若手社員 は非常に大きなポテンシャルを秘めていますが、あなたの会社はそのポテンシャルをとことん生かし切っているでしょうか?
日本社会は年長者を敬う文化があり、それはそれで良い側面もあります。
しかし多くの企業で「組織の中核を中高年が担っているが故に、結果として会社の進化を送らせている」という負の側面もあります。
「まだ早い!」と言って、若手社員に簡単な仕事や定型業務ばかり与えていませんか?
今週のブログは、迷ったらどんどん若手社員に任せてみませんか?という呼びかけです。
目次
20代 若手社員 、会社によってここまで差がつく
私のお客様にはそこそこ大きな会社からスタートアップベンチャーまでさまざまな規模の企業があります。
それぞれの会社に20代前半~半ばの若手社員がいますが、会社によって、人によって、「若手がやっている業務内容」が全く異なり、その能力差も歴然としています。
クラウドソリューション企業の若き管理部門責任者Aさん(26歳)
Aさんは大学時代からアルバイトをしていた設立間もない会社に入社し、社長と共に会社の成長を支えてきました。今では管理部門の責任者をつとめています。
社会人経験はまだ5年ですが、会社を背負う覚悟、向学心、リーダーシップ、どれをとっても20代半ばとは思えない仕事ぶりです。
Aさんと人事施策について色々と議論しましたが、会社の成長に合わせて社員をどのように鍛えていくべきか、会社の人事制度をどのように整備していくべきかなどを普段から深く考え、本を読んだり、見識ある方から話を聞いたりして勉強を重ね、Aさんならではの独自の考え方を持つに至っています。
Aさん自身の能力が高いというのはありますが、20代半ばにしてこの見識と責任感と持つに至ったのはなぜでしょうか?
大学卒業当初からどんどん仕事を任され、未知の仕事に次々チャレンジし、社長に鍛えられてきたからに他なりません。
通信機器販売会社の管理部門担当者Bさん(25歳)
新卒で入社したBさんは、最初の1年間営業を経験した後、管理部門に異動し、主に人事関連の仕事を担当しています。
主な業務は「給与計算のための勤怠情報チェック、社保手続き、入退社手続き、社員情報管理」などの労務関連です。
採用関連では、応募者の面接セッティングや簡単な書類選考、その他総務系の庶務業務、人事課長の下請け的な仕事をやっています。
Bさんは真面目で意欲も吸収力も高い人ですが、やっている仕事のほとんどが頭を使う仕事ではなく処理系業務なので、既に入社3年以上経っている割に、成長している感じがありません。
採用広告を出す際の媒体との打合せでも、常に課長が打合せの主役であり、Bさんは必要な資料を集め、取材のための社内手配を行なうなど、補助的な業務ばかりさせられています。
私は課長にこのように伝えてみました。
私
「もっとBさんに大胆に仕事を任せてみたらいいのでは?」
人事課長
「まだ経験が足りない。あと数年かかる」
「あと数年かかる」・・・本当にそうでしょうか? 私はそうは思いません。
と言うのは、ちゃんと頭を使い思考錯誤する仕事や、チャレンジングな仕事を日々与えていれば、たしかに数年後には大きな成長が見られますが、
Bさんのように処理業務ばかりをたくさん経験したところで、数年後も処理業務プラスα程度しかできるようにならないからです。
本来、「Bさんに与える仕事の難易度を意図的に上げていくこと」が人事課長の育成者としての役割ですが、実際はBさんを「自分が助かる駒」として使ってしまっています。
そのためBさんは成長が遅く、仕事の醍醐味を感じることもできません。
このままいくと、Bさんは自分の成長に危機感をもって退職するリスクも高いです。
AさんとBさんを比較してわかるように、同世代でもやっている仕事の難易度、任され方(責任の範囲)には大きな差があり、それ自体がその人の成長を大きく左右します。
3年も経てば力の差は歴然となります。
入社3~4年目の若手社員を停滞させず力を引き上げる
ほとんどの組織では、若手社員にはルーティン業務や定型的な業務を担当させ、改善業務や未来に向けて手を打つ仕事は管理職が担当します。
この分担自体を疑ってみませんか?
例えば営業組織では、若手社員は担当顧客を持ち、定期的にコンタクトをとって継続受注を進めたり、顧客からの問合せや相談に対応しています。
営業の仕事において、顧客としっかり向き合い、自分の目標に向けてしっかり数字を作っていく経験は不可欠ですが、数年経験すると「慣れで回せる」部分も増えてきて、成長率が下がってきます。
入社3年目や4年目の社員には、マンネリ化を防ぐためにも自分の業績達成に加えて新たなミッションを与え、成長可能性をぐんと広げてあげる時期と言えるでしょう。
例えば営業組織で想定される課題には以下のようなものがあります。
- 営業報告書の作成の手間を削減し、スピーディーに進捗状況を把握できる仕組みづくり
- 営業担当者同士の顧客情報の共有促進
- 外出先から営業報告が簡単にできる仕組みづくり
- 次々出てくる新商品のスペックなどを効率的に学べる仕組みづくり
- 過去の優れた受注事例やいい提案書などをパッと検索して参考にできる仕組みづくり
通常の会社であれば、上記課題の解決は30歳前後の係長レベルや、40歳前後の課長さんたちのミッションとして、何らかの改善取り組みを進めていきます。
(しかし実際のところは、日常業務に追われ、手がついていなかったり、良い解決策を出せないケースも多々あるでしょう。)
これを思い切って、20代半ばの若手社員に「プロジェクト」として任せてみてはいかがでしょうか?
プロジェクトの全体責任者は係長や課長が担いつつ、実際の調査や対策検討は若手社員に動いてもらうイメージです。
若手社員の活用をお薦めする理由はこちらです。
IT活用
今の時代の改善業務の多くはIT活用が欠かせない。若手人材の方が効率的でユーザビリティの高いものを発想できる
上記問題のメインユーザーは若手社員
例えば面倒な報告を効率化するなら、報告を見る側の人が改善するより、実際に報告書を日々記入して面倒に感じている当事者(若手社員)が入った方が実効的な改善につながる
既存の枠からの脱却
係長や課長は今の仕組みで10年以上やってきたので、既存のやり方に慣れてしまっている
抜本的に見直す視点は若手社員や中途採用社員など新鮮な視点を持つ人が望ましい
将来の管理職人材の育成
営業の日常の仕事は自分の業績を上げること、担当顧客のことを考えるにとどまっており、営業部全体をよくすること、会社全体の収益を上げることには視点がいかない
このようなプロジェクトを担当することで若手社員の視野が広がる
将来管理職を担う上でも、早いうちから経験しておくのは有効
「35歳子会社社長」を輩出できる会社へ
イギリスのブレア元首相の就任時の年齢は43歳、フランスのマクロン大統領は39歳。Googleの親会社アルファベットのCEOピチャイ氏の就任時年齢は43歳です。
各国各界のリーダーや若手経営者を見ていると、優秀な人材であれば35歳位でも十分に経営者は務まると思います。
40歳で巨大組織を率いるトップにも育つことが可能であるならば、その5年ほど前から経営を担う人材がどんどん出てくるべきです。
「35歳子会社社長」を輩出するには、20代半ばで小規模組織のリーダーを担い、組織全体を良くする視点での仕事経験が必要です。
30歳前後ではより大きな組織(ex.事業部全体)を考えながら仕事する経験や、社長の元で経営を学ぶ経験が必要です。
事業の収益責任を背負って孤独も味わいながら、組織を導く経験も必要です。
そのステップがあってこそ、35歳で子会社社長を十分に担える人材となり、順調にいけば40代で本体の社長だって担える可能性があります。
もちろん社員全員がこのキャリアを目指す必要はありませんが、少なくとも20代半ばくらいから視座を上げた仕事をさせ、そこで抜きん出た人材には30歳前後でより経営に近い仕事をさせるステップが必要です。
そのためにも、まずは若手社員にいかに早くチャレンジングな仕事、広い視点で考えるべき仕事をやらせるかというスタートの一歩が重要です。
経営者に上りつつある人材の例
ある企業(サービス業・社員数=連結で2,500人)で、新卒入社からスタートし、40歳で既に取締役に抜擢された人材がいます。
この人材が若い時からどのような経験をしたか、その歩みを紹介します。あなたの会社の若手社員にどのような経験をさせたらよいかの参考にしてください。
新人時代:ローカル支店の営業担当者
2年目(24歳):ローカル支店の営業支店長(部下3名程度)
4年目(26歳):本社の営業部のメーカー担当チームのリーダー(部下7名程度)
5年目(27歳):本社メーカー担当チームの責任者(部下25名程度)
7年目(29歳):営業企画に異動。営業部全体の戦略企画を担当
9年目(31歳):副事業部長に抜擢(事業部長は社長が兼任)
12年目(34歳):事業部長
15年目(37歳):執行役員 事業部長 兼 新規事業責任者
17年目(40歳):取締役
この人のキャリアで特徴的なのは、
- 既に2年目で小さいながらも組織の収益責任を追っている
- マネジメント範囲をどんどん拡大し、27歳にして部下20名の組織マネジメント責任
- 29歳で営業から企画に異動し、企てる仕事を覚え、組織全体を見る視野を見につける
- 31歳から社長直下の立場で鍛えられ、34歳にして事業全体の責任者
- 37歳で新規事業立ち上げも経験
このように、若いうちからどんどん仕事を任され、自分の営業数字を作るだけではない視野で仕事をし、企画頭脳も磨き、社長の仕事を真横で見る薫陶も受けています。
既存事業を伸ばすだけでなく、新しい事業をつくる大変さも経験しています。
まさに「育てるべくして育ってきた」ということがわかるでしょう。
それぞれの局面においてこの人が卓越した成果を出してきたからこその抜擢ではありますが、常にそういう機会を与え続けたのは会社としての育成が上手く回っている証拠です。
社員が2,500人もいる会社でこれが可能であるならば、100人程度の会社ならば35歳社長を出すことは十分可能ではないでしょうか。
そういう物差しをもって若手人材を鍛えていくことが、会社にとっても若手社員にとっても必要なことだと思います。
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