飴とムチは通用しない?子育てから学んだ「 若手社員のやる気を引き出す方法 」

2020.10.01

新型コロナウイルスは、私たちの生活についても色々と考える機会を与えてくれます。

私自身も幼稚園が休園になった子どもとの在宅勤務を経験し、子育てについても考えました。

今回は子育てとも通じる、若手社員のやる気を引き出すポイントを紹介します。

 

アメとムチによる子どもへの影響

子育てをしていると、つい使ってしまうのがアメとムチです。

  • (アメ)「ピアノの練習をしたら、お菓子を食べていいよ」
  • (ムチ)「お父さんの会議中は静かにしていないと、あとで一緒に遊んであげないよ」

アメとムチを多用すると、どの様な子どもになるのでしょうか?


人が物事に取り組むための動機には2つの形があります。

  • 内発的動機:好奇心や関心など自己の内部からもたらさられる動機、継続性が高い
  • 外発的動機:義務、賞罰、強制など外部からもたらされる動機、継続性が低い


今回の例に当てはめてみましょう。

「ピアノの練習をしたら、お菓子を食べていいよ」と言われた子どもは

気分が乗らない時でもお菓子というご褒美に釣られてピアノを弾くようになってしまうかもしれません。

この行動を繰り返すと、子どもはやがて「お菓子を獲得する手段としてのピアノ」という考えに陥ります。

ピアノが好き、ピアノを上手く弾きたいという『内発的動機』でピアノを始めた子どもが、

お菓子を得るという『外発的動機』でピアノを弾くようになってしまう、ということですね。

外発的動機には即効性がありますが、継続性が低いため問題の根本的な解決にはなりません。

同じような現象が、皆さんの職場でも起きていないでしょうか?

 

やる気のない社員を育ててしまう!おそろしいアメとムチ

若手社員のやる気を引き出す方法

社員が仕事にやりがいを感じなくなる原因の1つに、アメとムチによる管理があります。

経営者や上司は自分の仕事もあり忙しいため、若手社員に大雑把な指示だけで仕事を与え、後は結果のみで評価してしまう。

  • 良い結果の社員には高い評価(アメ)を与え、良い結果の継続をうながす
  • 悪い結果の社員には低い評価(ムチ)を与え、挽回をせまる

在宅で働く若手社員を信用できず監視する行為も、広い意味でムチによる管理です。

仕事観(仕事をする目的)が固まっていない若手社員に対しアメとムチの管理を多用すると、

関心の対象が『仕事(やりがい・楽しさ)』から『アメとムチ(評価や待遇等)』に移る危険性があります。

また『ほめて育てる』という話もよく聞きますが、ほめられることがご褒美(アメ)になる危険性もあるのです。

 

ほめ方のコツ 相手の内発的動機を引き出そう

ほめ方の違いで、子どもへの影響が大きく変わるという話を目にしました。

主な違いは、ほめる対象(結果・人・プロセス)の違いです。

  1. 結果をほめる(成績・成果・出来ばえ)
    弟の面倒を見てえらいね。難しい問題が解けてすごいね。

  2. 人をほめる(性格・能力・才能)
    お姉ちゃんだから優しいね。難しい問題がとけるなんて賢いね。

  3. プロセスをほめる(努力・姿勢・やり方)
    弟のことを注意深く最後まで見て、助けてくれたね。
    難しい問題だけど最後まであきらめず、色々な方法を試して解けたね。



結果だけをほめられた子どもは、取り組みへの興味が下がり、ほめてもらうために結果を出すことが目的になります。

そのため、難しい問題や目標への挑戦心も、生まれづらくなるのです。

能力や才能(人)をほめられ続けると、他者からほめられる(認められる)ことでしか自分の価値を捉えられなくなります。

そのため、ほめられないと自信が持てなくなるのです。

また努力の有無に関わらずほめられると、努力する必要性を感じなくなります。

一方、努力や姿勢(プロセス)をほめられると、失敗しても他の方法を試したり、工夫を凝らしたりして、努力し続けるようになります。

結果や才能ではなく、プロセスの大切さを理解しているからです。

つまり『結果』や『人(才能・能力)』ではなく『プロセス』をほめることが、ほめてやる気を引き出すためには重要なのです。

 

アメリカの小学生(10-12歳)を対象とした調査でも、ほめ方による影響の違いが証明されています。

 

若手社員のために、皆さんができることは?

市場全体が成長していた時代は、アメとムチ(外発的動機)で社員に期待する行動をうながせば、上手く結果(会社と個人の業績や成長)に繋がっていたかもしれません。

一方、環境変化が激しくなる時代では、社員一人一人が自律して顧客や環境の変化を捉え、柔軟に対応することが求められます

社員をおだてても、今求められている人材に育つことは難しくなっています。

社員が自分の仕事にやりがいを感じられるよう、ほめ方を工夫してみませんか?

「いままで怒ってばかりいたのに急に社員のことをほめたら気持ち悪がられる」と、しり込みされている社長さんや上司の方がいるかもしれませんね。

でも、考えてみてください。

ただプロセスをほめるということは、あなたから見た社員一人一人の仕事への姿勢を素直に共有するだけのことなのです。

人(能力や才能)や結果をほめるよりも、ずっと自然なことではないでしょうか。

そしてきっと、彼らも自分の取り組みを認めてくれたあなたをより信頼してくれるようになるでしょう。

 

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筆者紹介

株式会社インターブリッジグループ マネージャー

大西隆仁

幅広い企業に対して、課題の特定から解決まで長期的な視点で支援しています。企業理念再整理やビジョン策定、実現に向けた戦略立案、遂行に向けた変革活動に対し、クライアントに伴走する形で関わらせていただいています。

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