この記事でお伝えするのは、「 人材育成 」は時間や予算に制約があっても十分にできるということ、そしてその具体的な方法です。
人材育成という言葉を聞くと、新人研修、管理職研修などの研修を思い浮かべる方もいれば、現場での業務スキルの習得、OJTを思い浮かべた方もいるでしょう。
中小企業の中には「うちは人材育成をする余裕が全然なくてね・・・」と自嘲気味に語る社長もおられます。
「余裕が全然なくて」の意味は、「予算が足りない」、「時間が足りない」などの意味であったりします。
このように多くの人が誤解していますが、実は企業の人材育成とは、研修やOJTだけではありません。
予算や時間に余裕がないとできない活動でもありません。
目次
今すぐ実践可能!「 人材育成計画 」の6つの方法
企業の「人材育成」に必要な6つの方法(施策)を一覧表にしてみました。

それぞれについて説明していきます。
現場での仕事経験(OJT)
言わずもがな、人材育成の根幹の場となります。
そこで実際に経験したこと及び経験からの学びがその人を形作っていきます。
業務知識・スキルの早期習得促進
業務に必要な知識やスキルを獲得するための、習得ツール等の提供です。
いかに早期に効率よく習得できるかがポイントです。
例えば新人が10人入社した場合、1人1人個別に指導したり、先生役がわざわざ時間を割くのは効率が悪いので、極力独学で学べるツールを用意します。
具体的には、業務マニュアルの整備や、作業現場であれば動画教材などです。
営業職であれば、商品理解のための資料、電話営業の音声サンプル、先輩の商談の動画見本例なども非常に役立ちます。
人が育つ環境の整備
人材育成の活動としてあまり認識されていませんが、人が育つ環境の整備はとても大切な要素です。
以下、環境整備に必要な5つの要素をお伝えします。

「良き経営理念が浸透している」
経営理念が浸透している会社では、社員の規律がとれ、意欲的に働き、良い仕事の習慣を身に着けています。
経営理念の中の「行動指針」といった枠組みで、仕事に向き合う姿勢や考え方について定めがあるので、社員が仕事をしていく上での指針となります。
経営理念から仕事のイロハを学ぶとも言えます。
「優れた企業文化がある」
優れた企業文化のある会社。
例えば、お客様を大切にする会社、同僚が一生懸命働いている会社では、そこに入ってくる社員も良い影響を受けます。
逆に会社の悪口ばかり言っている人達の職場に新人を放り込めば、あっという間に悪いコピー品ができあがります。
「上司や先輩による指導が行き渡っている」
上司や先輩による指導も非常に大きな影響力があります。
厳しくかつ愛情をもって指導してくれれば部下はすくすく伸びていくでしょう。
放置して我関せずの環境では、よほど自立的な人材でない限り成長スピードは期待できません。
上司や先輩からの指導は、単に業務スキルの指導にとどまらず、仕事への向き合い方、対人関係構築のやり方、交渉術など様々なスキルを学ぶ機会になります。
「目標が明確で、目指す目標が高い」
仕事の役割が曖昧では、自らの仕事に責任をもってミッションを達成する習慣がつきません。
上手くいってもいかなくても、自分が何に貢献したかが曖昧で自信がつきません。
目標のレベル設定も大事です。普通にやってれば簡単に達成できる目標では成長がありません。
毎年、その人なりにチャレンジングな仕事を経験させましょう。
本気で頑張れば何とか手が届くというストレッチ目標を設定し、何が何でもその目標の達成に向かっていく習慣が人を育てます。
「フィードバックを受ける機会がある」
半期に一度の業績評価のタイミングに、慌ててとってつけたようなフィードバックをしても人の成長にはつながりません。
定期的に仕事の成果を振り返り、上司から指摘やアドバイスをもらい、その後に向けた改善を繰り返す習慣が人を育てます。
人は自分のことを客観的に見るのは苦手なので、フィードバックの機会の有無は人材の成長に大きく影響します。
「人が育つ環境の整備」の5つの要素はいずれも手間はかかりますが、非常に効果が大きく、かつ外に出る費用はありません。

能力開発機会の提供
研修や学び合いの場です。
管理職に昇格する人向けの研修や幹部研修などの階層別研修、「ロジカルシンキング」「コミュニケーション」などのテーマ別研修があります。
研修実施のポイントは、本人が受けたくないのに無理やり受けさせても投資対効果が低いという点です。
必要な人に必要な研修を必要なやり方で提供し、費用対効果を高めましょう。
社員同士の学び合いが実施できている会社は社員の成長が加速します。
・営業担当者同士で商談のコツを学び合う
・リモート営業のスキルを学び合う
・部下マネジメントに悩む上司同士でお互いの苦労や工夫を学び合う
これらによって、お金をかけることなく非常に高い学習効果が得られます。
講師役を担当する社員のスキルもさらに向上し、一石二鳥です。
キャリアの拡がりの機会の提供
異動も飛躍のきっかけとなります。
異動を通じて新しい仕事を経験させる、環境を変えることでマンネリ化を防ぐ、キャリアの可能性を広げる効果があります。
仕事が忙しい社員ほど付き合いが社内の人材に偏ってしまうので、同業他社との会合に出させたり、異業種と接点のある場に行かせて、ネットワークを広げるのも良い刺激になります。
社内の全社的プロジェクトのメンバー(またはリーダー)に選出し、部署横断的な業務を経験させるのも学びの多い経験となります。
自己啓発支援
社員が少しでも自主的に学ぶための支援です。
本来は何も言われなくても自ら学ぶ姿勢が望まれますが、きっかけによって動く人もいるのでそのチャンスを提供しましょう。
セミナー等への参加費用の補助、資格取得費用の補助はよく見られる方法です。
自社にとって参考になる「課題図書」を提示したり、社内に図書館を設置して読書会開催を促すなども良い方法ではないでしょうか。
MBO(目標管理)の項目の中に”自己啓発目標”をいれ、その達成状況を業績評価に反映させる会社もあります。
ここまで見てきたように、企業の人材育成には実に様々な活動があります。
OJTと研修だけではなく、「他にもできることが沢山ある」ということを理解いただけたでしょうか。
人材育成計画 を立てる
人材育成の計画を立てるときには、
対象者は誰か?
対象者のどのような能力開発を行うか?
という目的の設定が非常に大切です。
それによって人材育成の様々な活動のうち、どれを実施すべきかが見えてきます。
その上で予算やスケジュールのバランスを考慮しながら計画に落としていきます。
人材育成を通じて社員が磨くべき能力は下記の5つに大別できます。
- 業務知識、テクニカルスキル
- ヒューマンスキル(対人スキル)
- コンセプチュアルスキル(論理的思考、企画、分析など)
- 仕事の姿勢、考え方
- マネジメントスキル、リーダーシップ
能力開発すべき対象を1~5のどの能力向上におくかによって、育成に効果的な方法も異なります。
ざっくりではありますが、先に述べた人材育成の活動と1~5をあてはめるとこちらのようになります。

表中の色をつけているところが、当該スキルの開発にふさわしい人材育成の方法を指しています。
見方としては、OJTはいずれの能力開発にも有効。
「ヒューマンスキル」を高めるには、「3-2 人が育つ環境の整備」や「4 能力開発の機会の提供」などが適している、というように見てください。
育成計画を考える際の参考にして頂けたらと思います。
以上、人材育成の具体的なやり方、計画の考え方についてお伝えしました。
社員の育成において、スキルをいかに習得させるかはもちろん大事ですが、それ以上に
・人材が育ちやすい環境をどのように整備するか
・本人の可能性を広げ、学ぶ意欲をいかに刺激していくか
という観点が欠かせません。
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