社員の力を引き出す事業計画の作り方

2019.03.28
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年度替わりのタイミングになると新年度の事業計画を練り、社員全体に発表する会社も多いと思います。

ここ最近は私も何社かのお客様と共に事業計画を議論しておりますが、いい事業計画を考えるのは本当に大変です。

社員に対して事業の方針を明確に伝え、社員の力を引き出し、導いていけるような
「いい事業計画」とはどんな計画でしょうか?

 

いい事業計画とは?

1つ前提をお伝えしておきます。

ここで議論する事業計画は、

  • 事業計画作りに慣れていない経営陣や事業部長が、
  • 事業を伸ばすための計画を真剣に考え、
  • その計画を社員にしっかり理解してもらい、
  • その計画をちゃんと実現できるよう社員の気持ちを導いていく

ための計画を前提とします。
全社ミーティングなどで、社員向けに全体発表することも想定します。

銀行や投資家への説明に使う事業計画などは含みません。

 

 

まず最初に、「いい事業計画とはどんな計画でしょうか?」

いい事業計画は5つの特徴があると思います。

  1. 現場・現実に根差した課題がしっかり分析され、それに紐づいている
  2. なぜそれをやると成長できるかの根拠、シナリオが具体的でストーリーがある
  3. 夢、中長期の発展性、可能性が感じられる(ワクワクする)
  4. 目標数値、それを測るプロセス数値が具体的
  5. 誰が何をやるか明確で、聞き手が自分事に落とせる

 

「事業計画の書き方」みたいな本を読むと、もっとテクニカルな検討項目が詳細に定義されています。

たとえば、市場分析の方法(市場規模、顧客動向、競合状況、技術動向)、SWOT分析、収支計画、設備投資計画、資金繰り、人員計画などのやり方について。

 

もちろん余力があれば教科書通りの事業計画でも構いません。

 

しかしながら、中小企業の限られた人員と限られた時間の中で、立派な事業計画を作ろうとすると、多くの場合尻切れトンボになったり、逆に詳細すぎて社員の心に響かない場合が多いです。

SWOT分析などは、教科書通りにやると総花的になり、「で、結局のところ何をやったらいいの?」というアウトプットに陥りがちです。

 

先の5つの特徴がちゃんと満たされていれば、あまり体裁や格好良さは気にしなくていいと思います。

お客様の声、現場社員の声をしっかりと聞き、真剣に考え抜くことのが方が、体裁の何百倍も重要です。

 

いい事業計画とそうでない事業計画の違い

事業計画例(その1)

先に一つ、あまり響いてこない今一つの事業計画サンプルを見てみましょう。

<会社事例> 病院向けシステム開発会社
<事業内容> 病院の事務業務効率化に関わるシステムの受託開発

【事業計画】

・新年度売上〇億円、利益〇億円の達成

・営業強化。接触頻度を高め、お客様のニーズをもっとよくつかむ

・見積もり精度の向上、プロジェクト採算管理の徹底。プロマネの育成

・営業とエンジニアの密なコミュニケーション

・顧客満足度、従業員満足度の向上

・他

 

いかがでしょうか?

あなたから見て上記の事業計画はどのように評価できますか?

 

 

事業計画例(その2)

続いていい事業計画のサンプルを見ていきましょう。

先ほどのよくない事業計画と同じ会社を例にしたものです。

  

<現状の課題と機会>

・クラウドのシステムなどが増えた影響で受託案件や金額が徐々に減少。業績確保に苦労している

・新規開拓しようとしても既に取引している会社があり入り込みにくい

・一方で病院の事務局長から情報セキュリティや防犯上のセキュリティなどで困っている話をよく聞く

<方針>

・病院のセキュリティ領域を強化

・ITセキュリティならびに物理的な資料管理や防犯などセキュリティ全般を解決できる会社になる

・従来のように全て自社開発のシステムではなく、他社製品の販売パートナーと自社開発を併用し、病院に最適な提案を行えるようになる

<具体策>

・営業三部からセキュリティ分野の営業をスタートし、年後後半から他部署にも展開

・新たに商品企画部を設置し、〇〇さんと□□さんが当面担当。提携商品や企画提案商材などを揃えつつ、営業三部のメンバーに徹底教育

・当面は既存顧客に提案していく

・従来型の受託開発業務は既存顧客の継続もしくは○○円以上の案件以外は受けない

・管理部は業界経験者など必要人材の確保、新たに防犯機器などモノを扱うので、それに向けた対応策

<数字目標>

・今年はセキュリティ領域で〇億円、従来領域で〇億円。来年は比率を半々。再来年はセキュリティ領域で7割以上まで持っていく

 

2つの事業計画の違い

同じ会社の2つの事業計画を比較してみて違いはいかがでしょうか?

前者の事業計画で言っている1つ1つの内容は大事なことです。

しかし、去年も一昨年も事業計画に毎年書かれていそうな内容です。
総花的すぎて、メリハリが感じられません。

それ以上に大きな問題は、ストーリーが見えないことです。

なぜ今年の事業計画にその内容を入れることにしたのか?
この背景がわからないため、社員も腹落ち感が弱く、自分事に置き換えることが難しいです。

 

いい事業計画例の特徴

後者の計画には、先ほどの「いい事業計画の5つの特徴」が入っています。
事業の置かれている環境から施策までの繋がりがあります。

既存のやり方で順調ならいいですが、徐々に売上が落ち、反転する気配がない以上、具体的な対策が必要です。

 

前者の事業計画では採算管理の徹底などが主役になっているので、じり貧のスピードを遅らせる効果にとどまります。

その状況で粘り強く頑張ることは否定しません。
しかし、どう脱却するかを真剣に考え、その次の展望を打ち出さない限り、
社員が目の色を変えて頑張ることは考えにくいです。

 

事業計画は経営の大切な役割

事業計画を作る過程では、最前線の社員の声をよく聞き、顧客との対話、交流も欠かせません。

しかしそれらの情報を踏まえて最終的にどの方向に舵を切るか決めるのは社長や経営幹部たちの最も大切な仕事です。

事業計画は上に立つ人達がどれだけ事業の行く末を真剣に考え、実現しようと思っているかの証でもあります。

その考え抜いた計画は、社員が理解しなければ意味がありません。
いかに計画をわかりやすく伝えられるか。行動変革につなげられるか。

「いい計画ができた!」で満足せず、社員に伝えるステップまで細心の注意を払うのが、優れた事業計画の真髄だと思います。

 

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筆者紹介

竹居淳一
株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

中小ベンチャー企業が「人材の力を最大化して企業ビジョン・目標を実現」できるよう、社員をぐんぐん成長させ、組織の活力を高める「社員力倍増!ツドイカツヤクコンサルティング」を提供しています。

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