらゆる手をつくして組織目標の達成に向けて手を打つ仕事です。
管理職の仕事 4つのP
管理職の仕事を分解すると、大きく4つの要素があります。
PDCA
People Management
Connecting Pin
Future Planning
詳しく見ていきましょう。
PDCA
1つ目は、部署としてPDCAを回しながら、常に改善革新して、目標に近づけていく仕事です。
部署として明確な目標を設定した上で、週次、月次毎に業務の進捗状況を各種データ、報告等を通じて把握します。
異常があれば修正し、問題があれば原因を究明し、対策を実施しながら、前進させていきます。
社員1人1人が自分の目標や役割を適切に認識し、その進捗を可視化し、皆が主体的にPDCAに取り組める状態も整えます。
ゴールに向かう途中、さまざまな逆風が吹き壁が立ちはだかりますが、それをクリアしながら目標を達成させる仕事です。
People Management
2つ目は、人のマネジメントです。
1人1人が能力を最大限発揮できるよう導き、総力結集できる強いチームをつくり、組織の力を最大化する仕事です。
個々の人材の育成、動機づけ、悩みの解消、チームビルディング、職場の活性化などを進めていきます。
いい人材が入社し、早く職場に溶け込んで業務習得し、貢献できる人材に育て、その人材が長く活躍する好循環を作り上げる仕事です。
Connecting Pin
3つ目は、経営の考えや方針を現場に分かりやすく伝えることです。
同時に、現場最前線の情報を経営に伝え、経営と現場の情報の行き来の媒介役として機能する仕事です。
他部署と連携をとって業務をスムーズに進める役割もあります。
情報が社内を縦横無尽に流通するよう促進し、組織の縦割りの弊害を防ぐとともに、経営と社員の分断を防ぐといった役割を担います。
Future Planning
最後、4つ目は未来に向けて手を打つことです。
例えば今の商品が将来的に廃れていくことが見えているならば、次の時代を担う商品開発を行う必要があります。
人手不足で現場が回らなくなるのが見えているなら、省力化、自動化、業務の削減、代替人材の確保などを今のうちから備えておかねばなりません。
現在の主力顧客の成長力に陰りが見えてきたならば、早いうちに次の主力顧客を育てる準備が必要です。
社員の多くは日々の仕事を回す活動で手一杯というのが実情ではないでしょうか。
中長期を見据えた問題に手をつけ、デザインしていくのは管理職の仕事に他なりません。
以上、管理職の仕事、4つのPについて説明しました。
「部下の管理」という仕事はない
管理職という表現が誤解を招くかもしれませんが、管理職の役割について尋ねると「部下の管理」と答える方が多くいます。
しかし実際のところ、「部下の管理」とは何を指しているのでしょうか?
もちろん出退勤管理とか、勤務態度を見るとか、業務進捗を管理するとか、部下の管理的な仕事はありますが、それは管理職の仕事の中のごくごく一部であり、補完的な仕事にすぎません。
よって、先程の4つの役割の中には「部下の管理」という業務はあえて入れていません。
部下の業務進捗を管理するのが仕事ではなく、部下が仕事で成果を出せるようPDCAを回しながらゴールに導くのが管理職の仕事だからです。
管理職の仕事は、部下を管理することではありません。
組織目標達成のために、部下を育て、力を引き出し、最大のパフォーマンスを出せるよう伴走するのが管理職の本来の仕事です。
管理職の役割を確実に遂行するために
上記4つのPを実践するのは容易いことではありません。
漫然と仕事をしていると、4つのPが1つもできていないなんてことにもなりかねません。
4つをバランスよく担うには、マネージャー自身の時間の使い方、PDCAのやり方などに工夫が必要です。
例えば以下のような観点で自分の型を持つことを意識しましょう。これによって仕事が格段にやりやすくなります。
自分の「仕事の型」を確立する
■ プレイヤー業務とマネジメント業務の時間を切り分ける(1週間の時間割を決める)
■ 業務の進捗の可視化、会議の開催方法の工夫によりPDCAを回しやすくする
■ メンバー1人1人と対話する時間を定期的に組み込む
■ 経営陣と密に連携をとりながら、将来に向けて何を行うかを普段から考えておく
■ 業界他社や他業種の人との接点を持ち、読書や学習を通じて、様々な情報をインプットする
■ 「重要度高、緊急度低」の問題を放置せずにリスト化、見える化し、何としても着手する意志を持つ
【参考】管理職の仕事の型を効率的に作り上げる方法は、こちらのシリーズを参考にしてください。
1. 時間管理編
2. 管理レポート編
3. 会議の開催・設計編
管理職の役割を分担する
一方で、管理職としての役割全てを1人で背負わせず、上手く分担することも組織として有効なアプローチです。
「マネージャーが本来の役割を担っていない!」「マネージャーの実力が足りない」
このような状態が何年も続いており、今後も解決する見通しがないならば、抜本的に変えるべき時かもしれません。
日揮さんの例
例えば、プラントエンジニアリング大手の日揮さんでは、従来部長が担っていた3つの役割を3人で分業する試みを始めています。(日本経済新聞より)
分業された3つの役割は以下の通りです。
役割1 リーダーとして中長期のビジョンを立案、実行する
役割2 部員の人材育成、キャリア開発を行う(人事施策にも関与)
役割3 プロジェクト管理
従来はこの3つを1人の部長が全て担う役割となっていましたが、カバー範囲が広すぎて「部長がつぶれてしまう・・・」との危機感から、1人の仕事を3つに分解し、3人で担うという方式に切り替えました。
その他、IT企業では、システム開発のプロジェクトマネジメント業務を外部委託し、社内の上司はメンバーの育成やサポート・自らのプレイヤー業務に専念しているケースもあります。
管理職に期待する仕事は何か?
その仕事がきちんとできているか?
できていないとしたらどのように補完するか?
このような視点で考えると、さまざまな解決方法があるのかもしれません。
まとめ
「管理職の役割とは何ですか?」
マネージャーに任命され、とりあえずマネージャーの仕事はしているものの、
マネージャーの本来の役割を認識できていないことが多くあります。
仕事の出発点はまず自分の役割を正しく理解することです。
あなたの会社のマネージャーさんたちに、「管理職の仕事とは、部下の管理ではなく、組織目標を達成すること」だと理解してもらいましょう。
さらに組織目標を達成するために、4つのPの仕事を適切に担うことが求められます。
企業はマネージャーが組織を成功に導くキープレイヤーであることを忘れず、彼らに十分なサポートと指導を提供していきましょう。
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