上司/部下間で1on1ミーティングを取り入れる会社が増えていますが、ときどき「 部下とのコミュニケーション をしたがらない上司 」がいます。
1on1の導入についてお客様と議論していると、現場の中間管理職から「月1回もやるんですか?そんな時間はありません!」という意見が出てくることがあります。
仮に毎週1回行うとしたら「時間的に負担」なのも分かりますが、月に1回すらできないというのはちょっと信じられません。
その「嫌がる理由」を深堀りしていくと、実は「時間がない」のではなく、別の問題があることが見えてきます。
今週のブログでは、上司/部下間のコミュニケーションがうまくいっていない会社の背景とその対策、効果的な1on1の方法についてお伝えします。
目次
必要最低限しか行われない「 部下とのコミュニケーション 」
あなたの会社の中間管理職は、どの程度、部下とコミュニケーションをしていますか?
よくあるパターンはこのようなものです。
①週1回の部署ミーティングの場で、順番に担当者を当てて進捗確認を行っている
②それ以外は個々の業務単位で日常的に会話する
②は、仕事時間中の「●●君、例の件、その後どうなってる?」「■■君、A社から先日のクレームの件は連絡あった?」みたいなコミュニケーションです。
それ以外にどのようなコミュニケーションをとっているか尋ねると、
- 一緒にランチに行って雑談する
- 一緒に外出する時に話をする
- ときどき飲みに行く
- 1日1回、雑談の時間をとっている
などが出てきますが、これらを行っている人はどちらかというと少数派です。
多くの管理職の部下とのコミュニケーションは、①②だけの業務に即した必要最低限のコミュニケーションにとどまっています。
部下の「上司に対する不満」
一方の部下は、上司に対して不満や不安、もやもやしたものを抱えています。
例えばこのようなものです。
- この仕事は「一時的にお願いする」と上司は言っていたのに、一体いつまで私が担当するんだろう?
- 自分のやってる仕事の中身を上司は分かっているんだろうか?
- 上司はこの部署をどのようにしていきたいと思っているんだろう? 全然それが見えない・・・
- 今の仕事は単純業務が多すぎて成長できないから、もう少し裁量のある仕事をさせてもらえないだろうか?
- もうこの会社を辞めようと思っているけど、上司は自分の不満を1ミリも理解していないだろうなあ・・・
このように部下が日常的に感じていたとしても、自分から上司に伝えることはありません。
上司との対話が少ないため、そもそも伝える機会がないのです。
この上司と部下の状態は、相互理解不足、信頼関係不足、相互関心不足と言わざるを得ません。
なぜ上司は月1回の1on1をやりたがらないのか?
「忙しい」を理由に月1回の1on1すらやりたがらない管理職がいますが、本当の理由は何でしょうか?
仮に1人の部下にMax.1時間割いたとしても、部下が5名なら月5時間です。
部下が10名いたらちょっと大変にはなりますが、1人30分とすれば月5時間で収まります。
管理職の大切な仕事に、「部下育成」「部下が最大限力を発揮できる環境づくり」「安定的で強い組織づくり」があることは誰も否定しないでしょう。
その仕事の一環として、部下一人一人と向き合う月5時間を割けないとしたら、一体いつやるのでしょうか?
月1回の1on1をやりたがらない管理職とよくよく話をしてみると、なぜ彼らがやりたがらないか、真の理由が分かります。
真の理由は、実は時間の問題ではありません。
「部下と1対1で向き合うのがこわい」
「何を話していいかわからない」
「不満をぶつけられても困る」
「部署の問題を指摘されても自分では解決できない(だからそういう問題提起される時間を持ちたくない)」
このように、上司側の不安や自信のなさによるものです。
人によっては「部下の育成って俺の仕事なの?」とそもそも論からずれている人もいます。
「優秀な部下さえ採用すれば、指導しなくても勝手に覚えて結果出してくれるでしょ」と都合の良い青い鳥を待ち続け、青い鳥がいない現実から目を背けている人もいます。
管理職の「忙しいから無理」という理由を真に受けて1on1実施を見送るのは、会社にとって非常に残念な判断です。
会社は、部下の育成のためだけではなく、上司にも育ってもらい、上司に自信をつけてもらうためにも、上司と部下が1対1で向き合う時間を確保する必要があります。
1on1の効能
1on1ミーティングが注目される理由は、上司/部下間のコミュニケーション不足を補い、両者の信頼関係づくり、部下の成長、エンゲージメント向上、組織活性化などを実現するためです。
上司の中には部下との1対1のコミュニケーションを不安を抱いていたり、自分から部下の育成に関わろうとしない人いるため、あらかじめ実施ルールを決めて、強制的に部下とのコミュニケーションの場を用意するのが望ましいです。
単に会話するだけの場とせず、目的に応じた対話をしっかり行えるよう、ミーティングの型を決めて実施してもらいましょう。
例えば、実施頻度と1回あたりの標準時間を定め、話す内容も以下のようにあらかじめ定めます。
1on1のルール設定
実施頻度:月1回
実施時間:1回あたり45分程度
- 軽い雑談
- 目標に対する振り返りと対策
- 業務上の課題、困りごと
- 職場環境、人間関係など
- 上司による方針や考え方の説明、アドバイスなど
- その他(将来キャリア、心身の健康、仕事と生活のバランスなど)
シンプルな心構えを明示しておくのもおすすめ
1on1を実施する際の心構えも明示しておきましょう。
- 上司は基本的には聞き役。自分ばかりしゃべらない
- 説教の場ではない。自分の考えをおしつける場でもない
- まずは部下の話を受け止める
このように実施ルールを定めていざ開始!としたら、必ず継続的に実施してもらいましょう。
実施した結果は、簡単な備忘録として残してもらうと過去の振り返りがしやすくなります。
さらに上司には段階的にコーチングの基礎などを学ぶ機会も提供したいところです。
上司/部下間の1on1ミーティングのメリット
会社に定期的な1on1の場があれば、上司と部下の双方にメリットがあります。
部下:日常業務のもやもやしたことや普段言いづらかったことを伝えられる。自分の仕事を定期的に振り返る機会になる。上司をよく知ることができる。
上司:日常活動の中で改まって伝えるのは難しい内容でも、1on1の場であれば話しやすくなる。部下の考えていることが見えてくる。どのようにサポートすればよいかが見えてくる。
まとめ
上司/部下間のコミュニケーション頻度とその中身は、「社員の成長、モチベーション、エンゲージメント、定着、チーム活性化」などに大きく関係します。
マネジメント経験の少ない上司は部下と1対1で向き合うことを避ける傾向がありますが、それを放置すると会社全体の組織力が減退しかねません。
部下とコミュニケーションをしたがらない上司の不安や自信不足も認めた上で、上司のマネジメント力を育てるためにも部下と向き合う大切さを伝え、克服する場として1on1をきっかけにするのがいいでしょう。
少しでも早く慣れるように、今回紹介したような1on1の標準的な進め方・内容を設計し、まずはそれに沿って試験運転してみるところから始めてみましょう。
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