若手の育成 に頭を悩ます上司は少なくありません。
かつて主流だった「背中を見て学べ」という手法は通用しづらくなりました。
それにも関わらず、若手社員が業務を分かりやすくマスターする仕組みがなかったり、キャリアの道筋、成長の道筋を示すことができていません。
また、ブラック企業と言われることを恐れるあまり、残業を避けるべく簡単な仕事ばかり与える「お客様扱い」や「子供扱い」も見られます。
結果として、若手社員の成長が遅れ、仕事の醍醐味を感じられる状態になかなか到達しません。
今週のブログでは、若手社員を子供扱いすることの弊害と、それを防ぐ道筋についてお伝えします。
目次
若手社員とベテラン社員の能力差は本当に大きいのか?
ベテラン社員からすると、若手社員は仕事の経験が浅く、一人前になるにはまだまだ時間がかかると考えてしまいます。
「仕事の能力に差がある」と認識しがちです。
しかし、この認識こそが若手に簡単な仕事ばかりを与える要因になっています。
この認識を変える必要があることを2つの観点からお伝えします。
経験
学生時代に色々なことをやっている人がいます。
アルバイト先で社員に頼りにされるくらい貢献している人
サークル活動でイベント運営や企画を手がけている人
部活やサークルで人材マネジメントをしている人
起業している人(起業の中心人物とその友人)
インフルエンサーとして個人でビジネスをしている人
ショート動画、音楽、映像コンテンツなどのクリエイティブな発信をしている人
上記のような活動で得られる経験は、社会人がビジネスを通じて得られる経験と本質的に変わりません。
もちろん、しっかりした企業体としての営利活動か否かという違いはありますが、十分に意義のある経験と言えます。
このような経験をしている学生は、入社した時点で既に一部の能力においては先輩を上回ります。
能力
私は学生の新規事業コンテストや、企業内の事業創出のための新規事業コンテストに何度か関わりましたが、アイディアやプレゼンのレベルが、学生と企業でほとんど変わらないということに驚かされます。
思考が柔軟な分、学生の方が一歩リードしているといってもいい位です。
十数年企業で働いてきたベテラン社員であっても、過去に新規事業を立ち上げた経験がなければ、新規事業の発想力、創造力、調査力、行動力においては、学生に対して特段優位性がないことを実感しました。
この事例も、ベテラン社員と若手社員の仕事の能力は大差がないということを示しています。
もちろん、ベテラン社員が若手社員より優れているポイントもあります。
- 企業における業務経験に基づく知識や判断力
- 社会人としての振る舞い(ビジネスマナーや報連相の習慣)
これらは時間と経験によって培われるものなので、若手社員がすぐにキャッチアップするのは難しい部分です。
しかし、これ以外の仕事の能力、例えば論理的思考力、対人関係構築能力、行動力などは、個人差はあれどベテランと若手で大きな違いはありません。
仕事の能力発揮を後ろから支える「情熱」や「意欲」は、もしかしたら若手社員の方がベテラン社員よりも相対的に高いかもしれません。
以上を踏まえると、若手社員に簡単な仕事を与えるなどの子供扱いする意味はあるのでしょうか?
「若手社員の子供扱い」3大要素
若手社員を子供扱いしてしまい、結果として成長の可能性の芽を摘んでいるケース、せっかくのポテンシャルを活かし切れていないケースが少なくありません。
そうした「子供扱い」の典型的なパターンは、次の3つに分類されます。
1 簡単な仕事ばかり与える
2 情報を限定する
3 問いかけや対話をしない
この3つを回避するだけで、若手社員の成長を今よりも加速させることができます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
簡単な仕事ばかり与える
「若手社員だから難しい仕事を与えても無理だろう」
こう思い込み、単純作業や考えない仕事ばかりを与える上司がいます。
例えば、単に数字情報をAファイルからBファイルに転記して集計するだけの仕事や、ほとんど考えなくても作成できるパターン化された会議資料づくりなどです。
こうした誰でもできる仕事、誰がやってもアウトプットが変わらない仕事ばかり繰り返していると、学生時代の活動よりもつまらなく感じられ、成長するイメージも得られません。
結果として、若手社員自体の能力が活かされず、むしろ低下してしまう可能性もあります。
ただし、簡単な仕事を与えること自体が悪いわけではありません。
簡単な仕事であっても、深掘りすれば新たな発見につながることがあります。
また、こうした簡単な仕事は自動化や効率化を進める余地が多く、若手にその改善を任せるのも非常に意義があります。
重要なのは、最初から最後まで単純作業で終わるような仕事には絶対にならないよう、仕事の与え方を工夫することです。
これにより、若手社員の成長を促進する仕事へと変えることができます。
情報を限定する
上司には会社の動きに関する情報などリッチな情報を与える反面、若手社員には断片的な情報しか与えない会社が多く見受けられます。
もちろん機密情報などもあるので何でも全社員に伝える必要はありません。
しかし、上の人ばかりが情報を握っているような会社では組織全体の活力が低下しがちです。
できる限り若手社員にも情報を共有することで、経営参画意識や主体性が大きく高まります。
若手社員にもっと共有すべき情報として、以下の3つが挙げられます。
① 判断の背景/仕事の目的
② 上の動き
③ 横(他部署)の動き
① 判断の背景/仕事の目的
例えば、営業方針を変更した場合を考えてみましょう。
従前はA商品を強烈にプッシュする方針だったものを、ABC商品それぞれフラットにお客様に説明して選んでもらう方針に変更します。
このとき、上司が若手社員に変更結果だけを伝え、
「方針に従ってしっかりやりなさい」とだけ指示を出す場合があります。
これは子供扱いの典型と言えます。
営業方針の変更には、必ず背景や理由があります。その変更にいたるまでに以下のようなプロセスを経ているはずです。
- 現状の問題点の特定
- 原因の分析
- 原因を踏まえた対策
これらの議論の経緯こそ、経営の判断ですよね。
こうした背景や経営判断まで伝えれば、若手社員も視点が上がります。
背景を伝えず結果の指示だけを伝えれば、若手社員は「指示通り動くだけ」の歯車として育っていくことになります。
営業方針の変更以外でも、以下のように何らかの抜本的な変更を伴うケースでは、背景を共有することが重要です。
- 会社のルール変更
- 人事異動
- インセンティブ制度の見直し
- 組織改正
- 商品の廃止や新製品の開発 他
これらの判断には全て理由と目的があります。
「なぜそのような判断にいたったか」「何のために行うのか」
これらを伝えることで、若手社員の思考レベルが上がり、主体性や成長意欲を引き出すことにつながります。
② 上の動き
若手社員と話をしていると
「自分の上司がどんな仕事をしているかよく知らない」という声をよく聞きます。
このような状態は組織として歯車が噛み合っているとは言えません。
上司は部署全体を良くするための仕事をしています。
そのため、部のメンバー達に自分が何を目指しているか、何を解決しようとしているかを伝えることが重要です。
これにより、部下も上司に連動して先を読んで動くことができます。
さらに
自社の社長や役員が今何に力を入れているか?
会社をどのような方向に導いていこうとしているか?
これらを共有することで、社員1人1人はより望ましい方向に動くことができます。
例えば、登山をする時にどの山に登るかを知らされていなければ準備に困りますよね。
標高500メートルの山なのか、2,000メートルの山なのか
途中でロープウェイを使うのか、全て自分の足で登るのか
登山を成功させるにはこれらの情報が必要不可欠です。
会社においても同様です。
経営がどこを目指しているのか、どのようにその山を登ろうとしているのかは、上層部だけが知っていても、全体の動きがバラバラになります。
相手が若手社員であっても、末端の情報だけで動いてもらうのは子供扱いに他なりません。
しっかり会社の方向性を伝えてこそ、若手社員も自分の力を最大限発揮できるようになります。
③ 横(他部署)の動き
部長クラスになると自部署だけでなく他部署の横の動きをよく分かっています。
当然ながらそのような情報がどんどん入る立場にいます。
一方で、現場の若手社員には自部署以外の情報がほとんど伝わらず、会社全体の活動のごく一部だけを見て仕事をしていることが多いのが現状です。
これも「子供扱い」の一例と言えます。
さまざまな部署の人たちが1つのチームとなって存在しているのが会社です。
1人1人が会社のためにより良い仕事をするには、他部署の情報を知っている方が望ましいです。
もちろん、すべての情報を日常的に知ることは無理ですが、次のような取り組みを行うことで補えます。
定期的なミーティングで、上司が他部署の状況を伝える
全社の情報共有システムを活用し、部門間のつながりを促進する
四半期ごとに全社員を対象とした全社ミーティングを実施する
各部署で今どのような課題に直面しているのか?
どのような活動をしているのか?
その活動が自分の仕事とどのようにつながっているのか?
これらを知ることで、1人1人の仕事の意識、仕事の質が上がっていきます。
問いかけや対話をしない
問いかけとは、次のような質問をすることです。
「あなたはどう思う?」
「どうやったらうまくいくと思う?」
「何かいいやり方はないかな?」
上司から若手社員に指示するだけでなく、若手社員に聞いてみると、良い意見が出てくるものです。
もちろん考えが浅かったり、現実性がない提案もありますが、「なるほど!」と思わせる意見が出てくることも少なくありません。
相手が経験の浅い社員だからといって、上司は自分の意見こそ正しいと思い込むのは間違いであり、むしろ部下の成長の機会を奪うもったいない行為と言えます。
若手社員の意見もどんどん取り入れ、自分の意見を述べる場を提供することで、組織は活性化され、より良い方向に進むでしょう。
(もちろん、上司にはそれ相応のファシリテーション力や説得力、意思決定力は求められます。)
対話の重要性
「対話」は、互いの考えを深く伝え合い、理解し合いながら、さらに良いアイデアを生み出すプロセスです。
よって、若手社員の意見を聞く際は、次のように上司の考えも伝えてみましょう。
- 具体例1
私は今の営業スタイルではお客様の本当のニーズに応えられていないと思うんだよ。
例えば〇〇〇のようなことが課題だと思うけど、あなたはどう思う?
- 具体例2
まだあなたは若手で経験も少ないから、これまでは簡単な仕事を中心にお願いしてきた。
でも、それだとあなたにとって物足りないし、成長にもつながらないと思うんだ。
少しずつ難易度の高い仕事にも挑戦してもらいたいけど、あなた自身はどう感じている?
このようにお互いが本音で意見を交わす対話を重ねることで、関係性が深まり、若手社員の視野や視点が広がっていくはずです。
まとめ
現代の職場では、若手社員の育成が多くの上司にとって重要な課題となっています。
しかし、若手社員を子供扱いするような行動は、彼らの成長を妨げ、組織全体の活力を削ぐ結果となります。
今回は、若手社員を子供扱いする典型的な3つの行動
「簡単な仕事ばかり与える」「情報を限定する」「問いかけや対話をしない」
これらついて解説し、それを回避する具体的な方法をお伝えしました。
若手社員の能力は、必ずしもベテラン社員に大きく劣るわけではなく、むしろ情熱、柔軟な思考力、行動力といった点で優れていることも多いです。
上司がその可能性を見極め、適切なサポートと挑戦の機会を与えることで、若手社員はより大きな力を発揮できるようになります。
若手社員の可能性を引き出し、組織全体の活性化につなげるための環境を築いていきましょう。
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