仕事の能力の1つに「 巻き込み力 」というものがあります。
改善活動を行なったり、新しいプロジェクトを動かしたりする時に、周囲の人材を巻き込んでまとめ、「チーム」として進めていく力のことです。
日常業務を進める上ではさほど必要とされる能力ではありませんが、組織に何らかの変化をもたらしたり、会社が次のステージに上がっていく時には必ず求められる能力です。
成長企業においては必須の力と言えるかもしれません。
今週のブログでは、この大事な「巻き込み力」を高めるにはどうしたらよいか?という内容でお伝えします。
目次
巻き込み力 とは?
仕事は1人の力では限界があります。
周囲の人の協力が必要です。目標に向けて共に走ってくれる人材が必要です。
このとき、無理矢理協力させるのではなく、嫌々手伝ってもらうのでもなく、周囲の人が自発的に協力してくれる状態を作ることが「巻き込み力」です。
仕事を協働して進める場合、能動的なチームでは、様々な問題が発生しても皆が「私がやりましょうか?」というスタンスなので、スムーズに進んでいきます。
一方、受け身の参加が多いチームの場合、何か問題が起きても自分から動こうとする人がいません。
「指示をされたら動く」という待ちの姿勢なので、1人のリーダーに大きな負担がかかり、結果として上手く進みません。
「人を巻き込むのがうまい人」というのは、周囲の人の信頼と協力を獲得するスキルが高く、能動的なチームをつくることができる人です。
巻き込み力 の正体 4つの特徴
では「巻き込み力が高い」とはどういうことでしょうか。
巻き込まれる周囲の側からすると、「その人に頼まれたら断れない」「その人なら協力してあげたい」「そのチームなら是非自分も参加したい」と思えるかどうかだと言えます。
巻き込み力が高い人に共通するのは以下4つの特徴です。
1 普段の仕事の姿勢がいい・熱意がある
2 良好な関係づくりができている
3 伝える力がある
4 自分のためでなく相手のために動く
1と2は日常の仕事で培っておくもの、3と4は巻き込む段階になって求められることです。
詳しく見ていきましょう。
普段の仕事の姿勢がいい・熱意がある
普段からいい加減に仕事をしている人が周囲に何かを頼んでも、「ぜひ手伝おう」という気持ちにはなってもらえません。
常日頃から仕事に真摯に向き合い、情熱をもって取り組んでいる人は、周囲の人の心を打ちます。
当たり前のことかもしれませんが
- 1つ1つの仕事に真剣に取り組む
- 結果にこだわり、粘り強く取り組む
- 他責にせず、自己責任の意識をもって主体的に取り組む
これらの姿勢が大切です。
少し厳しい言い方になりますが、この取り組み姿勢が欠ける人は周囲を巻き込むことは不可能です。
頼むときだけ絶妙なトークで誘ったところであっさり見透かされてしまいます。
良好な関係づくりができている
巻き込み力の高い人は周囲との良好な関係づくりを大切にします。
上司、部下、同僚、社内外、誰に対しても分け隔てなく接し、日常のコミュニケーションをしっかりとっています。
特定の人とばかりつながりが強く、いつも同じメンバーで飲みに行くような人がいます。
そういう人の「巻き込み力」は実は高くありません。
なぜなら、仕事でよい結果を出すには、特定の仲間内だけでは歯が立たないからです。
年齢性別や所属部署などに関係なく、様々な人と協力してこその成果なので、普段から関わる人達と広く良好な関係を築いておきましょう。
良好な関係のつくり方は、それほど難しく考える必要はありません。
特別に面白いキャラクター性や愛嬌がなくたって大丈夫です。
必要なのは次のような姿勢です。
- 普段から職場の人にきちんと笑顔で挨拶し、顔を合わせたら少しでもいいので雑談する。
- 困っている人がいたら声をかける。仕事で関わる人とは丁寧に接する。
- 職場の人の悪口は言わない。変な噂話には関与しない。
- 威張らない。相手によって態度を変えない。
- もし迷惑をかけたらきちんとお詫びする。
このようなことを普段からしっかり行っていれば、職場において十分に良好な人間関係をつくることができます。
伝える力がある(例文つき)
周囲を巻き込むためには、相手にメッセージを伝えるところから始まります。
そのメッセージが相手の心にしっかり届き、前向きな気持ちを引き出すためには、「伝える力」が問われます。
「伝える力」として求められるのはこの3つです。
① わかりやすくシンプルに伝える
② 背景・目的を伝える
③ 自分の気持ちを伝える
例えば、これまで事業計画を立ててこなかった会社が、現場主導で事業計画を作る場合を考えてみましょう。
各部署の責任者に大いに協力してもらわねばなりませんが、全員が計画づくりは初めてで「ちょっと面倒くさそう」という印象を抱いているとします。
このとき、事業計画作成の推進役である事務局から関係者へのメッセージとして相応しいものを考えてみましょう。
最初に悪い例を示します。
社長からの指示により来年度に向けて事業計画を作ることになりましたので、皆さんご協力をよろしくお願いします
これは事務連絡にすぎません。このメッセージでは心が1ミリも動きません。
何のためにやるかもわからないし、「社長の指示により」やるという主体性のなさも皆を幻滅させます。
このような伝え方にしてみましょう。
『当社の未来を切り開く事業計画づくり』についてお伝えします
ポイント① わかりやすくシンプルに今回進めることを表現しています
これまでの当社は特に事業計画など作らず、目の前の仕事を1つ1つ大事に取り組むスタイルでしたが、お客様の支えにより成長してこられました。
しかし市場環境の変化により各事業は頭打ちになっています。今こそ成り行きの仕事のスタイルを脱し、自ら将来をデザインして、それに向かって全社一丸となって突き進む時期にきていると思います。
つきましては「来年度の事業計画」を現場の皆の力を合わせて作ることになりました
ポイント② 背景、目的がしっかり説明されています
未知の仕事なので、私自身どのように進めてよいか戸惑っているのが本音ですが、皆さんの力を結集すれば必ず実現できると思っており、私自身推進役として本気で取り組む覚悟です。
皆さん大変お忙しい中ではありますが、『当社の未来を切り開く事業計画づくり』へのご協力をよろしくお願いします
ポイント③ 自分の気持ちをしっかり伝えています
全体的に「事務局としてこれから進める事業計画の仕事」を自分事として捉え、何のためにやるか腹落ちし、自分の言葉で皆を巻き込もうとしています。
当事者意識が明確であるからこそ、言葉に力があり、それが巻き込みの原動力となります。
なお上記の例は巻き込む入り口の話ですが、プロジェクトが進む間は常に巻き込み続ける必要があり、情報共有が大きな鍵となります。
状況が変化したならばきちんとその説明を行う説明責任が重要です。
情報はタイムリーでなければなりません。
一部の情報だけ隠して伝えようとしても相手に真実が伝わらず共感も得られません。
できる限り広く公平かつ透明に情報をシェアし続けることも「伝える力」の大切な要素です。
自分のためでなく相手のために動く
巻き込む当事者が「自分のため」に巻き込もうとすると相手は興ざめします。
営業リーダーが自分のインセンティブを増やすために部下の協力を仰ごうとしたところで、誰も協力したくないですよね。
誰かを巻き込むには「相手のためになる」必要があります。
例えば、相手がそのプロジェクトに参加することで良い経験が得られるとか、いい人脈づくりができるといったメリットは大きな力になります。
しかし相手に直接的なメリットがなくても構いません。
会社全体が良くなることは全社員にとっていいことなので、参加することで全社に貢献できると思えば、参加したいと思う人も多くいるでしょう。
負の遺産の処理プロジェクトなど後ろ向きの仕事の場合、「相手のためになる」とは言えないかもしれません。
その場合は「とても苦しいプロジェクトになるけど、何とか●●さんの力を貸してもらえないか。この恩は必ずどこかで返します」と頭を下げてお願いすることもあるでしょう。
どんな場合であっても、巻き込む時に忘れてはならないので、相手を尊重するという姿勢です。
自分本位であったり、相手の立場や心情を汲み取らず巻き込もうとしては上手くいきません。
まとめ 巻き込み力 を高めるには?
巻き込み力の高い人の4つの特徴を見てきました。
巻き込み力が高い人になるためには、まず日常の仕事から意識する必要があります。
どんな仕事にも情熱をもって真摯に取り組み、周囲の人(上司、部下、同僚、社外も)と良い関係性を築いておいてください。
いざ周囲の人を巻き込む時には、物事をわかりやすく伝え、背景・目的から目指すところまで、情報を余すところなく丁寧に伝え切る必要があります。
そして何よりも周囲を巻き込むためには相手の心情を慮り相手を尊重しましょう。
相手に対し「あなたは巻き込まれて(参加して)当然!」という発想は決して持つことなく、巻き込まれてくれる人に感謝する気持ちを忘れてはなりません。
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