「 人が足りない 」という言葉をよく聞きます。人手不足が続き、企業の人材採用意欲は相変わらず旺盛ですが、私は少し違和感を感じています。
理由のひとつは、既に景気の変調が見えているのに「そんなに採用して大丈夫?」という単純な疑問です。
違和感を感じるもうひとつの理由は、人員を増やすことのマイナス面があまり考えられていないように思うからです。
そもそも「 人が足りない 」とは?採用する理由は何か
私は「人を採用したい!」という企業があったら逆に尋ねます。
「仮にこの採用を取りやめたら、どのような問題が生じますか? 何を実現したいですか?」と。
そうすると意外と答えに窮する方が多いです。
出てくる理由といえば、「欠員が出たから」「景気がいいから」「人が足りなくて現場が大変だから」といった、根拠としては曖昧なものです。
「欠員が出たら人員を補充」「現場が大変なら人を補充」・・・本当にその必要があるでしょうか?
欠員が出た時は、それをきっかけに業務の流れを見直す、無駄な仕事をなくす、外部活用するなど、見直しをする良い機会です。
現場が大変な場合は、人員補充の前に、その理由を探すことです。
すると多くの場合、人手不足に起因しない別の理由で現場が混乱している事が判明します。
人員を増やすマイナス面
人員を増やすと実は色々なマイナス面があります。
- 人員増につれて仕事を細分化、分業化、単純化していくので、社員一人一人の責任範囲が小さくなり、能力が高まらず、仕事もつまらなくなる
- 細分化、分業化すればするほど、その間に落ちる業務や責任不在が生じ、逆に調整的な仕事が増えていく
- 構成メンバー同士のコミュニケーションが薄くなり、組織の活力が減退する
これらに対して、私は人を増やさないプラス面を重視すべきと考えます。
- 例え小さな範囲でもいいから、社員それぞれが何らかの責任と裁量をもち、自ら考え工夫して働く
- 人員を少なめに配置して繁忙感を出すことにより、どうやって負荷を減らすか、無駄な仕事を省けるかを考えながら仕事してもらう
こうしていくことで、結果として、人に意欲が芽生え、能力が高まり、会社の業績につながるのです。
少人数で高い成果を出したら、その分給料もアップすればいいと思います。
逆に、誰でもできる仕事、頭を使わない仕事をする人がたくさんいて、生産性が低く給料も低いという組織は発展性がありません。
細分化、単純化して効率化できるメリットもありますが、もうそれ一辺倒から脱却していく時ではないでしょうか。
人は任されると潜在力が開花する
ドン・キホーテの創業者である安田さんの本『 安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生 』に書かれていました。
店舗拡大し始めた頃、店舗運営を幾ら指導したところで店長がその通りやってくれない。
しょうがないから好きにやれと全権委譲したら、店長達が自ら工夫して地域や顧客特性に合った運営をするようになり、業績も拡大。
結果としてこのスタイルがドン・キホーテ成長の礎になりました。
※ちなみにこの本は、独自の業態を一代で切り開いた方ならではの波乱万丈活劇風自伝で、とても面白かったです。
人は「任されると能力を発揮する」ポテンシャルを秘めています。
断片的な仕事、やらされ感たっぷりの仕事では力が埋もれたままだけど、自ら責任を持ち見る範囲が広がると急にイキイキ能力を発揮し、そこからグイグイ成長していく生き物だと思います。
まとめ
下図は私が行う講演用に作成したものです。
少子化、テクノロジーによる人間の仕事の代替が進む中で、日本企業及び日本人が向かうべき方向について考えてみました。
その方向とは、今までと同じ成果をより少ない業務量で成し遂げる道。
そのために人の仕事のあり方を変革する道です。
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