リーダーシップ開発 は若手時代から|役職を問わず全員がリーダーシップを発揮できる組織へ

2024.08.01

リーダーシップ開発

「リーダー」「リーダーシップ」という言葉は広く色々な文脈で使用されるため、その言葉に対する認識が人によって異なることがあります。
 

日本語の「リーダー」は学校の修学旅行の班のリーダーにも使われますし、会社では担当者数名のチームの中心となる人(まだ管理職ではない人)を「リーダー」と呼ぶ会社もあります。

これらの場合の「リーダー」は、少数のチームを率いる責任者のような意味合いです。
 

一方で、経営者のリーダーシップを語る場合、意味合いはかなり異なります。

例えば、“どん底の会社を再建したリーダーシップ” のような文脈で語られる「リーダシップ」は、先のリーダーの使われ方とは異なり「経営リーダーシップ」という表現がふさわしいです。
 

今週のブログでは、会社や組織を動かすリーダーシップとは何か? 

リーダーシップを発揮できるのはどのような人か? 

リーダーシップの定義と、その磨き方についてお伝えします。

 

リーダーシップは単純で地味

 

リーダーシップは単純です。

目指すゴールを示し、周囲を巻き込みながら、ゴール達成に向けて諦めることなく行動することです。

一般的に、リーダーシップの強い人は、カリスマ性があるとか、声が大きい、迫力があるなどと言われることもありますが、それはあくまで手段の話であり、本質ではありません。
 

なぜなら

目指すゴールを設定して、それを明示する

そのゴールを皆に伝え、皆をその気にさせ、巻き込む

ゴール達成に向けて諦めることなく行動する
 

以上の3つは、カリスマ性など備えていなくても、努力すればできること。

つまり、リーダーシップの発揮は決して派手なものはなく、地道なことの積み重ねです。
 

派手で格好良くても、結果として人と動かすことができなければリーダーシップ不足です。

地味なリーダーでも、結果として人を動かしゴールに到達させることができれば、それは素晴らしいリーダーシップと言えるのです。

 

リーダーシップのスタイルは多様

 

リーダーシップには色々なスタイルがあります。

織田信長のような統率型リーダー、下から支えるサーバントリーダー、調整型リーダー・・・

それぞれ特徴があり、組織の発展段階や事業のフェイズによって求められるリーダーシップスタイルは異なります。

 
今回のブログではその詳細にはふれませんが

「リーダーシップを発揮する人はこうでなければ!」という絶対の型はないと言えます。

 

日本の首相に見るリーダーシップの型

 
日本の首相を例にします。
日本の首相は、日本の社会・経済をより良くする使命のもとに行動します。

そのゴールを達成するためには、派閥の異なる政治家や対立政党も動かし、国民の支持を得ながら、政策を前に進めることが求められます。
 

過去の何人かの特徴的な首相を比べても、スタイルはそれぞれでしたよね。
 

小泉首相は、劇場型政治で国民の支持を集めました。論点をわかりやすい言葉で表明し、敵にひるむことなく、郵政民営化などの政策を進めました。

彼はいわゆる典型的リーダータイプと言えるでしょう。しかしそれがゴールに近づけられたかは評価は分かれます。
 

安倍首相の2回目登板の時は、国際社会における日本の存在価値を打ち出し、各国のリーダーにも影響を与え良い関係を作りました。その一方、国内では野党対策に手を焼き、国民からの支持も分かれました。

理念型リーダーですが、実務を動かすところは課題も多くありました。
 

菅首相は地味でリーダータイプではなく調整型と言われていましたが、官僚の動かし方など実務面では短い在任期間ながら着実に物事を進めていきました。

しかしコロナ発生と重なってしまい、国民への発信力や説明があまり上手くなかったこともあり、支持率は急降下してしまいました。
 

3者3様、それぞれ評価できるところ、そうでないところがありましたが、全く異なるタイプの3人が、首相としてそれなりの成果を残したということは、リーダーには色んなタイプがいて良いということを物語っています。

 

リーダーシップを発揮するのはあらゆる階層

 

会社の中でリーダーシップを発揮するのは社長だけではありません。

部長も当然リーダーシップを求められ、課長も同様に求められます。
 

では、2~3年目の担当者にはリーダーシップは不要でしょうか?

決してそんなことはありません。若手社員であっても、誰しもリーダーシップを求められます。
 

求められる内容が違うだけで、誰しもいい仕事をするためにリーダーシップが欠かせません。

 

社長のリーダーシップ

 
例えば社長が発揮すべきリーダーシップは、会社の将来像や方向性を示し、それに向けて社員を導き、飽くなき執念でゴールに到達させることです。

それを実現するために、企業理念を社内で説いて回ったり、新たな事業を作ったり、組織を変えたり、社員教育したり、誤った方向に進んでいる社員を叱ったり、そのような活動をします。

それが社長のリーダーシップです。

  

3年目のAさんのリーダーシップ

 
では、3年目の営業担当者Aさんの場合はどうでしょうか?

Aさんは社内では上司や先輩社員に囲まれ一番若手社員ですが、リーダーシップを発揮しなければならない場面はたくさんあります。

例えばAさんがクライアントX社に大きな金額の製品の提案を行っており、その購入意思決定がX社内では大きな決断となる場合があります。

この製品の導入に向けてAさんはX社担当者が社内承認を得るために必要な情報提供やサポートをしなければなりません。

X社担当者の上司にも、必要に応じて説明する必要があります。
 

 
一方、Aさんの社内では当該製品の値引きについて上司から承認を貰う必要があります。

同時に当該製品の納期が非常に短期間であるため、製造部にも早めに情報を伝え、準備を前倒しで進めてもらわなければなりません。

製品導入に際しては、導入準備やクライアントへの製品説明のために、部内の先輩の助けもいるので、先輩とも早めに相談しておく必要があります。

以上の行動は、全てAさんが自分から行動しなければ進みません。
 

もちろん分からないことがあるときは上司の助けを得るとしても、上司はあくまで脇役であり、主役はAさんです。

Aさんは、X社が製品導入を無事進めるというゴールに向けて、クライアントを動かし、社内の上司、製造部、部内の先輩などの関係者を巻き込み、動かす必要があります。

それぞれの間で意見や進行スピードにズレが出た場合にはAさんが間に入ってコミュニケーションをとりながら、上手く調整していかなければなりません。
 

以上のAさんの行動はリーダーシップ発揮の典型です。
 

リーダーシップは、決して上の立場の人だけが発揮するものではありません。

若手社員であろうが、誰でもリーダーシップを発揮すべき場面があります。

 

組織におけるリーダーシップはアメーバのよう

 
組織においては役職や立場にこだわらず、それぞれのミッションに応じてリーダーシップがアメーバ組織のように縦横無尽に動いているのが望ましい状態です。
 

以下の図のようなイメージです。

 

リーダーシップ開発は若手時代から

 
以上お伝えしたように、リーダーシップは管理職になってから養成するものではありません。

若手の時からリーダーシップ発揮の機会を持っていれば、管理職になってもスムーズにリーダーとしての行動をとれるはずです。
 

若手のリーダーシップ能力を開花させるには、いくつか小さな工夫が可能です。

その工夫を蓄積することで、リーダーシップ能力は着実に積み重なっていくでしょう。

 
具体的な方法をお伝えします。
 

小さな仕事をまかせる

 
飲み会幹事とか部内の共通書類の整理とか、ちょっとした事でもよいので、1年目の社員に責任を持たせます。

自分でゴールを設定し、企画を考え、企画を皆に説明し、色んなフィードバックももらいながら実行していきます。

 

小さなことでも決定させる

 
経験が少ないうちは何でも上司に判断を仰ぐことが多いですが、そればかりでは決断力が育ちません。

新入社員であっても、学生時代にはサークル活動やアルバイトなどで自分で判断する機会がたくさんあったはずです。

何でも子供扱いすることなく、できるだけ自分で考えてさせて決めさせる機会を与えましょう。

お客様に幾らで見積りを出すべきか? というお題に対し、
最初から上司が指示するのではなく、幾らで出せば仕事がとれて採算も確保できるか? を本人に考えさせることです。

自分で考えて失敗しない限り、次の上達はありません。

 

他人を動かす経験

 
例えば、社内でチャットのシステムを導入するプロジェクトがあるとします。

通常であれば、課長クラスがプロジェクトリーダーとなり、3年目の若手社員が担当者として仕事を進めるかもしれません。

これを逆転して、3年目の若手社員をプロジェクトリーダーに据え、課長は補佐役となります。

リーダーになれば、ベンダーとの打合せ、他部署の要望ヒアリング、社内の承認手続きなど全て自分が主導で進めなければなりません。
 

もし課長がリーダーであるならば、課長の指示に従っていればプロジェクトは進みませんが、自分がリーダーである以上、自ら関係者に声をかけ、動いてもらう必要があります。

課長は大きな問題が出そうな時だけ前面に出て対処するのみで、平時は担当者にまかせます。

リーダーに任命された若手社員は目の色が変わり、自分なりの面白いアイディアも出してくることでしょう。
 

プロジェクトを進める過程では対人関係で苦労もしますが、それもリーダーシップ開発に不可欠の経験になります。

この育成方法は若手社員のリーダーシップ開発にはうってつけです。
 

 

まとめ

 
リーダーシップとは、多くの人が思い描くような派手なものではなく、目標を設定し、周囲を巻き込み、その目標に向けて地道に行動することに本質があります。

リーダーシップのスタイルは多様であり、特定の型に当てはまる必要はありません。
 

例えば、カリスマ的なリーダーや地味な実務型リーダーなど、様々なリーダーシップが存在します。

重要なのは、そのリーダーシップが実際に人を動かし、組織を前進させる力を持っているかどうかです。

また、リーダーシップとは会社の上層部だけでなく、すべての階層で発揮されるべきものです。

たとえ若手社員であっても、自分の役割においてリーダーシップを示すことが求められます。
 

座学でリーダーシップを勉強しただけでは、ほとんど力はつきません。

実践を通じたリーダーシップ開発こそ、成長の大いなる礎となるでしょう。

 

 

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筆者紹介

株式会社SUSUME 代表取締役

竹居淳一

「人と組織が強みと言える会社づくり」を支援しています。人事の領域は年々複雑化、高度化していますが、中小企業で実践可能な視点から人材育成や組織づくりのコツを発信しています。 採用、育成、定着化、評価、組織開発、労務などの一連の領域を分断することなく、全体最適の解決策と実行が強みです。

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