私はお客様の「上司と部下間」のコミュニケーションやフィードバックの改善を目的として、 1on1ミーティング などの会議を分析することがあります。
そこで着目することのひとつは、上司部下それぞれが話している時間の割合です。
例えば30分間の1on1の会話のうち、上司が8割程度の時間を使って話し、部下の話す時間が2割しかないことがあります。
この時間比率は適正ではありません。
今週のブログでは、1on1の時間配分の適正化、より効果的な進め方についてお伝えします。
目次
上司ばかりが話す 1on1ミーティング
上司のあなたが部下と1on1を行う場合、そのトータル時間のうちあなたが話している時間割合はどの程度ですか?
実際の1on1の現場を分析すると、上司が圧倒的に多く話しているケースが見られます。
上司が喋る時間の長い1on1には主に以下の4パターンがあります。
①一問一答型
上司
「〇〇君の先週の目標は顧客提案10件以上(うち重点顧客5件以上)だったね。それに対して実績は7件。特に重点顧客との商談が思うように進んでないようだけどなぜですか?」部下
「提案商談を予定していた2社が先方の都合でリスケになりました。時期的にどこも担当者が忙しくてなかなか商談の時間をとってもらえません」上司
「リスケした会社は今週商談が組めますか? 先週の目標10件に不足した3件分は今週にリカバー可能ですか?」部下
「はい、リスケした会社は今週商談予定です。不足の3件分のリカバーは今週内はちょっと難しい状況です」
このように、上司の質問に対して部下が回答すると、すぐに次の質問がされ、また部下が答えるという、上司が部下の進捗を知るためだけの一問一答型コミュニケーションです。
この方法では、あまり内容が深まりません。
②上司の意見押しつけ型
上司
「先週の顧客提案が思うように進んでいないのは、何としても達成しようという意欲が足りないのが原因だと思うよ。だから毎日の顧客連絡を増やしてしっかりニーズを探って提案を増やせるようやってくれるかな。特に重点顧客への連絡を今週の月曜火曜のうちに終えるよう行動してください。」
上司側で最初から原因を決めつけ、その対策も含めて上司のやり方でやらせようとしています。
会話で部下は「はい」「そうですね」「わかりました」と短く言葉を挟む程度です。
ほとんど自分の意見を言う場はありません。これで本当に納得できるでしょうか? 行動に移せるでしょうか?
③答えを与える型
「先週の進捗状況はどう?」と尋ねたところ、部下から「顧客提案の後、クロージングまでなかなか進みません。どうしたらいいですか?」と質問が出ました。
それに上司が回答していく型です。
上司
「その原因は、顧客が当社のサービスを導入するメリットを伝えられていないからじゃないかな。あとは導入までは先方の社内承認のステップがあるけど、それが結構大変だから、当社側でサポートしてあげることを伝えないと踏ん切りがつかないと思うよ。顧客が導入するメリットとしては、A社の場合は〇〇〇が最大のメリットになり、B社の場合は△△△がメリットになるはず・・・」
このような感じの回答が延々と続きます。
親切心もあって一生懸命指導しようとしていますが、部下はどこまで話についていけているでしょうか?
表面的には理解しているかもしれませんが、自分事としてちゃんと実践できるでしょうか?
④自分の話に酔う型
部下が「A社に提案した際、競合B社の製品に気持ちが傾いているような話が出ました」
と伝えたところ、上司は
- B社の製品の特徴やB社の営業スタイルについて
- A社担当者の特徴について
- 競合とぶつかった時の営業の仕方について
- 自分が過去同様のケースでとった対応について
などなど、延々と15分くらい独演がはじまりました。
上司が話し過ぎる問題点
上記の4パターンはいずれも上司が話している時間が圧倒的に長いです。
「話し過ぎ」の問題点はどこにあるでしょうか?
部下が事前準備を怠る
1on1の際、部下は事前に準備をして臨んだ方が効果が高まります。
先週の仕事の状況を自分で振り返り、目標とのギャップについて対策を検討し、上司に相談したいことも頭の中でまとめておくべきです。
例えば①のケースは上司から進捗を問われる進め方ですが、これを上司が聞く側に回り、部下が自分から先週の状況や課題を報告し、上司からコメント、アドバイスをもらうスタイルに転換したらどうでしょうか?
この方法であれば、部下は1on1の前に自分でしっかり準備をしておくようになります。
部下が自分で考えようとしなくなる
②では上司が勝手に原因を決めてしまい、その対応策まで指示し、上司の思う通りやらせようとしています。
しかし本当にその原因分析は正しいでしょうか?その対策で結果が出るようになるでしょうか?
仕事の成果を高めるには、自分自身が状況をしっかり振り返り、対策を考え、納得の上で行動に移すことが欠かせません。
その過程で上司のアドバイスは非常に効果的ですが、あくまで主役は部下自分です。
②では主役は上司で、部下は単なる手足になっています。
このやり方を続ける限り、部下は自分で考える習慣をなくしていきます。受け身になり仕事がつまらなくなります。
③の場合も、上司は良かれと思ってやり方を細かく指導していますが、これも部下が主体的に考える余地を奪っています。
ここまで細かく箸の上げ下ろしまで指導したところで、部下はその通りにはできません。
実行可能なレベルまで深く理解できないからです。
もう少し大きな方向性のヒントを与え、自分で考えた対策を実行する習慣が求められます。
部下の意欲が減退する
④の問題点は、聞き手が疲れてしまうことです。
一生懸命メモはとるかもしれませんが、一度にそこまでたくさんの情報は理解できません。
1on1が終わった後、徒労感だけが残ることが予想されます。
会話をもっとキャッチボールに近づけたいですね。
上司の考え方を少し伝えたら、部下の理解度を確認し、それについての意見をもらい、お互いの意見を言い合う。
上司が考えるよりもっといい方法があれば、それもぜひアイディアを出してもらうなどのやり取りがあるべきです。
キャッチボールにすれば、お互いの考えがよくわかり、相手への距離が縮まり、より良いアイディアに高め合っていけるはずです。
ティーチングからコーチングへ
上司の話し過ぎはティーチングかコ―チングかの違いにも関係しています。
経験の浅い部下に対しては教えることが多いので、どうしてもティーチングが主体になります。
どちらかというと上司の話が長くなります。
一方、コーチングは良い質問や意見を通じて相手の中の考えを引き出し、目標に向かって行動するのを支援する手法なので、どちらかというと経験値の高い人に向いています。
仮に部下が経験の浅い人だとしても、ティーチングに片寄りすぎると自分で考えず受け身の仕事になってしまうので、必ずコーチングの要素を入れましょう。
すぐに答えを教えたり、上司の考えを押し付けるのではなく、部下に自分で考えてもらい、部下が自ら良い対策に辿り着けるよう支援をしていってください。
まとめ 1on1ミーティングは時間配分が鍵
上司が話しすぎる問題点、コーチングの重要性について述べてきましたが、まずはあなたが部下と行う1on1の時間配分を測定してみてください。
あなたの喋る時間が圧倒的に長い場合、その時間を逆転させていきましょう。
さらに、先ほどの4つの型にはまっていないかも点検してみてください。
どこの企業も「主体性のある人材」「自分自身で考え行動できる人材」を求めています。
上司の指示通りに動く人間を作ったところで、その人材の成長はすぐに限界がきます。
主体的に動ける人材に育てるためには、普段から部下が自ら考え工夫する習慣づけが必要であり、1on1ミーティングなどはそれを伸ばす良い機会です。
まずは部下が自分で考えて意見を言う時間を増やしてください。
事前準備もしっかりさせてください。
1on1は上司の意見や指示を伝える場ではなく、部下が自ら必死に考え試行錯誤しながら目標に近づいていけるよう支援する場として位置づけましょう。
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