幹部候補人材をいかに育てていくかは企業の長期的発展の生命線と言えます。
今回は視点を転じて海外の幹部育成を見てみたいと思います。
お隣中国の共産党の幹部人材育成システムについてです。
中国共産党は党員1億人以上を抱える巨大組織。
その権力闘争の激しさたるや日本の官僚機構など比べ物になりません。
権力闘争が激しいため幹部がよく失脚させられますが、後釜に次々逸材が上がってくる人材の厚みがあります。
それを支えるシステムはどのようになっているのでしょうか。
目次
幹部候補はドサ回りしながら競争を勝ち抜く
中国共産党の幹部育成は、
その特徴は以下の3点にまとめられます。
・シンプルな目標(各地域のGDPなどの数字)
・ドサ回り(地方政府を転々と異動)しながら成果を出し続ける競争システム
・優秀な人材の抜擢
日本の国家公務員キャリアに相当する中国共産党の役人達は、地方転勤や
異動の度に各地で成果を上げ続けられる、
幹部候補人材の厚みを目の当たりにしたエピソード
重慶市の凄腕副市長
私が中国にいた時に、
2013年に重慶市を訪れた際、
ところが市長が何かの都合で来れなくなり、代わりに副市場の講演となりました。
代役なので大した話は聞けないだろうと思っていましたが、
副市長の迫力、話す内容の深さ、鋭さが凄かったのです。
日本の副知事くらいのスピーチをイメージしていた
経済の話が中心でしたが、市の産業別GDP目標、環境対策、
何も見ずに現状→課題→目標数値→対策などを、「立て板に水」
プレゼンテーション力、構想力、
江蘇省塩城市若手幹部の部下マネジメント
2つ目は、2014年に江蘇省塩城市という中規模都市の幹部と会食した時の事です。
当時、塩城市と私のいた上海の会社が業務提携を行い、
幹部は若くして抜擢された方で、部下には年上もいます。
円卓で和やかに乾杯を繰り返し、盛り上がってきた頃、
お酒をつぎながら、1人1人の役割、仕事ぶり、
その表情は部下への信頼、愛情に溢れており、
普段はとても厳しく仕事の要求も厳しい方です。
しかし宴会の場ではこのように振る舞い、組織の結束力、
当然演技の部分もあったかもしれませんが、
部長クラスといえ共産党の幹部は自分が受け持つ範囲のGDPや企業誘致の数など、
その数字を達成しなければ上に上がっていけません。
無理難題とも言える数字を達成するには、
上へのゴマすりも当然やりますが、
仕事の能力や実行力は勿論のこと、人望や継続力、
この強烈な育成システムを経る過程で、
日本における幹部候補人材の育成との違い
日本の大企業の人材育成システムには一部似たところがあります。
ジョブローテーションで色々な部署をまわり、
ただし共産党の仕組みと大きく違うのは、
どちらかというと“任期をつつがなくこなした”とか、
上司にゴマする一方、部下にはふんぞり返っている方が散見されるのも日本の特徴です。
中小企業の場合、頻繁なジョブローテーションは真似できませんが、
・明確な数値目標(かつ目標レベルが高い)を与えているか?
・
・成果を出したら更に抜擢し、
・組織の力を束ねて成果を出す仕事をやらせているか?
・幹部候補生にライバルはいるか? いなければ己を客観的に知る機会を与えているか? もしくはライバル人材の育成や採用を行っているか?
幹部候補人材の育成は運頼みにしない
幹部候補人材は放っておいてもなかなか育ちません。
稀に放っておいて勝手に育つ人もいますが、運頼みであり再現性がありません。
人材輩出企業と言われるリクルートさんは、
幹部候補がどんどん生まれる会社になるには、人が育つ仕組みが必要です。
ただ漫然と仕事をやらせるのではなく、仕事の与え方、権限、目標設定、競争、昇進、報酬などを適切に見直す必要があります。
以上、「幹部候補をいかに育て抜擢していくか ~海外(中国)に見る究極の競争システム」でした。