OJT と称して「現場に放り込むだけ」になっていませんか?OJTで必要な7つのポイント

2021.06.10

人材育成の王道は「 OJT 」(On-the-Job Training)です。
実際の業務を通じて能力を伸ばし、一人前に成長していくことです。

しかし一言でOJTと言っても、組織によってそのやり方は千差万別です。

OJTという名のもとに、単に現場仕事に放り込むだけで、あとは本人が勝手に育つのを待っている職場もありますが、それは効果的なOJTとは言えません。

OJTは工夫とやり方次第で、成長速度が格段に上がります。

 
今週のブログでは、「社員が育つのを座して待つOJT」ではなく、「能動的かつ効果的に育てるOJT」のやり方についてお伝えします。

 

効果的な OJT にするための7つのポイント

 

ここでは、「美容院やエステサロン向けの顧客管理システムを販売するA社の営業職」を例に、同時期に中途採用で入社した3名のOJTを題材に話を進めていきます。

A社では、新しい営業スタッフが入ってきたら最初に初期的な研修(仕事の流れ、商品の説明、営業の進め方など)を行い、その後OJTがスタートします。

このOJTが有意義なものになるように、その効果を上げるポイントを見ていきましょう。

 

ゴールを設定する

 
OJTをスタートする前に、先に伝えておくべきことを忘れてはなりません。

それは業務の習得に関するゴールについてです。

漫然とOJTをスタートさせて「できるだけ早く仕事を覚えてくださいね」というだけでは、計画的な業務習得が進みません。

A社では「3ヶ月後には単独で営業に行き、受注をとれる状態になってください。」という具体的な時期とレベルのゴールを設定しています。

さらに、

 
このように「ゴールに向けてどのような手順で業務を覚えていくのか」という具体的なステップを示しましょう。

 

仕事の原理原則を可視化する

 
どこの会社においても大切にする理念や考え方があると思います。

それについては口を酸っぱくして伝えるのが当然ですが、口頭だけに頼らず、常に持参するカードや資料として渡すなどして、いつでも見返せるようにしておきましょう。

例えば、

  • 顧客のピークタイム(かき入れ時)には連絡を入れない
  • 顧客の売上拡大につながらない提案(自社の商品を売るためだけの提案)はしない
  • 3回断られてからが真の勝負


これらの「営業上大切にする姿勢、遵守すべきこと」などを文書としても渡しましょう。

 
業務基本マニュアルのような教材もあると、一段とOJTの効率が上がります。

美容院での商談は先方が忙しく立ち話になることも多いので、いかに短い時間でコミュニケーションをとるかが大事です。
そのようなシチュエーションにおける商談のコツを、マニュアルにまとめておくというのは非常に有効な方法です。

 

上司や先輩が見本になる

 
OJTの初期においては、上司や先輩の商談に同行することがあると思います。

実際の商談の場を隣で見るのは最高の生きた教材です。

初回商談、提案、クロージングなどそれぞれのステップの商談に同席すると、一連の流れが理解できます。

同じ人の商談ばかり見るのではなく、何人かの商談を見てそれぞれのやり方を学べると一層効果的です。

 

フィードバックをこまめに行う

 
指導役から本人に対するフィードバックをこまめに行うのも効果的です。

例えば上司の商談を見学したら、その時の感想を尋ね、疑問に感じたことを質問してもらいましょう。

上司の側から、「今日の商談でお客様はどのような印象を持ったと思いますか?」というように問いかけ、本人に考えてもらうのも良い方法です。

本人が行う商談に上司が同席した場合は、商談後すぐに、商談の感想や改善すべき点などを伝えます。

時間を空けず、記憶が鮮明なうちにフィードバックをしましょう。

 

振返りノートを提出させる

 
定期的に本人が習得状況を振り返るために、振り返りノートを書いてもらいます。

例えば1週間毎に、

  • その週で具体的に何を習得したか、どのような点で成長したか
  • どのような課題が見えてきたか
  • 次の1週間は何に注意するか


これらを書いて提出してもらいます。

ちゃんと書面に残し、上司に提出するという所がポイントです。

単に口頭のやりとりで「先週はどうだった?」と聞かれるより、内省が深まります。

振り返りノートは出しっ放しにせず、上司がしっかり内容を確認し、翌週に向けた指摘やアドバイスを行いましょう。

 

更に効果的なのは、同時入社3人の振り返り内容をお互いに共有できる状態にしておくことです。
それぞれの習得状況や感じたことを確認し合えるようにすると、

他者の課題から自分も学び、刺激を受け、悩みを共有し合う相乗効果があります。

 

勉強会を開く

 
同時入社3人と上司や先輩で勉強会を開くのも効果的です。

A社の商品は利用料に応じて様々なサービスがあるため、それぞれのサービスの特徴を覚え、お客様に分かりやすく説明するのが大変です。

その点において3人の中で最も習得の早い aさんに勉強会で発表してもらいます。

この勉強会のメリットは

  • aさんにとっては自分が習得したコツを改めて整理して考える機会になるので、いっそう理解が深まる。
  • 他の2人は aさんのやり方を学ぶことで成長が加速する。

 
他の2人にも自分の得意な部分をテーマに、ぜひ発表してもらいましょう。

勉強会で自ら教える立場になることにより、一層主体的に仕事を覚え、一人前になろうという姿勢になる効果もあります。

 

独り立ちさせる

 
当初定めたゴールでは「3ヶ月後に単独で営業に行き受注できるように」となっているので、段階的に手を放していくステップも考慮しなければなりません。

自信がなくていつまでも上司や先輩に頼る人もいますが、手を差し伸べ過ぎると逆に成長が遅れることもあります。

「可愛い子には旅をさせろ」の気持ちで時期を見て突き放し、自らもがく試練を与えましょう。

 

効果的な OJT まとめ

 
以上、OJTにおいて成長を促進するための具体的な仕掛けについて述べてきました。

この進め方はある教育理論にもとづいたステップでもあるので、その理論を最後にご紹介します。

 

コリンズの認知的徒弟制理論

 
「人がその道のプロになるためには、1人の力では限界がありで、外的支援を受けて独り立ちしていく仕組みが必要」という教育理論です。 

OJTという名のもとに見よう見まねで業務に取り組ませるだけでは、成長に時間がかかります。他者が関わって、様々な方法、ステップで育成を支援することで成長が促進されます。

この理論では以下のステップが提唱されていますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

OJT

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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