年度始めは「 部下の指導 」において最適な業務目標を設定する時期でもあります。
部下の目標をどのように設定するかは上司の腕の見せ所。
目標の設定の方法次第で、部下の仕事への取り組みも変わってきます。
今週のブログでは、部下の力を存分に引き出す目標設定のやり方についてお伝えします。
目次
目標は業績予想ではなく「意志」を表すもの
前年の実績から「何となく数パーセント上乗せした目標」を設定していませんか?
目標は業績予想ではありません。このくらいなら行けるだろうという予想ではなく、ここまで到達したいという意志を目標にします。
よって、(前年実績は勿論参考にしますが)会社の目標、市場環境、本人の能力、意志などを総合的に勘案して、「自分はここまでやりたい!」という意志を込めた目標にしましょう。
目標には目的が必要
目標には意味やストーリーが必要です。
ただ「数字を追いかけましょう」では人は共感できず、心からついていこうとは思えません。
分かりやすいストーリーの例としては、「競合からのシェアNO.1奪還!!」のように仮想敵国を設定して、皆の競争心をくすぐるものがあります。
しかしこのストーリーは「数字を追いかけましょう」と遠からずなので、持続性が弱点です。
社員にもっと使命感や誇りをもって目標を目指してもらうためにはさらに工夫が必要です。
例えば、高齢者用の靴を提供する会社だとしたら「〇〇年までに高齢者の転倒事故をゼロに!」と設定することで目標に使命感を持たせることができます。
また、アメリカで靴のオンライン販売を行っているザッポスは優れたサービスで有名ですが、コアバリューにおいて「サービスを通じて,WOW(驚嘆)を届けよう」と掲げているのも良い例です。
このような社会貢献につながる目標や顧客を感動させる目標をを打ち出すと効果的です。
目標は一方通行で押し付けず、自分の意志を込める
目標数字を会社が決めて、一方通行でメンバーに下ろすだけの会社がありますが、それでは社員が受け身の姿勢になってしまいます。
会社の目標と個人の目標は当然連動すべきものなので、トップダウンによる指針はあってしかるべきです。
上司が部下に期待する成果もしっかり伝えましょう。
同時に、本人自身が会社の目標を踏まえた上で自分が目指すべき目標を考え、トップダウンとボトムアップの両側から擦り合わせするステップがあるといいですね。
擦り合わせステップを通じて、目標達成に向けた課題も見えてくるし、本人にとって納得感のある目標が設定できます。
目標を自分で考えること自体、いい教育機会になります。
目標の水準はストレッチトゴール
目標は簡単すぎても駄目です。最初から諦めるほど難しいと、目標をたてる意味がありません。
目指すべき水準はストレッチトゴール(ストレッチ目標)です。
ストレッチトゴールとは、本気で頑張り抜けば何とか到達可能な水準を指します。
よって、同じ3年目担当者でも、個々の実力によって目標水準は異なってしかるべきです。
部下の指導 の際、目標はできる限り具体的に
目標は具体的に設定しましょう。
具体的な方がよい理由は3つあります。
- 目標設定時に真剣になる
曖昧な目標であれば幾らでも何とでも言えますが、具体的に定めるとなると真剣に考えざるを得なくなります。
- 進捗が明確でPDCAを回しやすい
具体的な目標があると、毎月や四半期時点でどの程度進捗したか明確になるので、順調かそうでないかを判断しやすく、その後の改善がやりやすくなります。
- 業績評価の判断がやりやすい
最初の目標が曖昧だと、いざ業績評価を行う時に上司が判断に困ります。できたか否かの議論が嚙み合わず、評価を受ける部下にとっても不満が残ってしまうので、最初に明確に定める必要があります。
具体的な目標を立てる上では、次のような表現が含まれる目標設定は避けましょう。
いずれも何を実施するかが具体的でなく、後で評価する時に困ります。
具体的な目標にするために心がけること
- 数字で設定可能な業務は極力数字目標を立てる
- 数字目標を分解して更に具体化する
- 例:「月次・四半期別」、「既存顧客/新規顧客」、「エリア別、業種別」
- 数字の成果につなげるために重要度の高いプロセス目標を設定する
- 例:提案実施回数、商談数、セミナー参加社数
- 数字設定が難しい業務においては、実施時期や頻度を明確にする。半期や四半期毎にやるべき事を設定する
- やることがリアルにイメージできるまで具体的な内容にする
- 例:記入ミスを△%削減するため、□□の自動化を上期中に行う。入力時の確認ステップを〇〇に変更する
- 実施した後の状態を明確にする
- 例:毎月部内の勉強会を行い、半年後に全員競合サービスとの違いをパターン別に説明できるようになる
例えば経理部門担当者が「全社の経費削減につとめる」という目標を出してきたら、以下のような目標具体化に導いていきましょう。
そもそも目標管理の意義とは?
目標管理をやるメリットは何でしょうか?
何となく昔からやっているからという理由で目標管理を続けているケースがありますが、目標管理の成果を高めるには、その意義やメリットを十分理解しておくべきです。
- 取り組むべき業務が明確になる
- 会社の進む方向と本人の目標を連動させることで、ベクトル合わせができる
- 自ら目標設定し振り返りを行うことにより、社員の自主性・主体性を醸成できる
- 目標達成のプレッシャーがかかる
- 目標に対する進捗管理を行いPDCAを回すことで結果につながる
- 業績評価や能力形成における(上司と部下間の)共通尺度ができ、部下指導しやすくなる
- 業績評価に活用できる
- 管理職のマネジメント力を向上させる
これら目標管理の意義を正しく生かせるよう、上司はマネジメントしていく必要があります。
目標設定における上司の姿勢
目標設定に上司がどのように関わるかでその質が大きく変わります。
部下が納得感のある目標、かつストレッチ目標を適切に設定するのは簡単ではありません。
部下のタイプによっては、なるべく保守的で安全な目標にしたがる人もいるでしょう。 部下の考える目標と上司の期待に差がありすぎて議論が噛み合わないこともあります。
これを防ぐために幾つか工夫できることがあります。
- 普段から部下の仕事ぶりをよく見る
- 強み、弱み、同僚と比べた違い、担当している仕事の状況、市場環境、マインドなど
- データを用いる
- 気持ちをぶつけ合うだけでは議論が噛み合いません。前年度の実績データ等を様々な角度から分析し、適切なストレッチ水準を推定します。
- 目標管理の意味を伝える
- 部下によっては目標管理の意義を理解していない場合があります。具体的な目標を立てるメリットを納得していないかもしれません。
- 目標管理の前提となる考え方をしっかり伝えると意識が変わります。
- よくコミュニケーションし、期待をかける
- 何より大切なのは、目標設定を通じて部下としっかりコミュニケーションをとり、話を聞くことです。上司の見解や思いを一方的に伝えるだけでは部下の中で消化されません。
そして最終的には部下の成長を願い、期待をかけることが大切です。
- 何より大切なのは、目標設定を通じて部下としっかりコミュニケーションをとり、話を聞くことです。上司の見解や思いを一方的に伝えるだけでは部下の中で消化されません。
まとめ
目標管理の最も重要な目的は、本人の持てる力を最大限に引き出すことです。
よって目標そのものに納得感がなかったり、そもそも目標を目指す意識がなければ実施する意味がありません。
期中に「あなたの今期の目標は何ですか」と聞くと答えられない人が存在します。
目標を立てることが目的化し、本気で目標に向けた実行ができていない悪いパターンです。
一度決めたら、常に目標を意識し、進捗を振り返り、必要な軌道修正を行っていく。
この繰り返しこそ目標管理の真髄です。
これを毎年着実に実行すれば、社員は年々力をつけていくはずです。
今週のブログでは目標管理の入り口である目標設定についてお伝えしました。
ぜひこれをきっかけに目標設定のやり方を見直してみてください。
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